戻る 第5話前編へ「カラオケ物語」 仁木友信=仁 立山 昇=立 平中奈津子=平 下市光二=下 水島流美=水 堅野 慎= 堅三浦忠志=三 館間晴彦=館アナ 天波麗奈=天アナ 会場のざわめきが消えた・・・・ 皆が下市の歌を聴いている。それだけの歌唱力と表現力。 下市の歌声は誰に邪魔されることもなく、体育館に響いている・・・。 立「すごい・・・何なんだこの存在感は・・・。」 仁「アドバイスなんて必要なかったんだ・・・。あの人は・・・。」 仁木は呆然と、ただ彼の歌に聴き入っている。 やがて歌が終わると、下市におしみない拍手が浴びせられた。 あそこまで生意気な事を言ってい彼に・・・。 立「さあ、どうですか仁木さん。ズバリ今の心境は。」 アナウンサー立山が仁木に聴いた。 仁「彼は間違いなく人に聴かせるための歌い方というのを持ってる。 そして、それに観客は応えた・・・。完璧だね。」 ゾクッ! 仁木の体に震えが走った。 立「勝てますか?」 仁「・・・勝ちたい・・・。全力で挑むだけだ。」 ステージ上では、司会者が下市に話しかけている 天アナ「いや〜素晴らしいですね〜。。」 下「・・・どうも。」 天アナ「これなら今年も優勝ねらえそうですね。」 下「・・・・・・・・・。」 天アナ「・・・あの・・・なにか一言あります?」 すると下市は彼女のマイクをつかみ。 下「明日、大会議室でライブやるんでよろしく〜!」 ワ〜 またも歓声が聞こえた。中には「行く行く〜」と言う声も聞こえる。 下市が退場し。次の出場者が呼ばれた。すると仁木は立ち上がり 仁「じゃあ、二曲前だからそろそろ行くわ。」 立「ああ、頑張ってな。」 まだざわめきの残る中、彼はステージ裏に向かった。 すると前から下市が・・・ 丁度すれ違いになるときに、仁木が口を開いた。 仁「下市君・・・・うまかったよ。信じられないくらい・・・。」 下「ああ・・・そうか、お前の言うこときかなくて良かったよ。」 グサッ (心にナイフが刺さる音) ヨロ・・・ 仁木少し崩れる。 仁「・・・あ、あのさ。下市君って歌い方とか結構こだわるでしょ。」 下「ん・・・?どういうことだ。」 仁「ライブん時と、今のカラオケん時でぜんぜん・・・何というか・・・ 印象が全然違ったんだよね。やっぱり曲とか場所よって歌い方を分けてるの?」 下「・・・何の事言ってるのかよくわからんが、何回も歌ってりゃ そういうのも見えて来るんじゃねぇの。」 仁「じゃあさじゃあさ。曲の選択とかは・・・?」 下「んったくなんだよ!曲なんて自分の一番合う曲を選ぶのが当たり前だろーが!!」 下市は行ってしまった・・・。 仁(当たり前じゃないよ・・・。自分に合う曲歌ってる人なんて どれくらいいるだろうか。そうじゃなきゃあんな表現は出きない・・・。 やっぱり君は・・・。ちゃんと分かってるんだね・・・。) 仁木はステージ裏に入った。 そこでエントリーナンバー11の曲を聴いていた・・・。 ナンバー11 片思い 仁「この歌、聴いたことあるなあ・・・。あまり聴いたことないけど こんな歌なんだ。どうなんだろ?うまいのかな・・・。」 館アナ「それでは次の方どうぞ。」 水「こんにちは〜よろしくお願いします。」 エントリーナンバー12番。 彼女は実は仁木の一押し。予選の時に彼女のセンスの良さを知ったのだ。 そしてそれを裏付けるのが・・・。 館アナ「予選順位2位・・・。一年生でこれは凄いですねぇ。」 水「はあ・・・。でも、やっぱり一位の人にはかないませんよ・・・。」 そう、予選の結果発表用紙で一位は仁木、三位は下市だったよね。 しかし二位の人はあまり話題にはならなかった。 大抵カラオケとか歌関係って、男性よりも女性の方が上手いという イメージがあるよね?特にその人が合唱部だったとしたら。それは もうそこにいるのが当たり前って感じがしてしまう。 だからあまり話題にはならなかったんだ。 でも、それでも実際に2位を取ってるんだからその能力は相当の物のはず。 と言うことで、彼女が二位の一年生水島流美。ここに来て驚異の新人登場か? 館アナ「さて、トーコの曲ですが。有名な曲ですよねぇ。自信の程は。」 水「ええと・・・。自分の中で一番合う曲を選んだつもりなんで・・・。」 仁「ほう・・・はたして・・・。」 館アナ「それでは スタンバイの方お願いします・・・。 今回1年生の予選通過者はわずかに三人。毎回これぐらいです。 しかーし!! 突如として表れた一年生が、 優勝をかっさらっていくケースは過去何度もあるんです。 それでは存分に笑ってもらいましょ・・・。」 ガン!!! 金だらいが司会者の頭に・・・。 館アナ「た・・・た・・大変失礼いたしました。歌ってもらいましょう。 トーコ、BAD LUCK ON LOVE!!。」 彼女が歌い始めた。 仁「♪ふん・・ふふん・・・ふん・・・。なるほど、結構合ってるな。 ただただ純粋に上手い。表現も良くできてるわ・・・。他とは違う。」 やがて歌はサビに入る・・・。すると・・。 仁「ん!?あ・・・歌詞間違えたな。」 しかし彼女は何事もなかったかのように歌っている。 仁「すごい、間違えてることに気がついてるはずなのに、全然動揺してない。 これは普通の人には気づかんぞ・・・。ハ!もしかして・・・。」 やがて歌が終わり、拍手がステージにこだまする。 館アナ「いやぁ素晴らしいですねぇ。ありがとうございました。それでは次の方どうぞぉ。」 仁木が司会者に呼ばれた。そして彼女とすれ違う・・・。 その瞬間!! 仁「・・・・わざと?」 仁木の言葉に彼女はとっさに振り返る。 でも仁木は司会者の方にまっすぐ歩いていった。 天アナ「さあ、たいへん長らくお待たせいたしました。仁木友信さんです!」 会場は凄い歓声、遠くでキャーキャー声が聞こえてくる。 天アナ「どうですか、この歓声。みんな待ってたんですよぉ。」 仁「はぁ・・・どうもありがとう。」 天アナ「仁木さんは3年生で初出場のようですが。なぜ今回は参加したんですか?」 仁「あ、ああ・・そのぉ、後押しがあって・・・。」 天アナ「それで今回見事予選一位。どうですか心境は。」 仁「・・・その時はすごいうれしかったです。本当に。」 天アナ「何でもうわさでは、その時に廊下で何か歌ったとか・・・。」 仁「あ・・・ああ、それは・・そのぉ、そろそろ・・・歌います・・。」 天アナ「聴きましたかぁ!!みなさん。 もう歌いたくて歌いたくてしょうがないようですよぉ。」 またまた歓声が上がる。 仁「あ・・あの・・あのぉ。」 天アナ「それではスタンバイお願いします。 初めてで、無所属で、それで予選突破。それもトップで。 今までにそんなことをやってのけた人はいません。凄い快挙です。 そんな彼だけど、お話は少し苦手のようだね。 それでは・・・お待たせいたしました。歌ってもらいましょう!!」 ここにきてまたもものすごい歓声。本当にみんな待ってたんだ・・・。 天アナ「曲はMr.children Tomorrow never knows!!」 前奏が流れ出す・・・。 観客一同、静まり返る・・・。 〜♪〜止まること知らない・・・。時の中で幾つもの、 移りゆく町並みを眺めていた・・・。〜♪〜 仁木の本の少しの手や表情の動きは、 その歌の情景を思い浮かばせるかのようで・・。 〜♪〜幼すぎて消えた・・・。帰らぬ夢の面影を、 すれ違う少年に、重ねたりして・・・。〜♪〜 その瞳はいつも遠くを見ていて・・・ たまにその目をつぶり、何かを思い出すかのように・・・。 〜♪〜無邪気に人を裏切れるほど、何もかも欲しがっていた。 分かりあえた友の、愛した人でさえも。〜♪〜 少しこわばった表情・・・。過去を悔やんでる・・・? 〜♪〜償うことさえ出来ずに、今日も痛みを抱き。 夢中で駆け抜けるけれども、まだ明日は見えずに・・・。 勝利も敗北もないまま、孤独なレースは続いてく・・・。〜♪〜 仁木の歌声が会場に響きわたる・・・。 仁木の本の少しの動きをみんなが見ている・・・。 今、ほとんどの観客の意識はステージに引き寄せられている・・・。 仁木がスタンドからマイクをはずし歩き出した。 〜♪〜人は悲しいくらい、忘れていく生き物。 愛される喜びも、寂しい過去も。 今より前に進むためには、争いを避けて通れない、 そんな風にして世界は、今日も回り続けてる。〜♪〜 時に表情を変え、時に思い切った動きをする。 それはまるで演劇の舞台の様・・・。さしずめ彼は真実を伝える吟遊詩人役か。 (みんな僕の言葉を聞いて!紛れもない・・・真実の言葉を!!) 〜♪〜果てしない闇の向こうに、oh oh 手を伸ばそう、 誰かのために生きてみても・・oh oh Tomorrow never knows.〜♪〜 大きな動作。「さあ!」と言う声が聞こえてきそうな。 でも、その瞳は閉じている・・・。 〜♪〜心のまま僕は行くのさ、〜♪〜 手を胸に当て、うつむいた顔をゆっくりと上げながら少しずつ目を開く。 〜♪〜誰も知ることのない明日へ・・・。〜♪〜 その手は胸を放れ、ゆっくりと一歩だけ歩く。 !!! その行動が観客の心を大きく動かした!! 悲鳴を上げる者、拍手する者、そして・・・涙を流す者。 三「す・・すごい・・・。一つ一つにちゃんと意味がある・・・。」 次に控えている演劇部三浦君の一言。その体は小刻みに震えていた。 〜♪〜優しさだけじゃ生きられない、別れを選んだ人もいる、 再び僕らは出会うだろう、この長い旅路のどこかで・・・。〜♪〜 動かずに表情だけを変える。それだけで十分だった。 〜♪〜果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう 癒えることない痛みなら、いっそ引き連れて・・・。 少しぐらいはみ出したっていいさ oh oh 夢を描こう。〜♪〜 ・・・もはや言うまでもないだろう。 その一言一言が動作によって表現されている。 〜♪〜誰かのために生きてみたって・・・oh oh Tomorrow never knows〜♪〜 こわばらせた表情の瞳に少し光る物が・・・。 〜♪〜心のまま僕は行くのさ、誰も知ることのない明日へ・・・。〜♪〜 光る物を隠すかのように今度は大きくうつむく。 その時、誰もがさっきと同じ動作をすると思った。 しかし今度は、光る物を落とさないかのように少し上を見上げ、 そして手を横に広げ、軽く背伸びをしたのだ。 三「あ・・あ・・ああ・・この表現は・・・まさか・・・。」 後奏が流れる・・・。誰も止めようとはしない・・・。 そして曲が終わったとき、一時の静寂が流れた・・・。 誰かが手を叩いた。 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 その後、体育館にものすごい轟音が鳴り響いた。 校内どころか、校外の川向こうにまでとどきそうな音が。 それはしばらくの間続き、やがてその音が小さくなった後。 目を赤くした司会者が、少し鼻をすすりながら仁木に問いかけた。 天アナ「・・・・・どうして?」 仁「はっ?」 天アナ「どうしてこんな事が出来るんですかぁ!?」 あ・・・また泣きそうだ。 仁「え・・・ええと・・・どうすれば歌をみんなに伝えられるかなあと考えて、 そして練習して来たんですけど・・・。自分では少し臭いかなあって・・・。」 天アナ「・・・そんなことない!!すごく・・すごーく・・・そうですよね!!」 すると観客から拍手と歓声が・・・。その中にはこんな声が・・・。 「凄く良かったよ!」「もう最高!」「いいぞ〜!」「もう一回聴きたい!」 仁「みんな・・・ありがとうございます!」 深々とお辞儀する仁木。 天アナ「それではありがとうございましたぁ。仁木友信君でしたぁ!」 裏に戻る途中にも何度もお辞儀する仁木。 ステージ裏では、たくさんの人が出迎えに来てくれた。 たっちゃん、なっちゃん、そしてあの5人組・・・。 手始めに仁木はその5人組の餌食となった・・・。 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜!!〜〜 2分後・・・・。 仁「・・は・・あは・・あははははは・・・・・。」 やっと解放された仁木は、心ここにあらず状態・・・・。 立「だーかーら!刺激が強すぎるっちゅーの。ほら目を覚ませ・・・よっと。」 立山が背中を ドン! 仁木ふと我に返る。 平「仁木君!もう・・・凄く良かったよ。」 立「仁木!おつかれさん。」 仁「あ・・・ああ。じゃあ戻って続き見よっか。」 そして裏口から3人が出ようとしたその時。 水「待って!」 一人の少女が仁木を止めた。 仁「ん?・・・ああ、君は僕の前の・・・。」 そう、彼女は水島流美。仁木の前に歌った人である。 水「ちょっと・・・話があるの・・・。」 立「おおっとぉ・・・。さっきの歌で早速ファンが出来たかぁ。」 平「・・・・・!!」 な・・なっちゃんが怖い顔してる。 仁「・・・分かった、行くよ。」 平「!!!!」 な・・なっちゃん・・・怖い・・・。 立「お・・・おい仁木、それはちょっとまずいんじゃ・・・。」 すると、仁木はすっと平中の横に立ち。耳元に。 仁「心配しないで平中さん・・・少し話するだけ。」 そして足早に水島の方に歩いていった。 平「あ・・・あれ?」 立「どうしたん?なっちゃん?」 平「なんか仁木君の雰囲気が変わったような・・・。」 立「・・・・・・ああ!そういうことか!。」 平「えっ?」 立「あいつきっと歌について話しに行ったんだ。あいつその事になると すぐ性格変わるから。歌ってる時みたいにね・・・。」 やがて、仁木と水島は二人きりになった。 水「・・・・どうして分かったの。」 最初に切り出したのは彼女の方だった。少し体が震えてる。 仁「間違えたにしてはやけに落ち着いてると思ったからさ。 普通なら表情の一つも変えるはずなのに、それすらもなかった・・・・・。 理由も何となく分かるぞ、審査員に度胸を見てもらいたかったんだろ。 間違えても、平然としているその偽りの度胸を。」 水「・・・すごい・・・ここまで言い当てるなんて・・・。 歌が上手いだけじゃないんですね・・・。」 仁「でも、君の考えは間違ってると思う。この大会はあくまで 『カラオケ大会』なんだ。どこかのオーディションじゃない。 オーディションならそういうところも見てくれるかも知れないが、 ここではただの減点対象の一つになってしまうんじゃないか?」 水「えっ・・?はっ!そうだ!そうだよ!・・・何て馬鹿な事・・・。」 しばらく沈黙が続いた。 仁「・・・・そんなに大会で優勝したかった?」 水「・・・・これでも私なりに考えた作戦だったの・・・。 毎年凄くレベルが高いって言うし、普通にしてたら絶対にだめだって思って。 でも・・・笑っちゃうよね・・・よーく考えてみたら確かにそうなんだもん。 馬鹿だよ・・・私・・・本当に大馬鹿・・・。」 あ・・・泣きそう・・・。 仁「でも、それだけ優勝したいという思いが強かった・・・。」 仁木が突然遠くを見ながら話し出した。 仁「今時珍しいよねぇ、ここまで考えられる人って。きっと凄く情熱的なんだ。 でもちょっと思いが強すぎて・・・盲目になってたんだ、きっと。」 仁木が彼女の方を向く。 仁「馬鹿じゃないよ。ちょっと空回りしてただけだ。」 水「・・・仁木・・・先輩・・・。」 仁「でも・・・その情熱をもっと他の所に向けるべきだったね。 仮にも予選二位の実力だから。自分の力を信じて・・・頑張る方にね。 水島さん・・・予選の時君の歌凄く良かったよ、俺・・・聞き惚れてた・・・。」 水「ぇっ・・・・。」 ドキン その言葉が彼女の心を動かした。彼女の顔が赤くなって行く・・・。 でも、その様子は部屋がくらいせいで仁木には分からない。 そして・・・・。 水「・・・先輩・・・私・・・先輩のことが・・・。」 さっきとは打って変わって甘い声。仁木が彼女の顔を見ると・・・。 その瞳は少し濡れながらもトロ〜ンとしている。 仁「み、水島?」 水「先輩・・・私を・・・。」 彼女は服に手をかけながら仁木に近づいた。 仁「!!!ちょっ!・・・ちょっ!・・・ちょっと待て!」 慌てて下がる仁木、彼がこういう状況に弱いのは宣告通りである。 水「イヤ・・・先輩・・・お願い・・・。」 服のボタンをはずしながら、ゆっくりと近づく。 仁(うう・・・だめだ・・・僕には・・・・・でも・・・) そんなことを考えつつも、 後がなくなったぞ!!仁木!! 水「先輩・・・一緒に・・・。」 仁木に追いついた彼女は、彼をぎゅっと抱きしめた。 仁(だ、だめだ・・・切れるぅ・・・・) その時!! 天アナ「今から表彰式を行います。大会出場者は至急ステージに集まって下さい。」 水「あっ!」仁「あっ!」 彼女の方が我に返ったようだ。 水「行かなきゃ!!賞品もらえなくなっちゃう。」 彼女は仁木から離れ、慌てて服を直した 仁「あ・・・あのぉ・・・ちょっとぉ。」 そんな情けない声を出さないでくれよぉ、仁木ぃ。 水「ごめんね先輩。でも今は賞品の方が魅力なの。 だって全部の大会の中で一番良いんでしょ。」 あっけにとられてる仁木を見て、彼女は手をさしのべ。 水「ほら立って立って。一緒に行こ。」 仁「あ・・ああ。」 二人は一緒にそこを後にした。 水「先輩。」 仁「何?」 水「私本気だからね。」 仁「・・・・・・。」 水「あの時一緒にいた人って彼女?」 仁木は黙ってうなずく。 水「そっかぁ、それじゃあ素直には受け入れてもらえないよね。」 仁「素直も何も・・・・。」 水「先輩・・・一番上のボタン・・・。」 仁「んっ・・・?あっ。」 情けねぇ・・・・。 水「先輩のH。」 仁「・・・・・・。」(何時の間にはずしたんだろう・・・・?) さて、ステージに戻った二人。 下「仁木。」 仁「ああ、下市君。」 下「お前ってヤツは本当に・・・。」 仁「えっ?」 下「いや・・・何でもねぇよ。」 仁「???」 さていよいよ、表彰式が始まる。みんなに緊張が走った。 館アナ「さて、これより開会式を始めま・・・・。」 ダダダ・・・・ボコボコボコボコボコ・・・・ダダダ・・・・。 いきなり空手着と柔道着を着た人達が、司会者をボコボコにして去っていった。 館アナ「た・・たた・・た・・た大変失礼致しましたぁ。表彰式を始めますぅ。」 審査員の一人が前に出てきた。 「今回も実にレベルの高い大会だった。日頃の練習の成果を十分に 発揮できただろう。皆素晴らしい歌唱力の持ち主だった。 しか〜し!!! 歌には歌唱力だけでなく表現力も大事だ。 そこまで気にして歌わないと、歌詞の意味がない。よって歌詞が死んでしまう。 今回入賞した5人は、それぞれがある意味その歌を自分の物にしている人達だ。 これから歌を歌っていく人、特にこれから歌手を目指そう何て言う とんでもない輩(やから)はその事にも特に注意して欲しい。 それでは発表する。第16回文化祭カラオケ大会優勝者は。」 ドドドドドドドドドドド・・・・・・・・・・(お決まり) 「エントリーナンバー13番、仁木友信!おめでとう!拍手〜!」 わ〜!!! すると、約40人位の生徒がみんな一斉にステージに登り、 仁「わ、わわわ、ちょっちょっと。」 仁木を胴上げした。 ついでに、出場者も一緒に混じって胴上げした。 下「仁木・・・お前ってヤツは本当に・・・・・・・・すげえヤツだぜ。」 「続いて2位〜!!!」 さて、以上が今回の上位入賞者である。 (こ・・・こら!ワシに言わせんか!) イヤ 2位 10番 下市光二 下「まっ、当然だな。」 3位 12番 水島流美 水「やった〜。ねぇねぇ賞品何ぃ〜。」 4位 14番 三浦忠志 三「・・・・ども、ありがとうございます」 5位 9番 堅野 慎 堅「えっ?俺っすか?いいんすか?やりぃ!」 館アナ「以上で、第16回文化祭カラオケ大会を終了しまーす。 みなさんお疲れさまでしたぁ。」 長かったカラオケ大会はこんな結果を残して終了した。 文化祭自体はまだ続いていたが。彼らの興奮もさめやらぬ内にそれは終了した。 さて賞品を手に入れた人達は一体どうしたか。 そして何を手に入れたのか。気になるところ。 ではそれぞれの声を聴いてみよう。 第5位堅野君は・・・・・。(教室にて) 「堅野ぉ〜、やったなあ。」 堅「ハハハ、まさかなあ。あれでなあ。すごいなあ。」 「でも、なんだろなこれ。」 堅「さてさて、なにかなぁ?結構重いんだよこれ。」 ガサガサ・・・・ゴソゴソ・・・・・ 堅「んむ?これは?」 「缶詰・・・・。中全部これか?」 堅「ん。」 「何だよ・・・・。つまんねぇ・・・・。」 堅「ワーイワーイワーイワーイ。」 「変なヤツ・・・。何でもいいのか・・・。」 結局、中にはフルーツ系の缶詰が7つ入ってました。 第4位三浦君は・・・。(演劇部部室にて) 「先輩!やりましたね。」 三「あ・・ああ。」 「どうした?あんまりうれしそうじゃなそうだが。」 三「ええちょっと。今の僕の演劇に足りないものを垣間見たみたいで・・。」 「おいおいそんなこと・・・。お前明日主役やるんだろ。大丈夫か?」 三「はぁ・・・。それにしても・・・何だろこれ。」 ガサガサ・・・・ゴソゴソ・・・・。 「ああ!これMDじゃないですかぁ。先輩デッキ持ってましたよね。」 三「ああ・・・。うれしいよ・・・。」 「おいおいどうしたんだよぉ!!頼むから明日までひきづんなよぉ〜。」 彼は当たりみたいだったね。MD7ケースでした。 さて第3位の水島さんは・・・。(合唱部部室にて) 水「なにかな、なにかなぁ・・・。」 「おいおい、あまり期待しない方が良いよ。」 水「だってぇ・・・。3位だよぉ。きっといい物だよぉ。」 がさがさ・・・・ごそごそ・・・・・。 水「図書券・・・。たくさん・・・。」 「へぇ・・・今回はまともね。5位以外は小さい物だったし・・・。」 水「私、本読まないのにぃ〜。」 「だれかに替えてもらったら?」 水「・・・・まあいいや。いつかもっといい物もらうんだから。」 「あらら、もう来年の話?気が長いわね〜。」 水「ううん・・・・近いうちに絶対物にしてやるんだから・・・。」 今回はまともみたいだね。彼女は図書券3500円分でした。 第二位の下市は・・・。(ロック部部室にて) 「・・・・惜しかったな。」 下「しゃあないさ、あんなの聴かされりゃあ、誰だって・・・。」 「でも卑怯だよな。あんな歌いやすい歌選びやがってなあ。下市の方が・・・。」 下「・・・・てめえ・・・頭悪ぃのか。」 「・・・んだとてめえ!俺がせっかく・・・・!」 「まあまあやめましょうよ。で、下市さん賞品は何だったんですか。」 下「結構気が利いてるぜ。音楽券だ。」 「おお!いいっすねぇ。使いますからねぇ。」 下「そうか?そんならこんだけやっから、その分メロンパン買ってこい。」 「うぃっす!!」 下「あ!!それと・・・・。WANDSのベストアルバムもな!」 音楽券5400円分GET!!(その内400円分はメロンパン) さてさて、気になる一位。我らが仁木君は?(帰宅中にて) 平「仁木君、おめでとう。」 立「・・・・おいおい、もう何回目だよ?」 仁「・・・・7回目。」 立「・・・数えてたのね・・・。でも、マジで凄かったなあ。」 仁「そうだね、こういう場では初めてだし・・・。」 平「えっ?えっ?それじゃ、たっちゃんいつも仁木君のあーんな歌聴いてんの?」 立「・・・ま・・まあそんなことになるな。あまり意識はしてないが・・・。 でも今回のことで、一緒にカラオケに行きたいという人も増えるんじゃないか?」 平「あああ〜それは困る〜。まだ私もあんまり行ってないのにぃ。」 立「ついでに今までに何回?」 仁「・・・11回・・・内3回は二人で5時間以上・・・。」 立「おいおい・・・、十分だろ。」 平「いいじゃないの別に。」 立「・・・そういえばインタビューで『後押し』って言ってたよな それってやっぱり・・・コイツの事?」 仁「・・・・・そう・・・・。」 ちょっと照れながら言った。 平「なによぉ!コイツってぇ!」 立「それじゃあ、あの賞品は二人の物だな。」 立山はニヤニヤしてる・・・・。 平「えっ?・・・ああ、そういえば賞品って結局何だったの?」 仁「え・・・そりゃあまずいよ・・・。」 立「でも、これを取ったのは半分はコイツのおかげだろ?じゃあ・・・。」 仁「で・・でもぉ。」 平「ちょっとちょっと、なによぉ〜。仁木君何が当たったの?」 仁「・・・・・・・・これ。」 平「へぇ〜小さいのね。」 がさがさ・・・・ごそごそ・・・・。 平「ええと、OO温泉のディナー付き宿泊券・・・が2枚・・・・えっ!」 なっちゃんの顔が赤くなったぁ! 仁「うん・・・だから平中さんと・・・。」 立「クックック・・・そういうこと!一緒に行っちゃえよ!」 平「そ・・・そんなの・・・別々の日にすればいいじゃない!」 仁「あ・・・・。」 立「あ〜あ〜言っちゃったよ。せっかく内緒にしてたのになあ・・・。 仁木は根スケベだから、こういう風には頭が回らないのに・・・。」 仁「・・・・・・・・・・。」 立「あ・・・あら・・・?言い返さない?」 しばし沈黙・・・・・。 平「そう言えば・・・あの時・・・あの娘と何を話してたの。」 仁「え!・・・ああ・・・ちょっと歌の話をね・・・。」 仁木、かなり焦ってるなあ。 立「どした?なんか汗かいてるけど・・・。なんかしたのか?」 仁「ぼ・・・僕は何もしてない!!」 平「・・・・・どしたの?らしくないよ。・・・・あ!!・・・・。」 なっちゃんが・・・・見てる・・・。 平「一番下のボタン・・・はずれてる〜!!!!」 立「おいおい、そりゃはずれるときもあるだろ。なぁ仁木・・・仁木?」 仁「・・・・・・・・・・。」 平「あああ〜!!反論しない〜!カマかけただけなのにぃ〜!」 仁「ひ・・・平中さん。本当に僕からは何もやってないんだ。」 平「じゃあ、向こうから迫ってきて受け入れたんでしょ〜!!」 仁「う・・・・・・・。」 平「ぁあああ〜!!認めたぁ〜!カマかけただけなのにぃ〜!」 立「なっちゃん・・・・極悪・・・・。でも仁木も仁木だな・・・。」 平「仁木君のスケベ!!」 仁「ちょっと!平中さ〜ん・・・・。」 ーENDー おいおい、いいのかこんな事で。 こんなんで終わって本当にいいのか? でも、長かったカラオケ大会編もやっとこれで終わったわけだ。 さて、この大会によってたくさんの人の運命が変わった。 ここからが新しい物語の始まりだ。主要キャラもどっと増えるぜ。 歌の紹介 今回は、やっぱり本人に説明してもらいましょう!! 仁「はい、こんにちは〜。」 この度はカラオケ大会優勝おめでとうございます。 仁「それは・・・どうもありがとうございます。」 それでは本題に入りましょうか。 ではまず、なぜこの歌を選んだんですか? 仁「まあ、見てくれれば分かると思うんですが。あの『学校祭のサブタイトル』 で、もうこれしかないと思いました。後は出来るだけその歌を上手く表現 するために、ひたすら考えて練習しましたよ。なにしろ二日前ですからねえ。」 この歌の特徴は? 仁「はい、まずこのミスチルなんですけど。彼らの歌って結構『現代に訴える歌』 が多いんですよね。今回の歌なんかもそうです。 特にこの歌は、迷いを断ち切ってくれる歌です 僕もそうだけど学生なんて結構いろいろな悩みとかで迷ったりするじゃない ですか。だからこそこの歌は受け入れられると思ったんです。」 仁木さんは、振り付けもやってらっしゃるんですか? 仁「いえいえ、振り付けなんて物ではありません。 ただ、歌のイメージで動いてるだけです。本の少し手を動かしたり 表情を変えたりする事で、伝わり方がまた格段に上がるんです。 最後のあの動きも、自分で考えたマニュアルです。大したことではないです。」 確かに臭い芝居ですよね。しかし、ものすごい効果でしたよ。 やっぱりそれは歌が上手いからでしょうかねぇ。 仁「今回は前評判があったから。みんな最初から真剣に聴いてくれましたよね。 だからそれなりにやりやすかったんですよ。でも、もしそうでなかった場合は やっぱりまず歌唱で引きつけなきゃ行けませんからねえ。 歌唱力はそれなりには必要だと思います。 ただ歌唱力の点で言えば、今回参加された方々ぐらいあれば十分ですよ。 でも、その歌唱の中にその歌の表現を入れないと、説得力がない・・・。」 やっぱり二つとも必要ですか? 仁「不可欠ですね。まず歌唱力がないと聴いてももらえない。 でも、ちゃんと表現しないと何か物足りなくて、説得力に欠けてしまう。 特に僕が選んだ、『訴える系』の歌は、表現の方が大事ですよ。」 ・・・で今回の手応えは? 仁「もう、みんなバッチリはまってくれましたね。 自分もあまりの気分の良さに、自分ではまってしまって涙が出ましたよ。 実は最後の表現、あの場で思いついたんです・・・。」 あの最後の手を横に広げて、軽く背伸びするヤツですか? 仁「そうです。一回目は歩きましたけど二回目は???みたんです。」 そこクイズにします。彼は二回目をどのようなイメージで表現したでしょう? 正解者には、作者が作ったオリジナルサウンドMIDIファイルを お送りいたします。(聞けなかったら勘弁ね、でもマジで送るよ) 応募方法はメール、その他アンケートなどに書いて送っても結構です。 たくさんのご応募お待ちしております。いらない人はメールに書いて。 (すでに持ってる人もいるはずだし) さてさて仁木さん。次回からはいよいよ新章のスタートですね。 仁「ええ、でもなっちゃん怒らせちゃったしなあ・・・。」 いっそのこと水島ちゃんに乗り換えちゃったら? 仁「う〜ん・・・・。」 平「あああ〜!本気で考えてるぅ!仲直りしようと思ったのにぃ!」 仁「い・・・いや・・・違うんだ!!これは・・・ちょっとまって平中さ〜ん!」 行ってしまいましたね。それでは次回波乱の急展開。お楽しみに♪。 立「作者・・・・・・・・鬼畜すぎ・・・・・・。」セリフの付け方を変更しました。
第4話「学生カラオケ大会(本選編)」後編