戻る 第4話へ「カラオケ物語」 第3話「学生カラオケ大会(本選前編)」 さてさて、仁木君は無事に予選を通過できたのでしょうか・・・・。 では前回のラストからどうぞ。 「た、たた、大変、大変〜〜〜!!。」 平中が仁木達の方に走ってきた。肩で息をしている・・・・。 「どうしたん?なっちゃん・・・。」 どんな時でも立山は冷静である。彼がこう聞くと・・。 「と・・・・とにかくついてきて。」 彼女に言われるまま仁木達は歩いていった。 行き着いた先はものすごい人だかりがある。 あちらこちらで言葉が飛びかっている。 「今年は・・・。18人か・・・かなり厳しいなあ。」 「ちっ、ダメだったか・・・。」 「それにしても、一位の奴って誰だ?」 「下市が、3番目か・・・。今回レベル高いなあ・・・。」 そこは、予選の結果の書いてある掲示板の前だった。 「ほら・・ほら見てよ!」 仁木はリストアップされている予選結果の掲示を下から見ていった。 「ええと・・・あっ!あったあった!」 彼の名前は一番上に表示されていた。目立たないガッツポーズをする仁木。 「まあ、当然の結果だよな・・・。なっちゃん、そんなにうれしかったの?」 立山が平中に話す。すると平中が首を横に振って。 「私も絶対入ってると思ってた。でも・・・これは噂なんだけど・・・。 このリストアップされてる順番って、予選の成績順だって話があるのよ!」 「えっ!?」 もう一度仁木は掲示を見た。間違いなく一番上である。 「そ・・そんなの噂だろ・・・。」 「でもみんなこの噂信じてるよ、周りの声聞けば分かるっしょ。」 周りの声を聞いてみると・・・。 「ねえねえ、仁木君って知ってる?」「知らな〜い。」 「下市が負けるほどの男・・・。どんな奴だ・・・。」 「えっ!!あの仁木君が・・・・・。あっ仁木君!」 彼のことを知ってる人が本人を見つけた。「えっ!」と言う言葉の後 一瞬の静寂・・・。その時みんなが一斉に彼の方を見た。 「あ・・・ああ・あ・・あ・あ・あ・・・・。」 (ヤベエな・・・。)その瞬間。立山は彼の腕をつかみ。 「さっ!行こうぜ!」 彼がとまどっているのをよそにものすごいスピードで、 彼を引っ張って、この人だかりから教室に向かった。 「・・・・・名コンビ・・・・。」 平中は思った。 さて、教室の前に戻った2人はさっきの平中と同様肩で息をしていた。 「ハァハァ・・・・・感想は?」 立山がマイク代わりにボールペンを仁木に向けた。 「ま・・まさかこんな事になるなんて。」 「下市に勝ったことについては?」 「正直マジうれしい、前回優勝者だぜ。」 「この分だと教室に入った瞬間に、言葉攻めだぜ。」 「・・・・・うれしいような、つらいような・・・。」 「ハハハハ・・・・あ、なっちゃんが来たぜ。」 「・・・・・立山君お疲れさま。あっちじゃもう大変な事になってるよ。」 「まあ、そう思ったから速攻で逃げてきたんだけどね。」 「あの後すぐ下市君が来て・・・・・あっ!」 遠くから背の高い男が何人か連れてこっちに向かって歩いてくる・・・。 「下市+ロック部ご一行様だ・・・・。」 「や、やべぇ・・・ど、どど、どうしよう・・・。」 そうこうしている間に、下市達は仁木達を取り囲んだ。 立山は平然としているが、仁木の足はふるえている。 「仁木ってのはお前か!?」 下市が立山に向かってしゃべりだした。怒鳴るような口調だ・・・。 ますますおびえる仁木。 「ううん違う。仁木はこっち。」 あくまで冷静な立山。臆することなく平然と答える。 「ふ〜んじゃあお前か。」 下市達が仁木を見る、仁木は顔を上げられない・・・。 「おら、顔上げろよ。」 ゆっくりと顔を上げる仁木。その表情は(脅えています)と言わんばかりだった。 「ほほう・・・・。」 じろじろと仁木を見る下市達。すると下市が。 「納得いかねえな・・・・・・・。歌えよ」 「えっ?」 「この俺を負かしたって言うその歌って奴を、 今この場で聞かせてもらおうじゃねえか!」 下市は周りのみんなに聞こえるように大声で言った。 「ふざけんな!」 怒鳴ったのは立山だった。仁木はまたうつむいてしまった。 「仁木!あいつの言ったことなんて気にすんなよ!」 「ふん!そういった所でここら辺にいる奴はみんなお前の歌聞きたがってるぜ。」 周りを見るといつの間にか、人だかりが出来ている。「かわいそう・・・。」 と言う声も聞こえてくるが「いいぞ〜!歌え歌え〜!」と言う声も聞こえてくる。 「こいつら・・・・。」 「俺自身も聞きてーんだよ。お前の歌をな。じゃなきゃ納得出来ねーよ。」 下市達はへらへら笑っている。 「・・・・・・仁木!行こーぜ、こんな奴らに構ってられねぇ。」 立山が仁木の腕を引っ張る。すると。 「仁木・・・・?、おい!仁木!」 仁木はうつむいたまま目を閉じていた。胸を手で押さえている。 「仁木君・・・・。」 平中が涙目になって彼を見ている。 「おら!さっさと歌えよ!」 罵倒する下市。こらえきれず立山が下市に殴りかかる! その時!!! 「・・・・・・・・・・・Revolution・・・ノートに・・・。」 仁木が発したこの言葉は・・・・。涙声だったがメロディがあった。 〜♪〜 書き留めた、言葉、 明日を、遮る壁、乗り越えて、いくこと。〜♪〜 仁木の声が元に戻っていく・・・、彼はゆっくりと顔を上げる。 目には涙がたまっているが、その表情には強い意志が見られた。 「に・・・仁木・・・・。」 立山、下市、その他全ての人間の動きが止まる・・・・。 流れているのは、仁木の「Seven Days War」だけ・・・・。 〜♪〜 割れた、ガラスの破片、机の上の、ナイフの傷、 理由(わけ)を、話せないまま、閉ざされたドア、叩いていた。〜♪〜 体を預けていた壁を離れ、彼は廊下の真ん中に移動する。 〜♪〜 全てを壊すのではなく、何かを探したいだけ、 全てに背くのではなく、自分で選びたいだけ。 〜♪〜 仁木は下市の方を見る。無論ビビッたのは下市の方である。 〜♪〜 Seven Days War闘うよ、 僕たちの場所誰にも、譲れない、 Seven Days War Get place to live うつむかず生きるために 〜♪〜 しばらくの間静寂が続いた・・・・。 「コラ〜、何やっとんのじゃあ〜。」 その静寂をうち破ったのは、騒ぎを聞きつけた先生の声だった。 みんなはふと我に返る。すると・・・。 「・・・・仁・・・木・・・君。」 平中が泣きながら座り込んでしまった。そして・・・・。 パチ・・・パチパチ・・・パチパチパチパチパチパチパチ パチパチパチパチパチパチパチ・・・・・ わ〜〜わ〜〜わ〜〜〜〜〜!! ものすごい拍手と歓声が仁木に浴びせられた。中には涙目の人もいる。 「あ、あああ、ああ、あ・・・・あ、どうもどうもどうも。」 仁木もふと我に返り、この声援に応え周りのみんなにお辞儀しまくった。 「仁木・・・やりやがった・・・。」 そして、立山は下市達の方を見て。 「これで満足かよ・・・・分かったらとっとと消えろ!!」 その言葉に反応して周りから「消えろコール」が聞こえてきた。そして下市達は、 「ふ・・・ふん!!本番じゃこうはいかねぇからな。」 と捨てゼリフを残し、この場を後にした。 その後先生達が割って入ってきたが、この状況を見てひどく困惑していた。 だって、周りは笑ってる人もいれば、泣いている人もいるし。 誰一人として怪我をしていないのである。 結局学校内の問題にはならなかったのだが・・・・。 でも、これははっきり言って『いじめ』である。 相手が仁木君じゃなかったら、きっと問題になっていだろう。 だから、よい子はこんな事しちゃいけないよ。僕と約束だ。 「んったく。とんでもない事しやがって・・・。」 「・・・・ごめん。だって、僕が歌えば丸く収まると思ったから・・・。」 「ふぅ〜・・・。でも、今回もナイス選曲だったな。」 「えっ?」 「大会まで七日後って事であの歌にしたんだろ?」 「あ・・・・そっか、そういうのもあったんだ・・・。」 「・・・・相変わらずのボケキャラ・・・。」 その後、仁木が一躍クラスの人気者になったのは言うまでもないだろう。 大会まで後七日。仁木君ガンバレ!! ーTo be continuedー 歌の紹介 「Seven Days War」 作者の得意なTMNのバラードである。 「僕らの七日間戦争」と言う映画で使われた歌である。 大抵の人は、聞けば分かるぐらいの知名度だろう。 さてこの歌の特徴は、まずサビが激しくないところである。 しかし激しくない分、独特の威圧感がある。 そしてもう一つ、歌の段階が多いと言うことである。 一番で実に4段階も曲の雰囲気が変わる。 仁木はその雰囲気に合わせて非常にうまく行動したと思える。 そしてサビで、下市に威圧感を与えた・・・。実にうまい技である。 後、バラードを選んだのはやはり歌いやすいから、 今回もアカペラなので、その辺はさすがに抜かりがない 歌詞を見ても、この状況を「暗に意味する」物があるような気がしてならない。 気づいた人がいるかどうか分からないが、実はサビの部分だけは二番なのだ。 こっちの歌詞の方が今の状況にあってると思ったのだろう。 「七日後に大会がある」と言うのは偶然だが。その辺もすごい。 それにしてもあの状況でよくここまでの事が考えられた物だ。 言ってみれば「歌で相手を制圧」したのだから。 でも、彼自身はそう思ってないらしい。 「丸く収まればそれで良い」なんて思ってたんだから。