「カラオケ物語」 第2話「学生カラオケ大会(予選編)」
「学校祭まで後一ヶ月か・・・・・。」 仁木が見ているのは学校の掲示板、たくさんの張り紙の中見つけたのは 学校祭用に作られた一枚のポスターだった。 仁木の高校の学校祭は全行程で4日行われる。 「前夜祭」「文化祭」「体育祭」そのうち文化祭は二日にわたって 繰り広げられる。よってそのイベントの数も豊富である。 後一ヶ月に差し迫っているので、 イベントはすでに決定していて、それらがポスターに書いてあるのだ。 「今年は何をやるのかな?」 見たところ、毎年恒例の物がちゃんと書いてある。 その中で彼が注目しているのは・・・・。 「仁木君!!」 「あ、・・・・平中さん。」 「何見てるの・・・・、!そうそうこれこれ、出るんでしょ。」 「いや僕は今年も・・・。」 「え〜〜〜!出ようよ〜〜〜!仁木君なら絶対優勝だって!」 「・・・・そんなん分かんないし。」 もう、お気づきの方も多いですね。彼の注目しているのは 当然「カラオケ大会」です。彼が1,2年の頃一番よく見ていたのが これでした。え?見ていただけかって?そのころの彼にはまだまだ 参加するだけの勇気は無かったみたい・・・・。 元々彼は目立ちたがり屋でけど。こういう所ではそれを出せない気の弱い人 それが彼なのだ。でも今年は・・・・。 「・・・・・出てみようかな。」 「うん!そうそう、そのいきそのいき。じゃあ、はいこれ。」 「・・・・・これ何。」 「カラオケ大会出場申込書。」 「・・・・・手回しのいいことで・・・。」 誰かに後押しされたら出てしまう、そんなところも彼だね。 さて、それではカラオケ大会についてを前回の大会を参考に説明していこう。 もはや恒例となっているカラオケ大会。実は文化祭の中でも出場者が一番多い 大イベントなのだ。しかし時間の都合上全員をステージに立たせるわけには いかない。よってまず当日の10日程前に「予選」というのが開かれる 去年は37名のエントリーがあって、それで予選に勝ち残ったのは 20人だった。毎年出場者の半分がここで涙をのむ。 そもそも、なぜこんなに出場者が多いのかと言うと、他のイベントに比べて 賞品が良いからなのだ、5位までがその対象となる。 優勝者には、なんと1万円相当の物がもらえるのだ。 去年は仁木のクラスの生徒が4位に入賞して、その賞品は なんと「ボンカレー20個詰め合わせ」だったそうだ・・・・・。 ま、まあこれは良いとしても一位になったらそれなりの物は手に入る。 だから、毎年学校中の歌に自信のある物がこぞって集まり戦うのだ。 先生までも、毎年1,2人は必ず出ていたと言う。 しかし、上位入賞者というのは毎年限られている。 去年は1位がロック部のボーカルで、2位〜4位が合唱部だった。 このように、大抵はその手の部活に、賞品を根こそぎ持ってかれる。 だからその辺の強豪達に勝てないと、賞品にはとどかない。 おちゃらけで出場してくる人もいるが、そんな人は予選で確実に落とされる。 実は本戦に残ってる人のほとんどは、ロック部、合唱部、演劇部、放送部なのだ。 それだけレベルの高いイベントなので、仁木はこのイベントを見るのが好きだった。 でも今回は出場・・・・・。ちなみに仁木は帰宅部である・・・・。 「自信ない?」 「そりゃそうでしょ。みんな上手いんだから。」 「でも私は好きだな。仁木君の歌。」 「・・・・・・・・・・好きって・・・・。」 仁木の顔が赤くなった。 「あの時は確かに酔ってたけど、私の唇を奪った位なんだから・・・・。」 さらに赤くなっていく。 「フフフフ・・・そうやってすぐ赤くなる所が仁木君だね。」 所変わって、ここは教室。 「・・・・たっちゃん。」 「ん・・・何?} 「俺さ・・・カラオケ大会に出ることにしたんだ。」 「おおお〜〜〜おおお!!そうか、出るか!やっぱ出なきゃ損だと思ってたんだよ。」 「・・・・なっちゃんに言われてね。」 「へぇ〜、そうか〜。・・・で何歌うんだよ。」 「あ!!そうかそれ決めなきゃ。でも予選まで後20日位だし何とかなるよ。」 「どうかなあ〜。」 「え?」 「ほら、カラオケ大会の予選ってさ〜。いつも違うじゃない。」 「そうか・・・。この前は早口言葉だったし・・・。」 「その前は校歌。もっと前には声の大きさと言うのもあったしね。」 「こういうのって、絶対歌関係の部活の奴が有利だよねぇ。」 「今年は何なんだろうな。」 「予選か・・・・大丈夫かな。」 そして15日後・・・・。 「ピンポンパンポ〜ン、カラオケ大会に出場されるみなさんに連絡します。 今日のお昼休みに大会議室に集まって下さい。繰り返します・・・・。」 学祭も後半月、いつもよりも活気のあふれている教室で、こんな校内放送が 流れてた。放送の後ざわめきはいっそう高まっていく。 「仁木、これっていよいよ予選の・・・あれじゃねぇか。」 「うん、多分ね。」 そして昼休み。 ざわざわざわざわざわざわざわ・・・・・・・・・。 すごい人数が大会議室前に集まっている。 (うわ〜、これみんな今回の参加者か〜?50人はいるぞ。) 先生の手により大会議室の扉が開かれると、みんなが一斉にその部屋の中に なだれ込んできた。正にイス取りゲーム状態。結局何人かは立って話を 聞くことになった。当然、仁木もその一人だ。 するとカラオケ大会実行委員の人が前に出てしゃべり始めた。 「はい、みなさん静かにして下さい。今回カラオケ大会の参加者が 非常に多くなったので、例年通り予選を開くことになりました。」 周りからざわめきが聞こえてきた。おそらく何も知らない一年生達だろう。 「それで、今回の予選で何をするのかと言うと。」 すると、もう一人の実行委員が大きな黒板に何か書き始めた。 ア、カ、ペ、ラ。 すると、今度は全体からざわめきが・・・中には「えー!」と言う声も。 「静かにして下さい。みなさんには予選でアカペラ・・・。つまり音楽無しで 歌ってもらいます。曲は自由。場所はここで、日程は五日後の放課後です。 そのかわり歌詞は見ずに覚えてきてもらいます。・・・後、予選では振り付け とかは関係ないので歌だけを練習してきて下さい。以上お知らせを終わります。」 そこら中で色々な声が聞こえる・・・。 「アカペラだって・・・どうしよう・・・・。」 「ちぇっ・・・相変わらず部活有利だよなあ・・・。」 「私、出るのやめようかなあ。だって恥ずかしいじゃない。」 さて教室に戻った仁木は。 「そっか、アカペラか今回はまだまともだな。」 「でもやっぱり音楽関係の部活には有利だよ。勝てるかな?」 「・・・・・・考える事だね。」 「えっ?」 「お前の『考えて歌うカラオケ』の要領でアカペラで歌う曲はどんな曲が良いか 自分の頭で考えてみろよ。バーをわかす位の実力は持ってるんだから。」 「・・・うん、そうだなやってみるわ。」 その日から彼は考え始めた・・・・・・。 さて五日後、カラオケ大会予選当日。 「う〜・・こんなん初めてだから緊張するなあ。」 「大丈夫、仁木君なら絶対合格するって、歌なんでしょ? じゃあ私ここで見てるから、頑張ってね。」 大会議室にはたくさんの人が集まっていた。出場者はもちろんのこと、 その友達や応援など・・・、予選もまた一つのイベントなのである。 「それでは、今からカラオケ大会予選を始めます!参加者は前に出てきて下さい。」 仁木は前に出ていった。周りを見渡すとこの前よりも人数は減っていた。40人位だ。 ここで彼は24番という数字の書いてある紙を渡された。 前には審査員と思われる生徒と先生達がいる。全部で5人。 「それでは、番号順に始めます。番号を呼ばれた方は自分の学年、組、名前、歌う曲を 言ってから始めて下さい。」 どうやら彼の出番は24番目らしい。 「では1番の方どうぞ。」 「はい、1番二年五組、鈴木諭史、winter fall歌います。」 (おいおい、アカペラでか〜?) 一番の人が歌い始めました。 (う〜ん・・・やっぱりアカペラでこれはきついよ・・・。) そて、ここから先は人数が多いので目立った物だけ・・・。 「6番、3年7組。堅野 慎、昴(すばる)行きます。」 (おお、これは意外とナイス選択かも・・・。」 「11番、1年1組。水島 流美、time goes by。」 (ありがちだな・・・。ん?あ・・・・あれ?これは・・・。) 彼女は何とELTの方でなく、杏里のtime goes byを歌っている。しかもうまい (確かに僕は知ってるけど、みんな知ってるかな・・・この歌。 サビを聞けば思い出すだろうけど・・・・。) 「18番、山内 義男、3年3組、ヤッターマン歌います。」 (タ、タイムボカンシリーズ・・・。でもある意味OKかも・・・・。) 「それでは次、22番の方。」 ここで出てきたのは黒い服を着た背の高い男、みんなが一斉に注目しだした。 彼こそが前回優勝者、ロック部の「下市 光二」である。 「ちっ、何で俺まで予選に出なきゃいけねーんだよ・・・・。」 仁木の耳にそういう風な言葉が聞こえた。ガラは悪そうだ。 「22番、3年4組、下市 光二、え〜と、そんじゃあ〜・・・。」 (こ、こいつ、考えてきてないのか!?) 「Luna seaの・・・・In silence。」 (おいおい、Luna seaって・・・・。) 下市が歌い始めた。確かに上手いんだが・・・。審査員はちょっと不思議 そうな顔をしている・・・。 (この歌・・・俺は好きなんだけどなあ〜・・・。それに彼の声だったら・・。」 歌い終わると、彼はすぐに部屋を出ていってしまった。 さて、いよいよ仁木の出番が近づいてきた。内心ちょっと不安ながらも、 そのドキドキ感が逆に快感に感じてしまう怪しい男、仁木であった。 「次、24番どうぞ。」 「はい、24番、3年1組、仁木 友信、歌は・・・。」 そして今回彼の選んだ歌は・・・・。 「イージューライダー!」 〜♪〜何もないな、誰もいないな、快適なスピードで、    道はただ延々続く、話しながら、歌いながら〜〜〜。    カレンダーも、目的地も、テレビもましてやビデオなんて、    いりませんノンノン僕ら、退屈なら、それもまたグ〜〜〜。    名曲をテープに吹き込んで    あの向こうの、もっと向こうへ    僕らの自由を〜、僕らの青春を〜。    大げさに言うのならば、きっとそういう事なんだろう。〜♪〜 歌い終わり一礼する仁木、審査員もうなずいている。 彼は部屋の外に出て、ほっと一息ため息をつく・・・・。 「仁木君!おつかれさま。」 「ああ・・・。どうだった?」 「・・・・良かったけど・・・どうしてあの曲なの?仁木君ならもっと ロック系のかっこいい曲歌えるのに・・・。」 「それはね・・・・。」 さて予選もも終わり最後に審査委員長からの挨拶。 「これから厳正な審査を執り行います。結果は3日後掲示板に貼って おきますので、参加者は見ておいて下さい。それでは、お疲れさまでした。」 「・・・・でどうだったんだよ仁木!」 「ああ・・・・結構脈有りだったかな?」 「まあ、お前なら予選位楽勝だと思ってっけど・・。」 3日後・・・。 掲示板に予選の結果が貼り出された。 「よっしゃ!見に行こうぜ。」 仁木と立山は掲示板の方へ走っていった。 すると、向こうから・・・・。平中が・・・・・・。 「た、たたた、大変、大変〜〜!!!」 〜to be continued....〜 歌の紹介 (イージュー★ライダー) 奥田民夫の歌である。 彼の歌は、ちょっと高いと言う所を除けば、スローテンポの 非常に歌いやすい曲である。今回アカペラと言うことで、 仁木はこの曲を選んだ訳だが、実は最後の最後まで 「素晴らしい日々byユニコーン」とどちらを歌おうか迷っていたのである。 どちらも歌っててリズムを刻めたり、笑顔が作れたりと 歌うことに余裕が出来るので、アカペラにはもってこいなのである。 そこで、こちらの方を選んだ決め手となったのは。 仁木曰く「曲の感じがこっちの方が明るい。」と言うことらしい。
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