さまざまな伝説に彩られた天然記念物
昔々のこと、一人の漁師が沖にでて釣りをしていました。ところが待てど暮らせど一匹の魚もとれません。そのうち日も暮れてきたので、これがこの日の最後と、漁師はもう一度だけ釣りざおを振りました。釣り糸はぐーんと伸びて海に落ち、そのまま沈んでいきました。
まもなくびりっとした手ごたえが伝わってきたので、漁師はそら来た、とばかりに懸命に引きはじめましたが、おかしなことに、いくら引いても何も上がってきません。漁師は木の株でも引っかけたかと、がっかりして舟を返しましたが、釣り糸は船着き場までどんどん伸びてきてしまいました。
さて、翌朝、漁師が船着き場へ行ってみると、なんと昨日の釣り糸が太い網に変わり、その先にこんもりと木々の茂った小島がくっついているではありませんか。
おどろいた漁師は仲間を呼びあつめ、大勢で綱を引きはじめました。すると島はどんどん近づいてきて、港の出入り口のところまで来たところで、ぴたりと動かなくなってしまいました。
これを見た漁師たちは、これは神様の島に違いないと、早速、島にお宮をたて、海上安全の神様・鹿島明神をまつることにしたということです。
このような伝説にいろどられた鹿島の森は、椎・椿・タブなど北陸には珍しい木々が原生し、現在は天然記念物の指定を受け、多くの観光客が訪れるところとなっています。
写真左:吉崎御坊絵図(1473)
写真右:御山から眺めた鹿島の森
この頁は「蓮如伝説への旅」戎光祥出版より、一部を転載しました