生化学講義第三回:糖類=炭水化物

教科書23ページ

毎年冬になって福井名物の水ようかんを食べるときに添付された木べらをうまく使えないと手についてしまってにちゃにちゃすることを経験しているでしょう。でもそのにちゃにちゃは水洗いすれば簡単に洗い流せます。それは糖がにちゃにちゃする親水性の有機物だからです。

化学的には@カルボニル基(アルデヒド基-CHOやケトン基=C=O)を持つ・・・アルデヒド基を有する糖をアルドース、ケトン基を有する糖をケトースという。〰オースは糖を表す物質名。

A    多価(-OHがたくさん付いた)アルコール・・・-OHがたくさんあることがにちゃにちゃ感の原因。

と定義される。たとえばグルコースは1個の-CHOと5個の-OHを持つ。

(図2-3の説明)

その定義から見るとグリセロールC3H5(OH)3(三価アルコール)はまだ糖ではない。グリセロールの末端の炭素(C1またはC3)が酸化されてアルデヒド基になったグリセルアルデヒドと真ん中(C2)が酸化されたジヒドロキシアセトンは最も単純な糖となる。

炭素が3個の糖をトリ(3)+オース=三炭糖トリオースC3H6O3

炭素が4個の糖をテトラ(4)+オース=四炭素テトロースC4H8O4

炭素が5個の糖をペンタ(5)+オース=五炭素ペントースC5H10O5

炭素が6個の糖をヘキサ(6)+オース=六炭素ヘキソースC3H6O3

炭素が6個の糖をヘプタ(7)+オース=七炭素ヘプトースC7H14O7

教科書24ページ

(図2-4の説明)

六単糖(ヘキソース)のグルコースは直鎖状態が書き表しやすい。アルデヒド基の炭素を1番として順に6番まで番号を付ける。水溶液中ではC1のアルデヒド基(-CHO)とC5のヒドロキシ基(-OH)が反応して環状構造になってO原子を含んだ六角形(ピラノース)を作る。同時にC6の部分は環外に押し出される。

環状構造を形成する時にC1-OHが糖構造の下方向にくるものをα、糖構造の上方向に向いている状態のことをβという。

(図2-5の説明)

炭素原子の4本の手につながっている原子団が全部異なっているとき立体異性体ができるので中心の炭素を不斉炭素という。グリセルアルデヒドには二つの立体異性体D-グリセルアルデヒドとL-グリセルアルデヒドができる。アルデヒド基を上に置いた時- OHC5の右に位置するものをD型(ギリシャ語のDextro右巻き)、左に位置するものをL型(ギリシャ語のLevo左巻き)という。グルコースは自然界では大部分D−グルコース。

教科書25ページ

(      )

(図2-6の説明)

五単糖C5H10O5リボースRNAの糖)とデオキシリボースDNAの糖)は核酸のところで出てきます。

六単糖:全部C6H12O6だが、構造が異なる。

グルコースは干しぶどうから初めて単離されたためブドウ糖と呼ばれるが、生物のエネルギー源として最も基本的なもの。

フルクトースはケトン基C2C5に結合しているOHが反応して五角形(フランに似ているのでフラノース)の状態になっていることが多い。βフルクトースはαフルクトースの約3倍の甘味をもつ。低温ほどβフルクトースの割合が増えるので、スイカやメロンは冷やすと甘くなる。グルコースとフルクトースは官能基の種類が違う(アルデヒド基とケトン基)ので構造異性体(イソマー)であるという。

炭素番号 グルコース フルクトース マンノース ガラクトース

1        CHO         CH2OH       CHO        CHO

2      H-C-OH        C=O      HO-C-H      H-C-OH

3    HO-C-H      HO-C-H       HO-C-H    HO-C-H

4      H-C-OH      H-C-OH      H-C-OH   HO-C-H

5      H-C-OH      H-C-OH      H-C-OH    H-C-OH

6        CH2OH       CH2OH       CH2OH    CH2OH

グルコースとマンノース、ガラクトースは官能基の種類や結合の仕方は全く同じだが、炭素原子(C2C4)に結合する-H-OHの立体配置が違うので立体異性体(エピマー)であるという。

教科書26ページ

オリゴ(少)糖類

 単糖類が2〰10個グリコシド結合したもの。

 特に2個つながったものを二糖類という。

C6H12O6+ C6H12O6C12H22O11+H2O

(図2−7の説明)

α-グリコシド結合は糖構造の下方向に置換基が結合する。β-グリコシド結合は糖構造の上方向に置換基が結合する。1

,4の番号はグリコシド結合をしている炭素を識別する。

スクロース(蔗糖、ショ糖):グルコース+(       )

マルトース(麦芽糖):グルコース+(       )がα1→4結合

ラクトース(乳糖):(       )+グルコース

セロビオース:(       )+グルコースがβ1→4結合

これの多糖類はセルロース。人では消化できない。

どれも片方の糖はグルコースということを覚えておこう。

(余談)餅や団子が時間とともに固くなるのを防止するための食品添加物のトレハロースはグルコースが1,1-グリコシド結合したもの。

教科書27ページ

(      )

ホモ多糖:同じ単糖から成る。

デンプン(植物が糖を貯蔵するかたち):アミロース(直鎖:α1→4結合)とアミロペクチン(直鎖と枝分かれ:α1→6結合)

グリコーゲン(動物が糖を貯蔵するかたち、図2-8):直鎖:α1→4結合でつながって8分子ごとに分枝:α1→6結合。

セルロース:植物の細胞壁を構成する。グルコースがβ1→4結合した多糖類。人では消化できない。ヤギの腸内細菌はセルラーゼを産生するのでエネルギー源にできる。(人が消化できてエネルギー源になるものを糖というが、セルロースのように消化できないものカロリーにならないので食物繊維と呼ばれる。)

マンナン:こんにゃくの成分

ヘテロ多糖:異なる種類の単糖類(NやSも)がつながってできる

ヒアルロン酸:グルクロン酸+N-アセチルグルコサミンの繰り返し。皮膚、関節液に多く存在し、皮膚のみずみずしさの程度に関係。

ヘパリン:グルコサミン、グルクロン酸を含む。抗血液凝固剤として血液透析で回路内で血液が固まらないようにする。

キチン:カニやエビの殻。N-アセチルグルコサミンを多く含む。

 

グルコマンナン:こんにゃくの成分。マンノース、グルコースを含む。人間の消化液にはマンナンを分解する酵素がなく、消化されない。

グルクロン酸 グルコサミン N-アセチルグルコサミン N-アセチルガラクトサミン

CHO         CHO              CHO                 CHO

H-C- OH        H-C- NH2         H-C-NH-CO-CH3         H-C-NH-CO-CH3

HO-C-H       HO-C-H          HO-C-H             HO-C-H

H-C-OH       H-C-OH          H-C-OH             HO-C-H

H-C-OH       H-C-OH          H-C-OH              H-C-OH

COOH        CH2OH          CH2OH               CH2OH

(余談)血液型は赤血球膜の糖鎖の一番外側の違い

A型:N-アセチルガラクトサミン                

B型:ガラクトース         

AB型:N-アセチルガラクトサミンとガラクトース両方ある

O型:上記のどちらもなし

 

教科書62ページ糖質代謝(糖質の分解と合成)

教科書63ページ

糖質代謝の概要

地球上のエネルギーは元はすべて太陽エネルギーに由来。植物が太陽光を浴びて光合成によりCO2H2Oから糖質(CHO)nが合成される。米、小麦などとして主食となる。糖質の分解により生命活動に必要な(                )(      )が作り出される。

糖質の消化、吸収

(図4,1-1の説明)

食物中の糖質は大部分が多糖類の(        )(米、小麦)。他に二糖類のスクロース(砂糖)、(          )(水あめ)、ラクトース(牛乳や母乳)、さらに単糖類の(          )、ガラクトース、フルクトースがある。

デンプンは口中で唾液の(          )(α1→4結合を分解する)により二糖類のマルターゼ(麦芽糖)か限界デキストリン(枝分かれ部分のα1→6結合が残っている)となる。あまりかまずに飲み込んでも十二指腸で再び膵液のアミラーゼならびに限界デキストリナーゼ(α1→6結合を分解する)により二糖類レベルまで消化される。唾液アミラーゼと膵液アミラーゼは基質に対する反応は同じだがタンパク質組成としては違うもの(=アイソザイム)である。アミラーゼは商品名タカジアスターゼ(富山県出身の高峰譲吉が抽出した)で市販されている。

最終的に小腸の粘膜上皮内にあるマルターゼによりグルコースとなり消化の過程を終了する。他の二糖類のスクロースはスクラーゼによりグルコース+フルクトースに、ラクトースはラクターゼによりグルコース+ガラクトースとなる。(大人で牛乳苦手=ラクターゼが欠乏している人には腸内に未消化の乳糖が吸収されないまま存在するので牛乳を飲むと浸透性の下痢が起こる。)

こうして単糖類のグルコース(フルクトース、ガラクトース)は小腸粘膜上皮細胞から能動輸送で吸収されて毛細血管から門脈に入り肝臓に向かう。

☆国家試験問題:( )の組織を還流した血液は心臓に戻る前に肝臓を通過する。( )に入るのはどれか。p90参照)

1舌

2食道

3小腸

4腎臓

5下肢

(答え一発3。小腸の血管は門脈に注ぐ。他は大静脈に注ぐ。)

☆国家試験問題:小腸からそのまま吸収されるのはどれか。2つ選べ。

1グルコース

2スクロース

3マルトース

4ラクトース

5フルクトース

(単糖類の1と5を選ぶ。2,3,4は二糖類)

(余談)しろやぎさんがくろやぎさんから来た手紙を読まずに食べたというようにやぎは紙を食べることができる(消化できる)。ヤギなどの草食動物ではその消化管内に存在するバクテリアから出されるセルラーゼを使ってセルロースを消化してカロリー源とすることができる。人はセルロースを消化できないが、食べると消化吸収できないが腸管の運動を刺激して便通を促進する。このように消化できない糖はカロリーにならないので食物繊維と呼ばれる。

教科書64ページ

(図4,1-2の説明)

(1)グルコースの消化吸収後小腸から全身へ。

(2)全細胞でグルコースが細胞に到達すると細胞質に取り込まれてピルビン酸に変えられて、ミトコンドリア内のクエン酸回路でATPに変換される。好気的(    )という。

(3)赤血球にはミトコンドリアがないので細胞質での嫌気的解糖のみで乳酸まで反応が進む(嫌気的解糖)。激しい運動時の骨格筋でも酸素欠乏のために嫌気的(    )が行われて乳酸がたまる(筋肉疲労)。これらの乳酸は血中を肝臓まで運ばれてピルビン酸に戻される。

(4)空腹に備えて貯める方法として肝臓や筋肉でグルコース→(            )(多糖類)合成。

(5)核酸の原料のリボースや、アミノ酸(20種類のうちの10種類)の炭素骨格、脂質合成のための補酵素NADPHを作り出す方向。(                    )

(6)絶食時の(    )値維持のための糖新生。

(7)ホルモンによる血糖調節。

糖質代謝の流れ

教科書65ページ

細胞に入ったグルコースはまずグルコース6リン酸に変えられてから3つの方向に分かれる(図6)。

(1)(    )系でATPを作る材料に。

(2)(      )貯蔵。空腹時の(    )値の維持に使われる。

(3)(            )で(        )と(          )を産生。

解糖のしくみ

教科書66ページ

(図4,1-3の説明)

次の3つの順番で進む。

@    消化管でグルコースに消化吸収

A    細胞に取り込まれて細胞質で解糖系に入る(図の四角で囲まれた部分)。1分子のグルコースから2分子のピルビン酸(⇔    )に分解される過程。脱水素酵素の働きで4Hが切り出され、2ATPが生成する。

 C6H12O6(グルコース)→2C3H4O3(          )+4H +2ATP2C3H6O3(乳酸)+2H +2ATP

全力疾走時の筋肉など酸素供給が十分でない状態では2NADH,Hは、ピルビン酸の乳酸への還元に消費される。そのため再びNADに戻ることができ、解糖系の脱水素酵素は酸素がない状態でも働き続けることができる。この乳酸は血液中に出て肝臓に運ばれてピルビン酸に戻される。そして1/5は好気呼吸でCO2H2Oに分解され、4/5はグルコースに再合成される(糖新生)。

赤血球ではミトコンドリアがないので嫌気性解糖のみが行われる。赤血球自身は酸素を消費せず組織に酸素を運ぶという本来の目的にかなったものである。

☆国家試験問題:全血の検体を25℃の室内に放置すると低下するのはどれか。

1血糖

2乳酸

3遊離脂肪酸

4アンモニア

(答えは1の血糖。全血ということは赤血球があるということなので、赤血球の解糖系でグルコースが分解されて乳酸になるので血糖は低下し乳酸は上昇する。赤血球ではミトコンドリアがないので脂肪酸は代謝されない。アンモニアができる反応は肝臓のみ。)

ミトコンドリアがあって好気的条件(酸素がある時)では次に進む。

B    ミトコンドリアのマトリックスにピルビン酸が入ってアセチルCoAに変化する(ビタミンB1=チアミンが補酵素)。

C    (           )脱炭酸酵素と脱水素酵素の働きで6CO220HNADFADが運ぶ)に完全に分解される。2ATPが生成する。

 2C3H4O3+6H2O6CO2+20H +2ATP

D    ミトコンドリアのクリステ(内膜)で解糖系とクエン酸回路で生じた24HNADFADに運ばれて電子伝達系に入る。最終的に酸素と結合して水になる。その間に徐々にエネルギーが解放され、34ATPが生成する。

 24H+6O212H2O+34ATP

かくして解糖全体の反応式は

 C6H12O6+6O26CO2+6H2O+38ATP

となり、形としてはグルコースが燃焼して二酸化炭素と水とエネルギーが産生される化学反応式となる。

(余談)無酸素運動が主の白筋はミトコンドリアがほとんどない。ニワトリや七面鳥のように急に逃げるようなときだけ短時間飛ぶ鳥、ヒラメのような普段海底でじっとしていて餌が近づくと瞬間的に動いて捕食する魚類では速筋が主となり筋肉が白い。短距離選手の速筋。

有酸素運動が主の赤筋はミトコンドリアが多いのでそれに含まれるシトクロムで赤くなる。鴨や雁のような渡り鳥、マグロのような回遊魚の筋肉はエネルギーを連続供給しなければならないので遅筋が多く筋肉の色が赤い。電子伝達系に入る。長距離選手の遅筋。

糖の消化についてはここまで知っていれば十分。

以下は知っていたら偉いという程度で気軽に学んでください。

嫌気的解糖

教科書67ページ

(図4,1-4の説明)

上から反応の順番に番号をつけてください。(図7)

(1)最初の反応はグルコースが(                  )(      )になる。

酵素は(              )肝臓では(              )

グルコース+ATP→グルコース6-リン酸(G6P+ADP

(2)グルコース6-リン酸イソメラーゼ

グルコース6-リン酸⇔(           )

(3)ホスホフルクトキナーゼ-1

フルクトース6-リン酸+ATP→(               )+ADP

(4)アルドラーゼ:C6化合物からC3化合物2個へ

フルクトース1,6-ビスリン酸⇔(             )+(              )

(5)トリオースリン酸イソメラーゼ

ジヒドロキシアセトンリン酸⇔グルセルアルデヒド3-リン酸

(6)グリセルアルデヒド--リン酸デヒドロゲナーゼ

グルセルアルデヒド3-リン酸+2NAD⇔(               )+2NADH,H

(7)ホスホグリセリン酸キナーゼ

1,3-ビスホスホグリセリン酸+ADP⇔(           )+ATP

(8)ホスホグリセリン酸ムターゼ

3-ホスホグリセリン酸⇔(           )

(9)エノラーゼ

2-ホスホグリセリン酸⇔(            )+H2O

(10)ピルビン酸キナーゼ

ホスホエノールピルビン酸+ADP→(     )+ATP

(11)乳酸脱水素酵素(LDH):嫌気条件下

ピルビン酸+2NADH,H⇔(   )+2NAD

一方向のみ(→)が3か所(1)(3)(10)ある。解糖と反対の反応である糖新生の時に重要。

(余談:フルクトース、ガラクトース、マンノースの代謝)

フルクトースはフルクトース-6-リン酸かグリセルアルデヒド3-リン酸2分子になる。。

ガラクトースはガラクトキナーゼによりガラクトース1リン酸、次にガラクトース1リン酸ウリジル転移酵素によりUDPグルコースと反応してUDPガラクトース、次にエピメラーゼによりUDPグルコースになってグルコース6-リン酸になる。いずれの酵素の欠損によっても先天性代謝異常のガラクトース血症になる。ガラクトースの利用ができないと血中ガラクトースが上昇して蓄積したガラクトースにより白内障や精神遅滞を起こす。唯一の治療法は小児期にガラクトースやラクトースを含まない人工乳で育てること。

マンノースはフルクトース-6-リン酸になる。

教科書68ページ

好気的解糖(クエン酸回路と電子伝達系)

1分子のグルコースから38 分子のATPができる

教科書69ページ

(図4,1-5の説明)

解糖系で生じたピルビン酸は細胞質基質からミトコンドリアのマトリックスに取り込まれる。ピルビン酸脱水素酵素により補酵素Aと結合して(              )となりクエン酸回路に入る。

ピルビン酸+CoA+TPP +NAD→アセチルCoA+CO2+TPP+NADH,H

COOH           S-CoA

C=O            C=O

CH3            CH3

CoA(補酵素A)は水溶性ビタミンのパントテン酸とADP誘導体から成る複雑な分子で補酵素という名前はついているが酵素反応を補助するというよりもアセチル基の運搬体として活躍している。TPPはビタミンB1のチアミンを成分としておりCO2を抜き取る働きがある。NADはナイアシンを成分としており水素原子の運搬体として働いている。

☆国家試験問題:ビタミンの欠乏とその病態との組合せで正しいのはどれか。(p476967参照)

1ビタミンA―――――壊血病、

2ビタミンB1―――――代謝性アシドーシス

3ビタミンC―――――脚気、

4ビタミンD―――――悪性貧血

5ビタミンE―――――出血傾向

(ビタミンB1はピルビン酸脱水素→アセチルCoAを触媒するピルビン酸脱水素酵素の補酵素になるのでピルビン酸→乳酸が進んで血液が酸性に傾くので2。しかし、それを知らなくても他が間違いと分かれば消去法でも解ける。)

クエン酸回路

(1)クエン酸合成酵素により

アセチルCoA+オキサロ酢酸→クエン酸+CoASH

(2)アコニターゼにより

クエン酸⇔イソクエン酸

(3)イソクエン酸脱水素酵素により

イソクエン酸+NAD2-オキソグルタル酸+NADH,H+CO2

(4)2-オキソグルタル酸脱水素酵素により

2-オキソグルタル酸+CoA+NAD→(        )+NADH

2-オキソグルタル酸にアミノ基が付いてアミノ酸になる)

(5)スクシニルCoA合成酵素により

スクシニルCoA+GDP⇔(    )+CoA+GTP

(スクシニルCoAにアミノ基が付いてアミノ酸になる)

(6)コハク酸脱水素酵素により

コハク酸+FAD⇔フマル酸+FADH2

(7)フマラーゼにより

フマル酸+H2O⇔リンゴ酸

(8)リンゴ酸脱水素酵素

リンゴ酸+NAD⇔オキサロ酢酸+NADH,H

以上を

まとめると

2C3H4O3+6H2O6CO2+20H(4 NADH,H+ FADH2) +2ATP(GTP)

電子伝達系

以上の解糖系とクエン酸回路で取り出された水素原子はH+と電子に分かれ。電子がミトコンドリアのクリステに並んだFMNCoQ、シトクロームの間を受け渡しされる過程で多くのATPが生成する。最後に電子は酸素とH+と結びついて水が生成する。この反応系を(          )という。

という。

電子伝達系は酸素がないと反応停止する。電子伝達系が停止すると(        ),Hあるいは(        )の水素が使われなくなりNADFADに戻れなくなる。脱水素酵素はNADFADがないと働かない酵素なので、これらの脱水素酵素が働かなくなるため、クエン酸回路も停止する。

青酸カリ(シアン化カリウムKCN)中毒では生じたシアン化水素がシトクロームを阻害して電子伝達系を停止させてしまう。

教科書70ページ

グリコーゲン合成(空腹時に備えて)と分解(空腹時)

グリコーゲン合成はほとんどの細胞で行われるが、おもな合成場所は肝臓と筋肉である。

グルコース→グルコース6-リン酸 ⇔グルコース1-リン酸→UDP-グルコース→既存のグリコーゲンにくっつく

CHO         CHO                CHO PO32-         CHO-UDP

H-C-OH       H-C-OH             H-C-OH           H-C-OH

HO-C-H      HO-C-H             HO-C-H            HO-C-H

H-C-OH      H-C-OH             H-C-OH           H-C-OH

H-C-OH      H-C-OH             H-C-OH           H-C-OH

CH2OH      CH2OPO32-           CH2OH            CH2OH

最後のUDP(ウリジン二リン酸、ATPCoAのような高エネルギー化合物)-グルコースがグリコーゲン合成酵素により既存のn個のグルコースから成るグリコーゲン(n)に渡されてグルコースの数が一つ多いグリコーゲン(n+1)となる。

(図4,1-6の説明)グリコーゲン分解

エネルギーが必要になってグリコーゲンが分解されるときはグリコーゲンホスホリラーゼによりグルコース1-リン酸⇔グルコース6-リン酸にもどる。

肝臓ではグルコキナーゼの逆反応の酵素のグルコース6ホスファターゼによりグルコースになって血中に出て脳や赤血球に供給される。

筋肉ではグルコース6ホスファターゼがないのでそのまま解糖系に入って筋肉自身のエネルギー産生に使われる。

(余談)マラソン大会の数日前から炭水化物の摂取を多めにしてグリコーゲン貯蔵量を増やしておくことをグリコーゲンローディングという。

糖原(グリコーゲンの日本語)病

先天性の酵素異常でグリコーゲンをグルコースに分解できない。グリコーゲンが肝臓にたまって肝腫大を起こしたり筋肉では筋力低下などが起こる。

糖原病Tグルコース6ホスファターゼの欠損で肝臓にグリコーゲンがたまって腫大する。空腹時にグリコーゲンを使用できないので治療は低血糖にならないように少量ずつ頻回に食事摂取、夜間は糖分持続注入しないと低血糖になってしまう。

糖原病Xは筋肉のグリコーゲンホスホリラーゼの欠損。筋肉にグリコーゲンがたまる。

糖原病Yは肝臓のグリコーゲンホスホリラーゼの欠損。肝臓にグリコーゲンがたまる。

ペントースリン酸回路

解糖系に入ったグルコースの30%がこの経路に入る。

教科書71ページ

(図4.1-7の説明)

グルコース6-リン酸+NADP+H2O6-ホスホグルコン酸+NADPH

     CHO                            COOH

   H-C-OH                       H-C-OH

HO-C-H                          HO-C-H

  H-C-OH                        H-C-OH

  H-C-OH                        H-C-OH

CH2OPO32-                           CH2OPO32

6-ホスホグルコン酸+NADP→リブロース5-リン酸+NADPH,H+CO2

      COOH

   H-C-OH                  CH2OH

HO-C-H                    C=O

 H-C-OH                H-C-OH

   H-C-OH                H-C-OH

CH2OPO32-              CH2OPO32

リブロース5-リン酸→リボース5-リン酸→核酸合成に使われる。

CH2OH           CHO

      C=O          HO-C-H

  H-C-OH           H-C-OH

  H-C-OH           H-C-OH

CH2OPO32          CH2OPO32

このように核酸の成分の五単糖(リボース)と補酵素NADPHを作り出す。

この後リボースはさらにデオキシリボースになりDNAの成分として利用される。

NADPHは脂肪酸やコレステロール合成のときの補酵素として利用される。

糖新生

空腹が続いてグリコーゲンが尽きかけるとグリセロールや乳酸、アミノ酸など糖質でない化合物から体内でまったく新しくグルコースをつくるようになることを(      )という。(たとえばライオンなどの肉食動物はタンパク質しか摂取しないがアミノ酸から糖を作ってエネルギーにしている。)糖新生の原料となるアミノ酸を(              )という。

教科書72ページ

(図4,1-8の説明)

糖新生の原料

(1)グリセロール→ジヒドロキシアセトンリン酸

CH2OH         CH2OPO32-

CHOH          C=O

CH2OH         CH2OH

(2)糖原性アミノ酸(第五回の講義で)

 アラニンなど→ピルビン酸

アスパラギン酸など→オキサロ酢酸

(3)嫌気性呼吸で筋肉内で作られた乳酸⇔ピルビン酸

まずピルビン酸からホスホエノールピルビン酸へは逆に進めないため回り道をする。

ミトコンドリアに入ったピルビン酸がピルビン酸カルボキシラーゼ(ビオチンが補酵素)によりピルビン酸→オキサロ酢酸

COOH      COOH

C=O         C=O

CH3             CH

COOH

(4)オキサロ酢酸が細胞質に出てホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼにより

オキサロ酢酸⇔ホスホエノールピルビン酸

      COOH      COOH

      C=O        C-OPO32-

         CH        CH3

     COOH

(5)その後ホスホエノールピルビン酸⇔ジヒドロキシアセトンリン酸⇔グルコース6-リン酸

(6)最後に肝臓のみにあるグルコース6ホスファターゼにより

グルコース6-リン酸→グルコース

つまり糖新生は肝臓のみで行なわれる。

(図4,1-9の説明)

空腹でグルコースが足りなくなった時の状態を表している。体育の時間に全速で100m走った後に先生から、「走ってすぐに止まると筋肉に乳酸がたまるからそのままゆっくり歩け。」と言われたことがあると思います。ゆっくり歩くことによって血行を保てば乳酸やアラニンが筋肉から肝臓に運ばれて糖新生がうまく進む。

アラニン  →ピルビン酸←  乳酸

   COOH   COOH     COOH

H-C-NH2    C=O     H-C-OH

     CH3          CH3          CH3

糖新生は肝臓(腎臓でも少し)だけで行われる。糖新生によりできたグルコースは脳や赤血球に供給される。赤血球はミトコンドリアがないので嫌気的解糖でATPを得る。筋肉タンパク質が分解してアミノ酸からもグルコースが作られる。

教科書73ページ

血糖調節とホルモン

(図4,1-10の説明)

血糖の正常値=100mg/dL=100mg/100mL=0.1g/100g=0.1%

@血糖値を低下させるホルモン

膵臓ランゲルハウス島B(β)細胞から分泌される(          )

インスリンの作用:グルコースの細胞への取り込み促進、

肝臓で解糖促進(ヘキソキナーゼの反応を促進)

肝臓でグリコーゲン合成促進、分解抑制

グルコースから脂肪合成促進

糖新生の抑制

教科書74ページ

A血糖値を上昇させるホルモンは3つある。

膵臓ランゲルハンス島A(α)細胞から分泌される(          )

グルカゴンの作用:肝臓でのグリコーゲンの分解促進、グリコーゲンが無い時は糖新生促進。

副腎髄質から分泌される(          )

アドレナリンの作用:肝臓でのグリコーゲンの分解促進

副腎皮質から分泌される(          )

糖質コルチコイドの作用:筋肉のタンパク質の分解促進。脂肪組織の中性脂肪の分解促進。→生じたアミノ酸、脂肪酸を用いて肝臓での糖新生を促進。

教科書105ページ

エネルギー代謝の統合と制御

教科書106ページ

肝臓、筋肉、脂肪組織が代謝の中心。摂食時(満腹)、絶食時(空腹)、飢餓時(とても空腹)で変わる。

摂食時(インスリンが活躍)

エネルギーを貯蔵する。貯蔵形は糖質はグリコーゲン、脂質はトリアシルグリセロール、筋肉タンパク質。トリアシルグリセロールは血液中ではタンパク質と結合してリポタンパク質に変化して運ばれる。

(図5-1の説明)

肝臓:グルコースがATP産生に利用されるとともにグリコーゲン、脂質、アミノ酸に合成される。このグリコーゲンは必要時に再びグルコースに戻されて全身に供給される。

筋肉:グルコースがATP産生に利用されるとともにグリコーゲン合成に使われる。このグリコーゲンは筋肉の収縮時に再びグルコースに分解されて使われる。マラソン選手は競技数日前より高炭水化物食によりグリコーゲンローディングを行う。

脂肪組織:中性脂肪が蓄えられる。

脳だけは常にグルコースを消費し続ける。貯蔵はできない。(だから低血糖時はぼんやりする。)

教科書107ページ

絶食時(グルカゴン、糖質コルチコイドが活躍)

貯蔵していたグリコーゲン、中性脂肪、タンパク質を分解してエネルギーを得る。

教科書108ページ

(図5-2の説明)

肝臓:グリコーゲン分解。アミノ酸からの糖新生。脂肪酸からアセチルCoAができる。絶食時は肝臓内の糖が足りないのでクエン酸回路の回転が不足しておりアセチルCoAはクエン酸回路で消費されず運搬体のケトン体に変化して血液中に出る。

筋肉:筋蛋白分解。脂肪酸利用。肝臓からのケトン体をアセチルCoAにもどしてエネルギー産生に利用。マラソン選手はこのケトン体利用能力に優れている。

脂肪組織:ホルモン感受性リパーゼを促進して中性脂肪が分解される。

☆国家試験問題:健常な成人において空腹時にグルカゴンの働きでグリコーゲンを分解してグルコースを生成し血液中に放出するのはどれか。

1肝臓

2骨格筋

3脂肪組織

4心臓

5膵臓

(答え一発1の肝臓でのみ行われる。グリコーゲンは肝臓と骨格筋に多いが、肝臓ではグリコーゲン→グルコース6リン酸→グルコースとなり血中に放出されるが、筋肉ではグルコース6ホスファターゼがないのでグリコーゲン→グルコース6リン酸が直ちに解糖系に入る。)

代謝異常と疾患

糖質代謝異常の代表が糖尿病。脂質代謝異常は次回の講義で。

ラテン語でDiabetes(尿があふれる)+Mellitus(甘い)

→甘い尿が多量に出る=糖尿病DM

大きく2つに分けられる。

教科書109ページ

@    インスリン分泌の少ない1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)通常20歳以下で発症する。

(図5-3の説明)

グルコースの利用ができないので脂肪やアミノ酸の利用が増える。

肝臓:グリコーゲン分解とアミノ酸分解による糖新生が増える。脂肪酸分解でアセチルCoAが増えて、その血中運搬体であるケトン体(酸性)が多量に作送り出されてケトアシドーシスになる。

筋肉;タンパク質分解が進む。ケトン体がエネルギー産生に利用される。

脂肪組織:脂肪分解が進む。

→全身がやせた状態になる。

教科書110ページ

A    インスリンがあっても効きにくい2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)インスリン受容体の異常で一般に見られる糖尿病。40歳以後に発症することが多い。

B    教科書111ページ

(図5-4の説明)

1型ほどのようなことは起きないが高血糖状態が長く続くことにより血管壁が障害されて網膜、腎機能、神経伝達が障害される。

(余談)糖尿病の検査

@    尿糖:血糖値と腎尿細管の再吸収量で決まり、血糖値170180mg/dLを越えると尿に糖が検出される。

A    空腹時血糖値:前夜から10時間以上絶食し(飲水は可)、朝食前に測定したものをいう。正常値100mg/dL前後。

B    HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):高血糖が続くとグルコースはタンパク質に結合する。これを糖化という。赤血球のタンパク質であるヘモグロビンとグルコースが結合したものをグリコヘモグロビンという。このグリコヘモグロビンは何種類かあるが、糖尿病と密接な関係を示すのがHbA1cである。赤血球の寿命はおよそ120日(4か月)で、赤血球中のヘモグロビンには血糖値に比例してグルコースが結合したヘモグロビンであるHbA1cが生じることになる。血液中のHbA1c値は赤血球の寿命の約半分に当たる期間、つまり採血日から12か月間の血糖の状態を推測する指標として使用されている。

C    75g経口糖負荷試験:75gのグルコースを含む水溶液を飲んでもらい、飲む前と飲んだ後30分、60分、120分の血糖値を測定する。