1回 生化学を学ぶために知っておきたい化学の基礎知識

教科書138ページ 

生化学でよくみられる元素と元素間の結合の仕方

構造の1番簡単な水素原子から考える。

元素は概念(例:水素)、原子は実態(例:水素原子)。

中心に原子核があり電気的にプラスの陽子1個がある。その周囲を電気的にマイナスの電子1個が回っている。全体としてプラスマイナスゼロとなり。電気的に中性となる。原子全体の重さとしては電子の質量は陽子の1840分の1と軽いので原子量(原子全体の質量)はほとんど陽子の重さとしてよいから水素の原子量は1である。

次にヘリウム原子では原子核の陽子が2個になる。プラス電気の陽子同士は反発してしまうのでそれをつなぎとめるために電気的にプラスでもマイナスでもない中性子が2個ある。中性子は陽子と同じくらいの質量をもっているのでヘリウムの原子量は4である。

電子の周期は内側からK殻(電子2個入れる)L殻(8個)M殻(18個)N殻(32個)がある。

原子番号1の水素hydrogen(  )

K殻に1個の電子を持っているので、つなぐ手が1本あると考える。

原子番号6の炭素carbon(  )

 K殻に2個、L殻に4個の電子をもっているので、つなぐ手が4本あると考える。つなぐ手が4本もあるから炭素同士はさまざまな結びつき方をすることができ、数多くの有機化合物になることができる。炭素は有機化合物の骨格となっているので、炭素の連なりのことを炭素骨格と呼ぶ。

原子番号7の窒素nitrogen(  )

 K殻に2個、L殻に5個の電子を持っていてL殻の5個のうち2個は電子対を作り、残り3個の不対電子(単独の電子)が他の元素とつなぐ手3本あると考える。

原子番号8の酸素oxygen(  )

 K殻に2個、L殻に6個の電子を持っていてL殻の6個のうち4個は2つずつ電子対を作り、残り2個の不対電子が他の元素とつなぐ手2本あると考える。

原子番号15のリンphosphorus(  )

 K殻に2個、L殻に8個、M殻に5個の電子を持っていてつなぐ手5本と考える。

原子番号16の硫黄sulfur(  )

K殻に2個、L殻に8個、M殻に6個の電子を持っていてM殻の6個のうち6個とも不対電子になる場合はつなぐ手6本。

M殻の6個のうち4個が2つずつ電子対を作って残り2個の不対電子が他の元素とつなぐ場合はつなぐ手2本(-S-S-)。

(        )

共有結合は容易に電子を与えたり失ったりしない原子の間に形成される。化学反応とはこの共有結合が組み変わること。 

1本の手でつながっているものを(         )、2本あるいは3本の手でつながっているものをそれぞれ(        )、(        )という。

共有結合の例

水素分子H22個の水素原子どうしが1本の手で握手。

二酸化炭素分子CO2:炭素原子4本の手と2個の酸素原子の2本ずつの手が握手。

窒素分子N2:2個の窒素原子の3本ずつの手が握手。

 水H2Oや過酸化水素水H2 O2は?

☆確認問題:それぞれの元素記号を「手」を付けて書け。

 

 1, 水素 (    )

 

 

 2, 炭素 (    )

 

 

 3, 窒素 (    )

 

 

 4,酸素 (    )

 

 

 5, リン (    )

 

 

 6, 硫黄 (    )または(    )

 

(          )

たとえば塩化ナトリウムNaClは固体の時は共有結合のような状態でつながっているけれど、水に溶けると(     )する。そのような物質を(      )という。この時Naは電子を一つ放出して(         )のNa+になると安定した形になる。Clは電子一つを受け取って(         )のCl-になると安定した形になる。Na+Cl-は静電気力により引き合う。

ナトリウムイオン(    )

原子番号11

K殻に2個、L殻に8個、M殻に1個の電子を持っていて、M殻の1個の電子が引かれて1価の陽イオンNa+になると安定した形になる。

マグネシウムイオン(    )

原子番号12

 K殻に2個、L殻に8個、M殻に2個の電子を持っていてM殻の2個の電子が引かれて2価の陽イオンMg2+になると安定した形になる。

塩素イオン(    )

原子番号17

 K殻に2個、L殻に8個、M殻に7個の電子を持っていてM殻に1個の電子が足されて1価の陰イオンCl-になると安定した形になる。

カリウムイオン(    )

原子番号19

 K殻に2個、L殻に8個、M殻に8個の次はN殻に1個の電子が入る、このN殻の1個の電子が抜けて1価の陽イオンK+になると安定した形になる。

カルシウムイオン(    )

原子番号20

 K殻に2個、L殻に8個、M殻に8個の次はN殻に2個の電子が入る。このN殻の2個の電子が抜けて2価の陽イオンCa2+になると安定した形になる。

鉄イオン(    )または(    )

  原子番号26

  K殻に2個、L殻に8個、M殻に14個の次はN殻に2個の電子が入る。N殻の電子を2個失ってFe2+になる場合とさらに内側のM殻からも1個失ってFe3+になる場合がある。

  電子伝達系のシトクロームというタンパク中に含まれる鉄イオンがFe3++電子⇔Fe2+を繰り返して電子の受け渡しを行っている。(糖代謝で説明)

銅イオン(    )

 原子番号29

 K殻に2個、L殻に8個、M殻に18個の次はN殻に1個の電子が入る。M殻の電子を2個失ってCu2+になる。N殻の1個は励起された状態になる。(ここの説明はやや専門的になってむずかしいので銅は2価の陽イオンになるということだけ知っていればよいと思います。)

☆臨床検査技師国家試験問題:2価の陽イオンとなるのはどれか。2つ選べ。

1,カリウム

2,カルシウム

3,ナトリウム

4,マグネシウム

5,アルミニウム

(正解は24。それぞれK+,Ca2+,Na+,Mg2+,Al3+。アルミニウムは原子番号13だからK殻に2個、L殻に8個、M殻に3個の電子を持っていてM殻の3個の電子が引かれて3価の陽イオンAl3+になると安定した形になる。)

教科書139ページ

分子量、モル、モル濃度

(       ):水H2Oの分子量:Hの原子量の1×(  )+Oの原子量の16×(  )=18

ブドウ糖C6H12O6の分子量は12×(  )+1×(  )+16×(  )=180

(       ):分子量にgを付けたものを1モル(ひと塊とかひと山とかいう意味のラテン語)という。1モルは6×1023個の分子。1モルの水は18g、1モルのブドウ糖は180g。

(         ):mol/L(モルパーリットル)=M(モラー)ブドウ糖(分子量18018g=0.1モルを水に溶かして1リットルにした時0.1モル/L=0.1

イオンで存在する物質の濃度表示

(    )Eq(イクイバレントと読む)

イオンの効果(たとえば中和するのに必要な量)を表す時に用いられる単位。

Na+, K+, Cl-, HCO3-(重炭酸イオン)1モルは1価イオンなので1Eq

Ca2+, Mg2+, HPO42-(リン酸イオン)1モルは2価イオンなので2Eq

Eq=1000mEq(ミリイクイバレント、略してメック)

浸透圧

水やイオンなど細かい粒子は通過できるがタンパク質などの大きい粒子は通過できないような膜を半透膜という。腹膜や血管壁や細胞膜などの生体内の膜は半透膜としての性質を持っている。人工血液透析の膜も人工の半透膜である。濃度が違う2つの水溶液が半透膜で仕切られていた場合、お互いの濃度差が少なくなるように濃度の薄い方から濃い方に水が移動する現象を浸透といい、この水の流入を防ぐのに要する圧力を(       )という。溶液が濃いほど浸透圧が高い。つまり浸透圧は液体の濃さを表している、

(     )%のNaCl溶液(生理食塩水)や(   )%ブドウ糖液は人体の血液の浸透圧と等しいので(       )という。血管内に安全に注射できる。

血漿タンパク質の60%を占める(          )は肝臓で合成されているので肝臓の働きが低下すると低アルブミン血症になり、血漿タンパク質による(             )が下がるので血管から周囲に水分が出ていき浮腫(水ぶくれ)が起こる。

☆国家試験問題:生理食塩水の塩化ナトリウム濃度はどれか。

1、0.9%

2.5%

3、9%

4、15%

(答え1。)

☆国家試験問題:血漿と等張のブドウ糖溶液の濃度はどれか。

1、5

2、10

3、20

4、50

(答え1。)

☆国家試験問題:静脈内注射を行う際に、必ず希釈して用いる注射液はどれか。

1、5%ブドウ糖

2、15%塩化カリウム

3、0.9%塩化ナトリウム

4、7%炭酸水素ナトリウム

(答え2134は等張液でそのまま投与できる。4は酸性に傾いた血液を中和するもので8.4%のものも用いられている。2のカリウムは必ず希釈してゆっくり注入しなければならない。)

(余談)正常な状態ではカリウムは細胞内に多く細胞外には少ない状態である(血漿中のカリウム濃度は3.55.0mEq/Lであり細胞内はその30倍高い)。問題の15%塩化カリウムだと150g/L150÷(KClの分子量の40+35.5)は大体2000mEq/Lだから正常の100倍以上の濃度ということになる。そのような高濃度のカリウムを万が一にも薄めずに注射したら細胞外のカリウムが増加して細胞内との差が小さくなり、たとえば心臓の洞房結節の興奮の伝導を遅らせて心臓の収縮が悪くなり停止させてしまうこともある。(アメリカでは薬物による死刑執行時に使用する薬物である。)カリウムは生体に必要な電解質ではあるが投与方法によっては生命の危機を及ぼす作用があるため必ず薄めてゆっくりと投与する。

☆国家試験問題:血液中の濃度の変化が膠質浸透圧に影響を与えるのはどれか。

1血小板

2赤血球

3,アルブミン

4,グルコース

5,ナトリウムイオン

(答え3。)

☆歯科医師国家試験問題:血漿のタンパク質分画を検査した際の最も主要な分画はどれか。

1,アミラーゼ

2,アルブミン

3,コラーゲン

4,ヘモグロビン

5、グロブリン

(答え2。)

☆国家試験問題:血漿蛋白質の大部分を合成しているのはどれか。

1,

2, 肝臓

3, 腎臓

4, 膵臓

5, 脾臓

(正解2。)

教科書140ページ

生化学でよく使われる濃度の表し方

(1)   分子の数で表す

1mol6×1023個の分子

mol/L(モルper リットルまたはモル毎リットル)

(2)物質の重さで表す

小中高までの算数、数学、理科、化学で出てきた濃度は重さ/重さ(Weight/Weight)だったが、医療での濃度は重さ/容積(Weight/Volume)で表すことが多い。

(水の場合100g=100mLだからほぼ同じことを言っているわけだが。)

 0.9%のNaCl溶液(生理食塩水)はNaCl 0.9g100mLの水。

 5%のブドウ糖溶液はブドウ糖5g100mLの水。

(3)イオン量で表す

Eq/LmEq/mL

(余談)アシドーシス(体が酸性に傾いている状態)の治療薬「メイロン84」は炭酸水素ナトリウムNaHCO384gを1リットルの水溶液にした製品である。NaHCO3の分子量は23+1+12+16×384である。つまりNaHCO384g=mol/L=1Eq/L=1000mEq/1000mL=1mEq/mLになっている。塩基を1mEq補いたければ1mL注射すればよいわけである。(何mEq補えばよいかは血液ガス分析という検査から分かる)

☆国家試験問題:「フロセミド注15mgを静脈内注射」の指示を受けた。注射薬のラベルに「20mg/2ml」と表示されていた。注射量を求めよ。

(解答)濃度=溶質の重さ/溶液の容積だから20mg2ml15mg1.5mlで答え1.5ml

☆国家試験問題:5%のクロルヘキシジングルコン酸塩液を用いて0.2%希釈液2000mlをつくるのに必要な薬液量を求めよ。

(解答)濃度=溶質の重さ/溶液の容積だから溶質の重さ=濃度×溶液の容積

希釈の前後で溶質の重さは変わらないので求める薬液量をxとすると

5×x=0.2×2000、x=80、答え80ml

☆国家試験問題:6%消毒液を用いて、医療器材の消毒用の0.02%消毒液を1500ml作るために必要な6%消毒液の量を求めよ。

(解答)濃度=溶質の重さ/溶液の容積だから溶質の重さ=濃度×溶液の容積

希釈の前後で溶質の重さは変わらないので求める薬液量をxとすると

6×x=0.02×1500、x=5、答え5ml

☆国家試験問題6%の次亜塩素酸ナトリウム液を用いて0.1%次亜塩素酸ナトリウム液を1000ml作るために必要な6%次亜塩素酸ナトリウム液の量を求めよ。

ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。

(解答)x×6/1001000×0.1/100x =16.6・・・。答え17ml

化学変化

水素が燃えると2H2+O22H2O(水)

炭素が燃えると不完全燃焼C+OCO(一酸化炭素)完全燃焼C+O2CO2(二酸化炭素)

二酸化炭素が水に溶けるとCO2+ H2OH2CO3(炭酸)

同じように

NO(一酸化窒素)NO2(二酸化窒素)水に溶けるとHNO3(硝酸)

SO(一酸化硫黄)SO2(二酸化硫黄)水に溶けるとH2SO4(硫酸)-

acidと塩基base、塩salt

(   )とは水溶液中でH+を生じる物質→H+を与える物質

(    )とは水溶液中でOH-を生じる物質→H+を受け取る物質

(   )とは酸と塩基が中和して水になる(H++OH- H2O)時にできる物質。

中和反応:酸+塩基→塩+

HCl(塩酸水溶液)+NaOH(水酸化ナトリウム水溶液)→NaCl(塩化ナトリウム)+H2O

(余談)

強酸:ほとんど完全に分離している酸

塩酸HClH++Cl- (電離度94%)胃液中にある

硫酸H2SO42H++SO42- (電離度62%)

強塩基:ほとんど完全に分離している塩基

水酸化ナトリウムNaOHNa++OH- (電離度91%

弱酸:一部しか電離していない酸

酢酸CH3COOHH++CH3COO- (電離度1.6%

炭酸H2CO32H++HCO3- (電離度0.17%

弱塩基:一部しか電離していない塩基

水酸化アンモニウム NH4OHNH4++OH- (電離度1.3%

強酸+強塩基→生じる塩は中性

HCl+NaOHNaCl+H2O

強酸+弱塩基→生じる塩は酸性

 HCl+NH3NH4Cl

弱酸+強塩基→生じる塩は塩基性

H2CO3+NaOHNaHCO3(炭酸水素ナトリウム)+H2O膵液中にある

炭酸水素ナトリウム(商品名メイロン)は体が酸性に傾いた時の治療に使われる。

膵臓からの消化液にも炭酸水素ナトリウムが含まれている。胃液には塩酸HClが含まれ胃内消化物はいったん酸性になるが、その後十二指腸で膵液中の炭酸水素ナトリウムにより中和される。

教科書141ページ

pH(水素イオン指数)

英語風にピーエッチまたはドイツ語風にペーハーと読む。[H+](水素イオン濃度)の対数に-を掛けたもの。

H2OはごくわずかにH++OH-のように電離していて[H+]×[OH-]=10-14で一定になっている。[H+]が上がれば[OH-]が下がり、[H+]が下がれば[OH-]が上がる。

中性では[H+][OH-]10-7(mol/L)pH=(  )

酸性では[H+]が多くなるのでpHは7より(      )なる。

塩基性では[H+]が少なくなるのでpHは7より(      )なる。

人体のpHは弱塩基性の(    )±0.05に保たれている。

血液が酸性に傾いた状態を(            )、

塩基性に傾いた状態を(              )という。

(余談)身の回りの溶液のpH

アンモニア水12、海水8、血液7.4、牛乳7、唾液6.6、トマトジュース4.4、酢3、胃液1.5

☆確認問題:pH1の塩酸を10倍に薄めるとpHはいくつになるか。

pH1ということは[H+]10-1(mol/L)なので10倍に薄めると[H+]10-1×1/1010-2(mol/L)pH2になる。

☆発展問題:pH11の水酸化ナトリウムを10倍に薄めるとpHはいくつになるか。

pH11ということは[H+]10-11(mol/L)なので[OH-]=10-310倍に薄めると[OH-]10-3×1/1010-4(mol/L)になるから[H+]10-10pH10になる。

☆国家試験問題:正常な胃液のpHはどれか。

1pH1~2

2pH4~5

3pH7~8

4pH10~11

(強酸性の1を選ぶ。たくさん水を飲んで胃液が薄まるとpHが上がる)

酸化反応と還元反応

中学校の理科では、酸化は燃焼などにより物質が酸素を受け取ること、逆に還元は酸素を失うことと習った。しかし、高校の化学では、電子や水素の授受の定義を使う方がより広く酸化還元を説明できることを習った。

酸化(される) 同時に起こる 還元(される)

=燃焼

受け取る   ←酸素原子→  失う   

失う     ←水素原子→  受け取る

失う     ← 電子 →  受け取る

C+O2CO2

C3H6O3(乳酸)→C3H4O3(ピルビン酸)+2H

乳酸1分子から水素原子2個がとれてピルビン酸になったとき「乳酸は酸化された」という。

C3H4O3(ピルビン酸)+2HC3H6O3(乳酸)

ピルビン酸1分子に水素2原子が加わって乳酸になったとき「ピルビン酸は還元された」という。

有機化合物(炭素化合物)

(余談)人体の化学組成で水H2Oは生体内に最も多量(新生児80%、乳児70%、幼児~成人60%、老年5060%)に存在する成分。物質が水に溶けやすいか溶けにくいかは重要な性質。

☆国家試験問題:健康な成人の体重における水分の割合に最も近いのはどれか。

120

240

360

480

3が正解。)

☆国家試験問題:高齢者の体重に占める水分量の割合に最も近いのはどれか。

145%

255%

365%

475%

2が正解。)

(本題)水以外の人体の構成成分はほとんど炭素を中心とした有機化合物。有機(ゆうき)とは生物、生きているということ。有機化合物は生体を構成する化合物ということ。化学的には炭素骨格を含む化合物。

タンパク質(C,H,O,N,S)

脂質(C,H,O,P)水に溶けにくい

糖質(C,H,O)

核酸(C,H,O,N,P)

◎その他、無機質PCa(骨や歯の成分)、NaCl(浸透圧やpHの調節)、Fe(血液中のO2運搬に関与するヘモグロビンの成分)など。

17族はいずれも外側の殻が7電子なので、電子1個をとりいれて1価の陰イオンになりやすい。多くの金属元素とイオン結合により「塩をつくりやすい」。そのことをギリシャ語で「ハロゲン」という。

教科書142ページ

生化学でよく登場する用語

炭化水素(有機化合物の基本骨格):すべての炭素原子どうしが単結合している炭化水素を飽和炭化水素または(        )という。

大昔の太陽エネルギーがいっぱい詰まった化石燃料の成分。燃焼によりエネルギー(熱、光)が発生する。

メタンCH4 (沸点-161℃)都市ガスに利用される。

エタンC2H6(沸点-89℃)都市ガス

プロパンC3H8(沸点-42℃)プロパンガス。圧力を加えて液体にしてボンベで運べる

ブタンC4H10(沸点-0.5℃)カセットコンロ。小さい圧力で液体になるので小さい缶に入れられる。

芳香族化合物

1825年鯨油から発見されてC6Hと確認されたが、構造がなかなか解明されなかった・

1865年ドイツのケクレがベンゼン環を提案した。(夢の中でヘビが自分のしっぽをかんで回りだしたという。)

CHを略して六角形を書いて内部に単結合と二重結合を交互に描く場合と全体に丸を描く場合がある。

環状構造の中にC以外にNOを含むものを(              )という。たとえばプリンやピリミジン。CHを略してもNOはきちんと描く。

飽和化合物

炭化水素の一つのHCOOHになったものを脂肪酸という。炭化水素の部分が単結合のみから成るものを(           )という。常温で固体のことが多い。たとえば牛脂(ラード)中のパルミチン酸。その化学式は教科書のようにCH3(CH2)14COOHでも

CH3 CH2 CH2 CH2CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2 CH2CH2 CH2 CH2 CH2COOHでも

C16H32O2でもよい。

不飽和化合物

二重結合を含む脂肪酸を(               )という。二重結合が入ると融点が下がるので常温で液体のことが多い。たとえばオリーブ油中のオレイン酸。その化学式は教科書のように

CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOHでも

CH3CH2 CH2 CH2 CH2CH2 CH2 CH2 CH= CH2 CH2 CH2 CH2CH2 CH2 CH2 COOHでも

C18H33O2でもよい。オレイン酸はCOOHの反対側から数えて9番目に二重結合があるのでω9(オメガキュウ)脂肪酸またはn-9(エヌマイナスキュウ)脂肪酸という。

疎水性(水をはじく=水に溶けにくい性質)

共有結合している原子間で、原子が共有電子対を引き寄せる度合いを電気陰性度といい、FONClCHの順である。炭化水素のようにCHからなる分子では共有結合している電子は均等に分布しており、電荷の片寄りは見られない。このような状態を無極性という。したがって極性の大きな水にはほとんど溶けず、代わりに無極性もしくは極性の小さな有機溶媒にはよく溶ける=親油性。

親水性(水になじむ=水に溶けやすい)

水酸基-OHやカルボキシ基-COOH、アミノ基-NH2のような分子では共有結合の電子は電子を引き付ける力の強いON原子の方へ少し引きつけられる。このように共有結合に電荷の片寄りがある状態を極性があるという。水分子が水素結合によって水和しやすい。

界面活性剤(せっけん)

水と油を試験管に入れるときれいに分かれるが、その境目を界面という。界面活性剤は親水基と疎水基をバランス良く持っていて、親水性物質と疎水性物質をうまく混ぜ合わせて界面が消える。

ドデシル硫酸ナトリウムは疎水基と親水基の両方を持ち、台所用洗剤、はみがき、シャンプーとして用いられる。

(製法)C12H25OH(ドデカノール)というアルコールとH2SO4(硫酸)を混ぜると→C12H25-OSO3H+H2Oとなり

そこにNaOH(水酸化ナトリウム)を加えると→C12H25-OSO3Na(ドデシル硫酸ナトリウム)+ H2Oとなる。

C12H25の部分が疎水性、OSO3の部分が親水性。C12H25の部分が油汚れを取り囲んでOSO3の部分が外を向いて分離する。

人体中では胆汁酸に界面活性作用があって脂肪の消化に役立っている。細胞膜はリン脂質が外側に親水性部分を内側に疎水性部分を向けた二重構造になっている。シャボン玉が丸く広がるのもせっけん液が二重の壁を作っているから。

知っておきたい官能基Functional group

炭化水素の水素の部分をいろいろな原子の集団(官能基)に置き換えると、それぞれの官能基に特養的な性質が与えられる。化合物の官能基以外の部分を残基residueと言ってRと表す。

(余談)性的な小説を「官能小説」と言うが、「官能」は辞書的には「動物の器官の働き」という意味。化学での「官能」基は「働き=function」の意味である。

R-OHアルコール性水酸基

炭化水素の水素原子をヒドロキシ基-OHで置き換えた化合物を(          )という。このOH基は水酸化ナトリウムNaOHOH基とは異なって水に溶かしても電離しないのでアルコールの水溶液は中性である。

(余談)-OH 1個の場合1価アルコールという。

メタノール(メチルアルコール)CH3OH:服用するとアルコール脱水素酵素で酸化されて生成するホルマリンHCHOが網膜の酵素を重合させて失明する。

エタノール(エチルアルコール)C2H5OH:飲料、消毒用に用いられる。コロナウィルス対策でも酒造会社が消毒用エタノールを生産してもよくなった。飲用すると大部分は小腸から吸収されるが空腹時は胃からも吸収される。肝臓のアルコール脱水素酵素でアセトアルデヒドに酸化され、さらにアルデヒド脱水素酵素で酢酸に酸化される。東洋人の40%はアルデヒド脱水素酵素の機能が低下しており、アセトアルデヒドによる悪酔い(悪心、嘔吐、動悸、頭痛など)が起こる。消毒作用は蛋白変性によるものでこのためには水の存在が必要なので77%に薄めたものが使われる。

-OH 2個の場合2価アルコール

エチレングリコール:水に溶けやすく融点が低いので水冷式エンジンの不凍液に用いられる。

 HO-CH2-CH2-OH

-OH 3個の場合3価アルコール

グリセロール(グリセリン):甘味料、潤滑剤として用いられる。これ自身はアルコールだが脂肪酸と結合して中性脂肪となって脂質の構成成分として重要。

H2C-OH

  HC-OH

  H2C-OH

(          )基R- COOH:水溶液中では-COO+H-となり酸性を示す。これを持つ化合物を(        )という。水溶液中では-COOH-COO-+H+で酸性-を示す。

酢酸などの低級(炭素数が少ない)カルボン酸は人には不快に感じられる臭いがする。

高級(炭素数が多い)脂肪酸はあまり臭くない。

(余談)-OH-COOHの両方をもつ化合物をヒドロキシ酸という。-OHは電離しないので全体としては-COOHの酸性になる。多くの果実に含まれる爽快な酸味成分で、人体では糖代謝の中間生成物でもある。

乳酸:ヨーグルト、漬物、疲労時の筋肉中

  COOH

H-C-OH

  CH3

リンゴ酸:リンゴ、モモ、ブドウ、クエン酸回路中の物質

COOH

H-C-OH

  CH2

COOH

クエン酸:みかん、レモン、シトロンに含まれる。クエンは漢字で枸櫞と書いてシトロンの意味(シトロンはレモンの仲間)。

COOH

CH2

HOOC-C-OH

CH2

COOH

(      )基R-NH

水溶液中では-NH+H2O-NH3++OH-で塩基性-を示す。

アミノ基を持つ化合物を(      )という。

アミノ基-NHと次に説明するカルボキシ基-COOH両方含む化合物をアミノ酸という。

(        )基CH-有機化合物の骨格をつくる炭化水素基の一種。CHの電気陰性度(電子を引き付ける力)の差はあまり大きくないのでC-H結合の極性は小さい。したがって極性の大きな水にはほとんど溶けないので疎水性(水をはじく性質)を持つ。

メチル基CH3-、エチル基CH3CH-、プロピル基CH3CH2CH-

ドデシル(意味:12)CH3CH2CHCH2CHCH2CHCH2CHCHCH2CH

(        )基CH3CO-

アシル基CHCO-の中でCH3 CO-を特にこういう。アセチルCoA(CH3CO-CoA)、アシルCoA(CmHn-CO-CoA)

(          )基R- CHO

これを含むものを(        )という。酸化されてカルボン酸-COOHになる。

教科書143ページ

(      )基R- (C=O)- R⊂アシル基R- (C=O)-

カルボニル基- (C=O)-の両側がHなのかCを含むRかによって名前が変わる。

ケトン基は両側にRが結合している。R-(C=O)-R’

アセトンCH3-(C=O)-CH3(糖尿病の人の呼気中に出る)

尿素NH- (C=O) -NH(アミノ酸が分解されてできるアンモニアから合成されて尿中に出る)

アシル基は少なくとも1方がRであればよい。R-(C=O)-

 アシルCoACH-(C=O)-S-CoA

アセチルCoACH3-(C=O)-S-CoA

アルデヒド基:R-(C=O)-H

(余談)ケトン基-C=O-とカルボキシ基-COOH両方含む化合物をケト酸という。

 ピルビン酸CH3(C=O)COOH

 アセト酢酸CH3(C=O)CH2COOH

(            )基(チオール基)R-SH

アミノ酸のシスティンにある。二つつながって-SH+-SH-S-S-(ジスルフィド結合)になる。Sの手が2本の場合。パーマは毛髪の-S-S-結合を切って-SH+-SHにしてカールした形にしてから、酸化して-S-S-結合を再生させる。(逆にカールした毛髪を伸ばすストレートパーマもある。)

生化学で重要な分子と分子の結合の仕方

(          )結合-O-糖の結合

-O-は一般にはエーテル結合というが、糖と糖のエーテル結合を特にO-グリコシド結合という。

(核酸中での糖と塩基との結合はN-グリコシド結合という。教科書42ページ)

糖やアルコールのOHどうしから水H2Oが取れて結合するので脱水縮合という。-OH+-OH-O-+H2O

エタノールC2H5OH+ C2H5OHC2H5-O-C2H5(ジエチルエーテル)+H2O

グルコースC6H12O6+グルコースC6H12O6→マルトースC12H10O11+H2O

(        )結合-COO-脂肪の結合

脂肪酸の-COOHとアルコールの-OHが脱水縮合して→-(C=O)-O+ H2O

高級(分子量の多い)エステルは脂質。グリセロールと3つの高級(炭素原子の多い)脂肪酸がエステル結合すると脂肪酸の酸性が消えて中性になるのでできた油を中性脂肪という。

低級(分子量の少ない)エステルは揮発性で容易に空気中を拡散して鼻粘膜に達する。快適な臭いが多い。

酢酸ペンチルCH3COOC5H11:ナシの香り

酢酸オクチルCH3COOC8H17:オレンジの香り

酪酸エチルC3H7COOC2H5:パイナップルの香り

酪酸ペンチルC3H7COOC5H11:あんずの香り

(      )結合(ペプチド結合)-CONH-タンパク質の結合

アミノ酸-COOH+隣のアミノ酸-NH2-CO-NH-+H2O

(          )結合-S-S-アミノ酸のシスティンどうしの結合

-SH+-SH-S-S-。頭髪の10%のアミノ酸がシスティン。先ほど説明したようにパーマをかけるときは-S-S-を一度切断してから再結合させる。

(    )結合核酸の塩基どうしの結合

電気陰性度(電子を引き付ける力F>O>N=Cl>C>H)が大きいONが小さいH原子をはさんで生じる結合。…で表す。

-O-HO-水分子どうしの引力。

-N-HN-H-核酸塩基どうしの結合

-N-HO-タンパク質の中の離れたところのアミド結合どうしの結合。

(追加)リン酸結合-O-(-HO-P=O)-O-核酸のヌクレオチドどうしの結合

核酸中の糖どうしの結合やATPの高エネルギーリン酸結合、筋肉中のクレアチンリン酸、グルコース6-リン酸など。

教科書144ページ

⑭化合物の名前によく見られる用語

アセチル〰(CH3CO-)酢酸(アセテート)の一部という意味

メチル〰(CH3-)その他にエチル〰(CH3CH2-)フェニル〰(C6H5-)

デヒドロ〰(脱水素)デ(脱)+ヒドロ(水素)

ヒドロキシ〰(水酸基-OH)ヒドロ(水素)+オキシ(酸素)

オキシ〰(酸素〰)デ(脱)+オキシ(酸素)RNAの糖のリボースの-OHOが取れたものがDNAの糖のデオキシリボース。

アミノ(〰アミン)(アミノ基-NH)

〰オール(アルコール)-OHメタノール、エタノール、グリセロール、コレステロール、エストラジオール(女性ホルモン)

〰ノーゲン(〰のもと)ペプシノーゲン(胃の消化酵素ペプシンのもと)フィブリノゲン(フィブリンに変化して血液凝固に役立つ)

〰ホスフェート(〰リン酸)=ホスホ〰(リン酸〰)クレアチンホスフェート=ホスホクレアチン(筋肉や脳内のリン酸供与体)。アデノシントリホスフェート(ATP)

〰オース(糖)

アミロース(デンプン)、スクロース(ショ糖)セルロース(食物繊維)、マルトース(麦芽糖)グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース(乳糖)、

(追加)

〰アーゼ(〰を分解する酵素)ドイツ語。アミラーゼ(アミロースを分解する酵素)リパーゼ(脂質を分解する酵素)プロテアーゼ(蛋白を分解する酵素)ヌクレアーゼ(ヌクレオチドを分解する酵素)

☆国家試験問題:脂肪分解酵素はどれか。

1,ペプシン

2,リパーゼ

3,マルターゼ

4,ラクターゼ

(正解2。脂肪はリピド。)

生化学でよく使われる単位

1,長さ、重さ、容積、情報量を表す単位

        ギリシャ語 長さ     重さ     容積     情報量

109

テラ

 

 

 

テラバイト

106

ギガ

 

トン

 

ギガバイト

103

キロ

kg

kL

キロバイト

100(=1)

 

バイト(2

10-1        デシ                   dL

10-2     センチ    cm

10-3

ミリ

mm

mg

mL

 

10-6

マイクロ

μm

μg

μL

 

10-9

ナノ

nm

ng

nL

 

10-10                   Å(オングストローム)これのみスウェーデン語

10-12

ピコ

 

pg

pL

 

10-15        フェムト                 fL

(付録)臨床検査の測定値の単位

赤血球数白血球数血小板数 個/μL、ヘモグロビンg/dL、赤血球1個の容積fL

血糖値、コレステロール値mg/dL,総蛋白g/dL

GOTGPTCPK(酵素)U/L、酵素活性はU(ユニット)という単位で表される。酵素の1Uとは1分間に1μモルの基質に作用する酵素量のことをいう。

サイロキシン、コルチゾール(ホルモン)ng/mL

遊離テストステロン、エストラジオール(ホルモン)pg/mL

2,数を表すギリシャ語

1/2へミ

1 モノ   モノレール モノマー(単量体)

2 ジ(ダイ)、ビス ジレンマ ダイマー(二量体)

3 トリ   トリオ、トライアングル トライアスロン トリオース(三炭糖)

4 テトラ  テトラポッド

5 ペンタ  ペンタゴン(5角形) ペントース(五炭糖)

6 ヘキソ  ヘキサゴン(6角形) ヘキソース(六炭糖)

7 ヘプタ  へプタスロン(陸上7種競技) 

8 オクタ  オクトパス(タコ) オクターブ(8音階)

9 ノナ   ノナン酸(炭素数9個の脂肪酸)食用油の不快な臭い成分

10デカ   デカメロン(十日物語:ペスト流行時のイタリアの小説)

12ドデカ  ドデカノール(炭素数12個のアルコール)

20エイコサ EPAエイコサペンタエン酸(炭素数20個のω3脂肪酸)

22ドコサ  DHAドコサヘキサエン酸(炭素数22個のω3脂肪酸)

魚類に含まれる体に良い油

少 オリゴ

多 ポリ   ポリマー(重合体)

単量体(モノマー)と重合体(ポリマー):単量体(モノマー)が重合してできた高分子化合物を重合体(ポリマー)という。

重合体(ポリマー)

単量体(モノマー)

デンプン、グリコーゲン

グルコース(ブドウ糖)

タンパク質

アミノ酸

核酸(DNA,RNA

ヌクレオチド

注:脂肪だけは脂肪酸とグリセロールがエステル結合したものでポリマーでない

 

3SI基本単位

長さ、重さ、時間、温度、電流、光度(光源の明るさ)

(余談)照度(光が当たっている面の明るさ)はルクス

☆国家試験問題:病室環境に適した照度はどれか。

1100200ルクス

2300400ルクス

3500600ルクス

4700800ルクス

(正解は1。深夜の病室は足元灯などによって12ルクス。日中の病室は100200ルクス。高齢者は2倍の200400ルクス。ナースステーションは300750ルクス。手術室は7501500ルクス。手術野は20000ルクス以上とJISで規定されている。)

(追加)生化学で使われるギリシャ文字

大文字 小文字

アルファ      α

ベータ       β

ガンマ       γ

デルタ   Δ   δ

シータ       θ

カッパー      κ

ラムダ       λ

ミュー       μ

オミクロン     ο

パイ        π

ロー        ρ

シグマ   Σ   σ

ファイ       φ

カイ        χ

サイ        ψ

オメガ   Ω   ω

2回 代謝総論、細胞

教科書11ページ

代謝総論

教科書12ページ

代謝とは

体の中での化学反応を(     )という。体の中での多くの化学反応を取り仕切っているのが(      )である。

生きるためにはエネルギーが必要。1829歳では基礎代謝量(じっとしていても使う最低限のエネルギー)男性1520kcal、女性1110kcal使う。そこに身体活動が加わると平均で男性3050kcal、女性2200kcalを消費する。1cal1gの水の温度を1度上昇させるのに必要なエネルギー。1kcalは1㎏の水の温度を1度上昇させるのに必要なエネルギー。

(図1-1の説明)

生体内のエネルギー代謝ではエネルギーの仲立ちをする物質としてアデノシン三リン酸(ATP)が使われる。ATPはアデニンとリボースが結合したアデノシンにリン酸が3分子結合した構造をしている。

ATPのリン酸どうしの結合にはたくさんのエネルギーが蓄えられているので高エネルギーリン酸結合という。食物の分解によって得られたエネルギーを使ってADPとリン酸を結合させてATPを合成する。逆にATPADPとリン酸に分解されると多量のエネルギーが放出され、そのエネルギーがいろいろな生命活動に利用される。

教科書13ページ

(図1-2の説明)

代謝は複雑な物質を簡単な物質に分解してエネルギーを放出する(     )と簡単な物質から複雑な物質を合成してエネルギーを吸収する(      )とに大きく分けることができる。

異化=分解の反応=エネルギーが発生する反応

(1)食物の消化

 糖質(CHO) 脂質(CHO) タンパク質(CHON)

    ↓    ↓  ↓      ↓

   単糖類 脂肪酸 グリセロール アミノ酸

    ↓    ↓  ↓      ↓

(2)(                 ):構造はアセチル基に補酵素A(CoA)が付いたもの

 アセチルコーエーと読む。アセチルコーエンザイムA、アセチル補酵素Aの略。

(3)最終的にH2OCO2NH3として排泄される。

同化=合成の反応=エネルギーを吸収、貯蔵する反応

単糖類 脂肪酸 グリセロール アミノ酸 ヌクレオチド

↓     ↓  ↓     ↓    ↓

グリコ コレステ 中性脂肪 タンパク質 核酸

ーゲン ロール       ペプチドホルモン

     ↓        カテコールアミン

    ステロイドホルモン

教科書14ページ

(図1-3の説明)

異化によりATPが生産される。逆に同化の時にATPが消費される。

第一段階は消化管で行われる。

第二段階は細胞質で行われる。アミノ酸、単糖、グリセロール、脂肪酸の炭素原子がアセチルCoAに変わる。

第三段階はミトコンドリアで行われる。アセチルCoAがクエン酸回路でCO2に酸化されて水素が分離される。電子伝達系でO2に移してH2Oになる。この過程でさらに多くのATPが生産される。

教科書15ページ

代謝とその制御

たとえはよくないが、死体は放置しておくとどんどん腐っていくが、生きている体はいつまでも新鮮である。常に分解と合成により古いものが新しいものに置き換えられているからである。これを(       )という。

(図1-41-5の説明)

運動中、絶食中はエネルギーを使うため異化(分解)亢進。

食事摂取、休息中はエネルギーをため込むため同化(合成)亢進。

NHKのチコちゃんで「生物が眠るのは餓死しないため」と言っていましたが、睡眠中と激しい活動時ではATPの消費速度は100倍も違う。

教科書16ページ

ホルモンの作用と代謝の調節

(       )は内分泌腺(ないぶんぴつせん、またはないぶんぴせん)と呼ばれる特定の器官の細胞で作られ、血液中に分泌(ぶんぴつ、またはぶんぴ)されて血液に乗って全身に運ばれ、特定の器官(標的器官)に作用する。これに対して外分泌腺とは涙やお乳のように体の外側に向けて分泌される。消化管の内側は体の外とみなされているので唾液や消化液も外分泌液である。

☆国家試験問題:内分泌器官はどれか。

1,乳腺

2,涙腺

3,甲状腺

4,唾液腺

(内分泌器官はホルモンを産生して、ホルモンは血液によって全身に運ばれて離れた場所にある標的器官に作用して効果を現す。甲状腺は細胞における代謝を亢進させる甲状腺ホルモンを血液内に分泌する。他の乳腺、涙腺、唾液腺は、導管を通ってそれぞれ母乳、涙、膵液を外に分泌する。)

標的器官には標的細胞があり、標的細胞には特定のホルモンを受け取る受容体が存在する。ホルモンは標的細胞の受容体に結合することによってその細胞に作用する。ホルモンには脂質に溶けやすい脂溶性(疎水性)ホルモンと水に溶けやすい水溶性(親水性)ホルモンがあり、作用するしくみがそれぞれ異なる。細胞膜は脂質でできているので脂溶性ホルモンは容易に細胞膜を通過して細胞内に入り細胞質や核内にある受容体に結合することによって特定の遺伝子発現を調節する。水溶性ホルモンは標的細胞に到達すると標的細胞の細胞膜に存在する受容体に結合する。細胞膜受容体がホルモンと結合すると細胞内の特定の化学反応が促進される。

教科書17ページ

(表1-1の説明)

ステロイド 脂質から合成、脂溶性→核内受容体に作用。

ペプチド  アミノ酸がつながってできる、水溶性→細胞膜受容体に作用

アミン   アミノ酸から炭酸が取れてできる、親水性=水溶性→細胞膜受容体に作用

(特)甲状腺ホルモンはアミンだがベンゼン環が含まれていて脂溶性なので核内受容体に作用する。

☆国家試験問題:標的細胞の細胞膜に受容体があるのはどれか。

1,男性ホルモン

2,甲状腺ホルモン

3,糖質コルチコイド

4,甲状腺刺激ホルモン

123は脂溶性→核内受容体。4はペプチドホルモンなので水溶性→細胞膜受容体。それを知らなくても他が間違いと分かれば消去法で解ける。)

教科書20ページ

細胞(機能ごとに理解すれば覚えやすい)

(図2-1の説明)

    自分自身と同じ機能をもつ個体を作り出すこと

細胞分裂ではまず核が2つに分裂し、続いて細胞質が分裂して、さらに外側から細胞膜がくびれて2つの細胞になる。 

    エネルギーを取り出して(異化)自分自身を維持すること

異化は細胞質とミトコンドリアで行われる。

(       ):細胞の中で核以外の部分をいう。細胞の形や運動を保つ細線維(フィラメント)や微小管がある。

食物の消化後に細胞内に取り込まれたブドウ糖は細胞質で解糖によりピルビン酸まで分解される。脂肪酸合成も細胞質で行われる。

(              ):約0.5×1.0μmのソラマメ形で細菌と同じくらいの大きさである。肝細胞では1個の細胞に約2000個あり細胞体積の約5分の1を占める。二重膜(外膜と内膜)に囲まれ、外膜は滑らかだが内膜はところどころくびれこんで櫛の歯のような構造をつくっている。このようなくびれこんだ内膜の構造をクリステという。また、内膜のさらに内側の隙間の部分をマトリックスという。マトリックスで脂肪酸の分解、クエン酸回路が行われ、内膜に電子伝達系が存在してATPがつくられる。心筋細胞などATPが大量に必要な細胞のミトコンドリアのクリステは多い。

(余談1)ミトコンドリアの共生説:ミトコンドリアは原始的な好気性細菌が真核生物の祖先の細胞に入り込み共生するようになったという説。その根拠は①ミトコンドリアが細胞膜と同じ脂質二重層(外膜と内膜)で覆われている。②核のDNAとは異なる自分自身のDNAを持って独自に分裂・増殖できる。③独自のリボソームを持ち、それが細菌のものに近い。

(余談2)ミトコンドリアは母親由来:精子のミトコンドリアのDNAは受精して卵細胞に入った後に分解されてしまうので、子供の持つミトコンドリアのDNAはすべて卵細胞由来、すなわち母親由来ということになる。

☆国家試験問題:細胞内におけるエネルギー産生や呼吸に関与する細胞内小器官はどれか。

1,ミトコンドリア

2,リボソーム

3,ゴルジ体

4,小胞体

5,核

(正解1。)

☆歯科医師国家試験問題:DNAをもつのはどれか。2つ選べ。

1,核

2,中心小体

3,ゴルジ装置

4、リソソーム

5、ミトコンドリア

(答え15。)

    外側と自己を区別する仕切りをもつこと

(       )(図2-2)は脂質二重層:リン脂質(第四回講義)が親水基を外に向け疎水基を内側に向けて二重に並び、その中をタンパク質が流動している。リン脂質分子の隙間をコレステロールが埋める。コレステロールが多くなると膜が固くなる。細胞膜そのものは脂質に富むので脂溶性の物質は膜を通過しやすいが水溶性の物質は通過しにくい。

☆歯科医師国家試験問題:細胞質膜の基本構造はどれか。

1、多糖体

2、ポリリン酸

3、ポリペプチド

4、リン脂質二重層

5,ペプチドグリカン

(答え4。)

    必要な物質を自分の中に取り込み、不要な物質を放出すること

物質の輸送には2種類あり

(        )(拡散):細胞の内外の濃度勾配に従って濃度の高い方から低い方へ移動する。

(        ):細胞内外の濃度勾配に逆らって濃度の低い方から高い方へ物質を移動させる。濃度勾配に逆らうのでATPのエネルギーが必要である。ナトリウムポンプは細胞内へK+を細胞外へNa+を運ぶ。この時ATPのエネルギーが使われている。

必要な物質を自分の中に取り込み(                  )

不要な物質を放出すること(                  )

    タンパク合成

(  )DNAの情報がRNAに転写されて

 ↓

核膜孔から(      )に出て(          )の中で翻訳されてアミノ酸がつながって蛋白が合成される。

小胞体はリボソームで合成されたタンパク質などの輸送路。1枚の膜から成る扁平な袋状の構造が網目状に広がった構造をしている。表面にリボソームが付着した粗面小胞体とリボソームが付着していない滑面小胞体がある。滑面小胞体は解毒作用に働いたり(肝臓細胞)、Ca2+を貯蔵して細胞質中のCa2+濃度を調節したり(筋肉細胞)する。

リボソームで合成されたタンパク質はそのまま小胞体を運ばれて(           )に移動する。湾曲した扁平な袋が重なった構造である。小胞体から送られたタンパク質に糖を付け加えたり濃縮して貯蔵したりする働きがある。ゴルジ装置で小胞が形成される。

 ↓

小胞は細胞質内に出る。この小胞内に細胞外に分泌する物質(たとえばホルモン)が含まれている場合は分泌顆粒、脂肪が含まれている場合は脂肪摘、グリコーゲンの場合はグリコーゲン顆粒、細胞内で働く加水分解酵素が含まれている場合は(4)(          )という。

☆国家試験問題:タンパク合成が行われる細胞内小器官はどれか。

1,核

2,リボソーム

3,リソソーム

4,ミトコンドリア

5,ゴルジ装置

(正解2。)

☆歯科医師国家試験問題:タンパク質に糖鎖を付加する細胞内小器官はどれか。

1,小胞体

2,ゴルジ体

3,リボソーム

4,リソソーム

5, ミトコンドリア

(答え2。)

核は通常は1つの細胞に1つある。骨格筋細胞では1個の細胞に多数の核をもつ。赤血球のように核がない細胞もある。赤血球は骨髄の中で作られた後に血中に出る時に核もミトコンドリアも捨てて酸素運搬に特化した形になる。

☆国家試験問題:健常な成人の血液中にみられる細胞のうち核がないのはどれか。

1,単球

2,好中球

3,赤血球

4,リンパ球

(正解3。)

 

3回 糖類=炭水化物

教科書23ページ

毎年冬になって

水ようかんを食べるときに添付された木べらをうまく使えないと手についてしまってにちゃにちゃすることを経験しているでしょう。でもそのにちゃにちゃは水洗いすれば簡単に洗い流せます。それは糖が-OHがたくさん付いた親水性の物質だからです。

化学的には

(1)カルボニル基(アルデヒド基-(C=O)-Hやケトン基-(C=O)-を持つ・・・アルデヒド基を有する糖をアルドース、ケトン基を有する糖をケトースという。(〰オースは糖を表す物質名。)

(2)多価(-OHがたくさん付いた)アルコール・・・-OHがたくさんあることがにちゃにちゃ感の原因。

と定義される。たとえばグルコースは1個の-CHOと5個の-OHを持つ。

(図2-3の説明)

三価アルコールのグリセロールC3H5(OH)3の末端の炭素(C1またはC3)が酸化されてアルデヒド基になるとグリセルアルデヒド。真ん中(C2)が酸化されてケトン基になるとジヒドロキシアセトン。

教科書24ページ

(図2-4の説明)

ヘキソース(炭素が6個の糖)のグルコースは直鎖状態が書き表しやすい。アルデヒド基の炭素を1番として順に6番まで番号を付ける。水溶液中ではC1のアルデヒド基(-CHO)とC5のヒドロキシ基(-OH)が反応して環状構造になってO原子を含んだ六角形(ピラノース)を作る。同時にC6の部分は環外に押し出される。

環状構造を形成する時にC1-OHが糖構造の下方向にくるものをα、糖構造の上方向に向いている状態のことをβという。αグルコースはC1C2C3C4OHの位置が下下上下、βグルコースは上下上下。グルコースの3つの状態の構造式は書けるようにしておく。

(図2-5の説明)

炭素原子の4本の手につながっている原子団が全部異なっているとき立体異性体ができるので中心の炭素を不斉炭素という。グリセルアルデヒドには二つの立体異性体D-グリセルアルデヒドとL-グリセルアルデヒドができる。アルデヒド基を上に置いた時- OHC5の右に位置するものをD型(ギリシャ語のDextro右巻き)、左に位置するものをL型(ギリシャ語のLevo左巻き)という。グルコースは自然界では大部分D-グルコース。

教科書25ページ

(      )

(図2-6の説明)

五単糖(ペントース)C5H10O5リボースRNAの糖)とデオキシリボースDNAの糖)は核酸(第6回講義)のところで出てきます。

六単糖(ヘキソース)C6H12O64種類。

グルコースは干しぶどうから初めて単離されたためブドウ糖と呼ばれる。生物のエネルギー源として最も基本的なもの。

フルクトースは果物に多いので果糖と呼ばれる。五角形(フランに似ているのでフラノース)の状態になっていることが多い。グルコースとフルクトースは官能基の種類が違う(アルデヒド基とケトン基)ので構造異性体(イソマー)であるという。

マンノースはこんにゃくに含まれる。グルコースとはC2に結合する-H-OHの立体配置が逆。これを立体異性体(エピマー)という。C1C2C3C4OHの位置が下上上下。

ガラクトースは乳糖に含まれる。グルコースとはC4に結合する-H-OHの立体配置が逆。これも立体異性体(エピマー)。C1C2C3C4OHの位置が下下上上。

 

教科書26ページ

オリゴ糖類

 単糖類が210個グリコシド結合(-O-)したもの。オリゴは少ないという意味。

 特に2個つながったものを二糖類という。

C6H12O6+ C6H12O6C6H11O5-O- C6H11O5+H2O

(図2-7の説明)

スクロース(ショ糖、蔗糖)=グルコース+(       )

マルトース(麦芽糖)=グルコース+(       )がα14結合(消化できる)

ラクトース(乳糖)=(       )+グルコース

セロビオース=(       )+グルコースがβ14結合(人体中では消化できない)

教科書27ページ

(      )

(1)ホモ多糖:同じ単糖から成る。

(        )(植物が糖を貯蔵するかたち):アミロース(グルコース直鎖:α14結合)とアミロペクチン(グルコース直鎖と枝分かれ:α16結合)

(            )(動物が糖を貯蔵するかたち、図2-8):グルコース直鎖:α14結合でつながって8分子ごとに分枝:α16結合。

(          ):植物の細胞壁を構成する。グルコースがβ14結合した多糖類。人では消化できない。(人が消化できてエネルギー源になるものを糖というが、セルロースのように消化できないものカロリーにならないので食物繊維と呼ばれる。)(余談)しろやぎさんがくろやぎさんから来た手紙を読まずに食べたというようにやぎは紙を食べることができる(消化できる)。ヤギなどの草食動物では腸内細菌がセルラーゼを産生するので消化してエネルギー源にできる。人はセルロースを消化できないが、食べると消化吸収できないが腸管の運動を刺激して便通を促進する。このように消化できない糖はカロリーにならないので食物繊維と呼ばれる。(余談:ペットボトルのPETはポリエチレンテレフタラートの略称で、もちろん人はPETを分解できないし、自然界に放置しておいても分解されないので環境問題になっている。小田耕平先生が堺市のごみ集積場でPETを分解する酵素を持つ細菌を見つけ、イデオネラ・サカイエンシスと名付けた。プラごみの問題を解決する新技術につながる可能性がある。)

マンナン:マンノースの直鎖。こんにゃくの成分

(2)ヘテロ多糖:グルコースの誘導体がつながってできる

 グルコースのC6-COOHになるとグルクロン酸

 グルコースのC2にアミノ基- NH2が付くと(グルコースアミン→)グルコサミン

 グルコサミンの- NH2にアセチル基CH3CO-が付くとN-アセチルグルコサミン

グルクロン酸 グルコサミン N-アセチルグルコサミン

CHO         CHO              CHO

H-C- OH        H-C- NH2         H-C-NH-CO-CH3

HO-C-H       HO-C-H          HO-C-H

H-C-OH       H-C-OH          H-C-OH

H-C-OH       H-C-OH          H-C-OH

COOH        CH2OH          CH2OH

ヒアルロン酸:グルクロン酸+N-アセチルグルコサミンの繰り返し。皮膚、関節液に多く存在し、皮膚のみずみずしさの程度に関係。

ヘパリン:グルコサミン、グルクロン酸を含む。抗血液凝固剤として血液透析で回路内で血液が固まらないようにする。

キチン:カニやエビの殻。N-アセチルグルコサミンを多く含む。

グルコマンナン:こんにゃくの成分。マンノース、グルコースを含む。人間の消化液にはマンナンを分解する酵素がなく、消化されない。

(余談)血液型は赤血球膜の糖鎖の一番外側の違い

A型:N-アセチルガラクトサミン(ガラクトースのC2にアミノ基-NH2とアセチル基CH3COが付いたもの)

B型:ガラクトース         

AB型:N-アセチルガラクトサミンとガラクトース両方

O型:上記のどちらもなし

ここで教科書は62ページに飛びます。

糖質代謝(糖質の分解と合成)

教科書63ページ

糖質代謝の概要

地球上のエネルギーは元はすべて太陽エネルギーに由来。植物が太陽光を浴びて光合成により二酸化炭素と水から糖質と酸素を合成する。

CO2+ H2O(CH2O)+ O2

米、小麦などとして主食となる。動物が糖質を摂取して消化吸収して生命活動に必要なATPが作り出すことを(          )という。

糖質の消化、吸収

(図4,1-1の説明)

食物中の糖質は大部分が多糖類の(          )(米、小麦)。他に二糖類のスクロース(砂糖)、マルトース(水あめ)、ラクトース(牛乳や母乳)、さらに単糖類のグルコース、ガラクトース、フルクトースがある。

デンプンは口中で唾液中の(            )(α1→4結合を分解する)により二糖類の(           )(麦芽糖)と限界デキストリン(枝分かれ部分のα1→6結合が残っている)となる。あまりかまずに飲み込んでも十二指腸で再び膵液のアミラーゼならびに限界デキストリナーゼ(α1→6結合を分解する)によりマルトースまで消化される。(余談)アミラーゼは商品名タカジアスターゼ(富山県出身の高峰譲吉が抽出した)で市販されている。

最終的に小腸の粘膜上皮内にあるマルターゼにより(           )に分解されて糖質消化の過程を終了する。他の二糖類のスクロースはスクラーゼによりグルコース+フルクトースに、ラクトースはラクターゼによりグルコース+ガラクトースに分解される。(大人で牛乳苦手=ラクターゼが欠乏している人には腸内に未消化の乳糖が吸収されないまま存在するので牛乳を飲むと浸透性の下痢が起こる。)

こうして単糖類のグルコース(フルクトース、ガラクトース)は小腸粘膜上皮細胞から能動輸送で吸収されて毛細血管から門脈に入り肝臓に向かう。

☆国家試験問題:小腸からそのまま吸収されるのはどれか。2つ選べ。

1,グルコース

2,スクロース

3,マルトース

4,ラクトース

5,フルクトース

(単糖類の15を選ぶ。234は二糖類)

☆国家試験問題:( )の組織を還流した血液は心臓に戻る前に肝臓を通過する。( )に入るのはどれか。

1

2食道

3小腸

4腎臓

5,下肢

(正解3。小腸の血管は門脈に注ぐ。他は大静脈に注ぐ。)

☆国家試験問題:大腸で吸収されるのはどれか。

1、脂質

2、水分

3、糖質

4、蛋白

2〇。1,3,4は小腸で消化吸収される。)

教科書64ページ

(図4,1-2の説明)

(1)グルコースの消化吸収後小腸から全身へ。

(2)全細胞でグルコースが細胞に到達すると細胞質に取り込まれてピルビン酸に変えられて、ミトコンドリア内のクエン酸回路でATPに変換される。好気的解糖という。

(3)赤血球にはミトコンドリアがないので細胞質での嫌気的解糖のみで乳酸まで反応が進む(嫌気的解糖)。このことは赤血球自身が酸素を消費せず組織に酸素を運ぶという本来の目的にかなったものである。また、激しい運動時の骨格筋では酸素欠乏のために嫌気的解糖が行われて乳酸がたまる。

(4)空腹に備えて肝臓や筋肉でグルコース→グリコーゲン(多糖類)合成。糖質が不足した場合血糖値を保つため再びグルコースに変えられる。

(5)脂質合成のための補酵素(          )や、核酸の原料の(        )を作り出す(ペントースリン酸回路という)。

(6)グルコースを新しく作り出す糖新生。

(7)ホルモン(主にインスリンとグルカゴン、アドレナリン、糖質コルチコイド)による血糖調節。

糖質代謝の流れ

教科書65ページ

細胞に入ったグルコースは3つの方向に分かれる。

(1) ATPを供給するため解糖系で分解される。

(2) 貯蔵グリコーゲンに使われる。

(3)ペントースリン酸回路でリボースと脂質代謝の補酵素NADPHを産生。(30%)

教科書66ページ

解糖のしくみ

(図4,1-3の説明)

次の3つの順番で進む。

(1)消化管でグルコースに消化吸収されて門脈を通って肝臓に入る。

(2)細胞に取り込まれて細胞質で(       )(図の四角で囲まれた部分)に入る。グルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解され、ATPを生じる。

ミトコンドリアがあって好気的条件(酸素がある時)では次に進む。

(3) ピルビン酸がミトコンドリアのマトリックスに入ってアセチルCoAに変化して(           )に入って二酸化炭素CO2と水素原子Hが産生される。HNADH,HFADH2となる。(NADFADはビタミンから合成される補酵素で水素の運び屋である。)

 2C3H4O3+6H2O6CO2+20H +2ATP

(4) 水素原子がNADHFAD H2の形でミトコンドリアのクリステ(内膜)の(          )に運ばれて最終的に酸素と結合して水になる。その間に徐々にエネルギーが解放され、多くのATPが生成する。

 24H+6O212H2O+34ATP

かくして解糖全体の反応式は

 C6H12O6+6O26CO2+6H2O+38ATP

となり、形としてはグルコースが燃焼して二酸化炭素と水とエネルギーが産生される化学反応式となる。この反応が一発で起こるとエネルギーの大部分が熱として逃げてしまう。そうする代わりに、何段階にも分けて行うことでエネルギーが無駄なく蓄えられる。

糖の消化についてはここまで知っていれば十分。

以下は知っていたら偉いという程度で気軽に学んでください。

嫌気的解糖

教科書67ページ

(図4,1-4の説明)

(1) 解糖の第1反応は酵素のヘキソキナーゼ(肝臓ではグルコキナーゼ)によるATPから(          )へのリン酸転移で(          )ができる。

(余談)ATPとほかの分子の間でリン酸転移を行う酵素をキナーゼという。リン酸をもらう方の物質名をその前に付ける。ヘキソキナーゼは体内に広く分布してグルコース、マンノース、フルクトースなど六単糖(ヘキソース)のリン酸化を触媒する。肝臓のグルコキナーゼも同じ反応を触媒するが血中のグルコースレベルを保つのが主な役割なのでこの名前が付いている。

(2)解糖の第2反応はグルコース-6-リン酸イソメラーゼによる(          )の(          )への変換、すなわちアルドースからケトースへの異性化反応である。

(3) 解糖の第3反応ではホスホフルクトキナーゼの触媒でATPを使って(          )をリン酸化して(          )を生じる。

(余談1)二つのリン酸は別々の場所に付くので二リン酸ではなくビスリン酸という。

(余談2)ここの反応は解糖の不可逆反応(一方向にしか進まない反応)の一つで、解糖の調節に中心的役割を果たす。

(4) 解糖の第4反応ではアルドラーゼによりフルクトース1,6-ビスリン酸が半分に切断されて2分子のトリオース(炭素3個の糖)、すなわち(          )と(          )を生じる。

(5) グリセルアルデヒド3-リン酸だけが解糖系を先に進むが、解糖の第5反応としてジヒドロキシアセトンリン酸がトリオースリン酸イソメラーゼによりグリセルアルデヒド3-リン酸とに変換される。

(6)解糖の第6反応はグルセルアルデヒド3-リン酸をNADによる酸化とリン酸によるリン酸化の反応でグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼが触媒して(          )の合成を推進する。この時NAD2Hが渡されてNADH,Hになる。NADとはビタミンB群のナイアシンを成分としている補酵素で水素原子を運搬する役目をもつ。

(7)解糖の第7反応はホスホグリセリン酸キナーゼによる(          )とATPの生成である。

(8)解糖の第8反応で、(          )はホスホグリセリン酸ムターゼにより(          )に変わる。ムターゼとは同じ分子内で官能基を別の位置に移す酵素をいう。

(9)解糖の第9反応はエノラーゼが触媒する反応で、(          )が脱水されて(          )になる。

(10) 解糖の第10反応はピルビン酸キナーゼによる反応(          )が切れる時のエネルギーで、ATPを生成し、(          )を生じる。

(11)酸素が足りない時の骨格筋やミトコンドリアが無い赤血球では解糖系を続けるためにピルビン酸は乳酸脱水素酵素(LDH)により乳酸C3H6O3になる。この時NADHからHが取れてNADを再生する。この反応を解糖の第11反応ということもある。乳酸は血液中に出て肝臓に運ばれてピルビン酸に戻される。その1/5は好気呼吸に進み、4/5は糖新生によりグルコースに再合成されて全身に供給される。

☆国家試験問題:全血の検体を25℃の室内に放置すると低下するのはどれか。

1,ブドウ糖

2,乳酸

3,遊離脂肪酸

4,アンモニア

(全血ということは赤血球があるということなので正解は1の血糖。赤血球の解糖系でグルコースが分解されて乳酸になるので2の乳酸は上昇する。赤血球ではミトコンドリアがないので3の脂肪酸は代謝されない。アンモニアができる反応は肝臓のみ。)

(余談)血糖値の採血管にはNaF(フッ化ナトリウム)という解糖系の酵素を阻害する物質が入っている。

(余談)酵母(イースト)はピルビン酸をエタノールとCO2に分解する。エタノールはワインや蒸留酒の成分、CO2はパン焼きに利用される。

(余談)解糖系の反応では一方向のみ(→)が3か所(1)(3)(10)ある。これらの部分で解糖系の流量調節をしている。このことは解糖と反対の反応である糖新生の時に重要になってくる。

(余談)フルクトース、ガラクトース、マンノースはどこに入るか?

フルクトースは肝ではグリセルアルデヒド3-リン酸に筋肉ではフルクトース-6-リン酸になって解糖系に入る。

ガラクトースはガラクトキナーゼによりガラクトース1リン酸、次にガラクトース1リン酸ウリジル転移酵素によりUDPグルコースと反応してUDPガラクトース、次にエピメラーゼによりUDPグルコースになってグルコース6-リン酸になる。このうちのいずれの酵素の欠損によっても先天性代謝異常のガラクトース血症になる(133ページの表)。ガラクトースの利用ができないと血中ガラクトースが上昇して蓄積したガラクトースにより白内障や精神遅滞を起こす。唯一の治療法は小児期にガラクトースやラクトースを含まない人工乳で育てること。

マンノースはフルクトース-6-リン酸になって解糖系に入る。

(余談)ヒ素中毒の仕組み:ヒ酸は構造上リン酸の類似体でATP(エネルギー)が得られなくなるので毒となる。

教科書68ページ

好気的解糖(クエン酸回路+電子伝達系)

教科書69ページ

(図4,1-5の説明)

クエン酸回路はエネルギーを得るだけでなく。途中の物質が脂質やアミノ酸の原料にもなる。

解糖系で生じたピルビン酸は細胞質基質からミトコンドリアのマトリックスに取り込まれる。ピルビン酸脱水素酵素により補酵素Aと結合して(              )となりクエン酸回路に入る。

ピルビン酸+CoA+TPP +NAD→アセチルCoA+CO2+TPP+NADH,H

COOH           S-CoA

C=O            C=O

CH3            CH3

CoA(補酵素A)は水溶性ビタミンのパントテン酸とADP誘導体から成る複雑な分子で補酵素という名前はついているが酵素反応を補助するというよりもアセチル基の運搬体として活躍している。TPPはビタミンB1のチアミンを成分としておりCO2を抜き取る働きがある。

ピルビン酸にアミノ基が付くとアミノ酸のアラニンになる。アセチルCoAは脂肪酸合成の原料にもなる。(後述)

☆国家試験問題:ビタミンの欠乏とその病態との組合せで正しいのはどれか。(p476967参照)

1,ビタミンA―――――壊血病、

2,ビタミンB1―――――代謝性アシドーシス

3,ビタミンC―――――脚気、

4,ビタミンD―――――悪性貧血

5,ビタミンE―――――出血傾向

(ビタミンB1はピルビン酸脱水素→アセチルCoAを触媒するピルビン酸脱水素酵素の補酵素になるのでこれが欠乏するとピルビン酸→乳酸が進んで血液が酸性に傾くので2。他のビタミンについては後程。)

クエン酸回路

(1)クエン酸合成酵素により

アセチルCoA+(            )→(        )+CoASH

(2)アコニターゼにより酸化されて

クエン酸⇔(            )

(3)イソクエン酸脱水素酵素により水素とCO2が取り除かれて

イソクエン酸+NAD⇔(                  )+NADH,H+CO2

(4)2-オキソグルタル酸脱水素酵素により水素が取れて、再びCoAが付いて

2-オキソグルタル酸+CoA+NAD→(              )+NADH

2-オキソグルタル酸にアミノ基が付くとアミノ酸のグルタミン酸になる)

(5)スクシニルCoA合成酵素によりCoAが取れてそのエネルギーでGTPができる。

スクシニルCoA+GDP⇔(        )+CoA+GTP

スクシニルCoAはアミノ酸のイソロイシンやバリン、メチオニンからもできる。またポルフィリンの原料にもなる(後述)。

(6)コハク酸脱水素酵素により水素が取れて

コハク酸+FAD⇔(        )+FADH2

 FADはビタミンB2を成分にした補酵素で水素の運搬体。他の酵素はミトコンドリアマトリックスにあるが、コハク酸脱水素酵素だけはミトコンドリア内膜に結合している。

(7)フマラーゼにより

フマル酸+H2O⇔(        )

(8)リンゴ酸脱水素酵素

リンゴ酸+NAD⇔(            )+NADH,H

(オキサロ酢酸にアミノ基が付くとアミノ酸のアスパラギン酸になる。)

以上をまとめると

2ピルビン酸+6H2O6CO2+20H(8 NADH,H+ 2FADH2) +2ATP(GTP)

☆臨床検査技師国家試験問題:TCAサイクルで生成されないのはどれか。

1,乳酸

2,コハク酸

3,リンゴ酸

4,オキサロ酢酸

52-オキソグルタル酸

(正解1。)

(          )

解糖系とクエン酸回路で取り出された水素原子は補酵素NADFADに受け取られて(        )や(        )の形でミトコンドリアの内膜にある電子伝達系に運ばれる。H+と電子に分かれる。電子がミトコンドリアの内膜に並んだシトクロムなどのタンパク質の間を受け渡しされる過程で多くのATPが生成する。最後に電子は酸素とH+と結びついて水が生成する。

10 NADH,H+2 FADH2+6O210 NAD+2 FAD+12 H2 O+34 ATP

NADH,Hから酸素まで電子が伝達される過程で3モルのATPができる。FADH2からは2モルのATPができる。10 NADH,H2FADH2からは10×32×234モルのATPが生じることになる。解糖系でできる2ATPとクエン酸回路でできる2ATPを合わせると合計38モルATPとなる。

電子伝達系は酸素がないと反応停止する。酸素がないと4分で脳死の状態になってしまう。4分が蘇生のタイムリミットである。

猛毒の青酸カリ(シアン化カリウムKCN)中毒では生じたシアン化水素がシトクロムを阻害して電子伝達系を停止させてしまう。

(余談)無酸素運動が主の白筋はミトコンドリアがほとんどない。ニワトリや七面鳥のように急に逃げるようなときだけ短時間飛ぶ鳥、ヒラメのような普段海底でじっとしていて餌が近づくと瞬間的に動いて捕食する魚類では速筋が主となり筋肉が白い。短距離選手の速筋。

有酸素運動が主の赤筋はミトコンドリアが多いのでそれに含まれるシトクロムで赤くなる。鴨や雁のような渡り鳥、マグロのような回遊魚の筋肉はエネルギーを連続供給しなければならないので遅筋が多く筋肉の色が赤い。電子伝達系に入る。長距離選手の遅筋。

教科書70ページ

グリコーゲンの合成と分解

グリコーゲン(動物)とデンプン(植物)は備蓄グルコースである。グリコーゲンはグルコースがつながったポリマーで直径100400Åの細胞内顆粒として存在する球形分子で、各分子は最大120000個のグルコース単位を含む。グリコーゲン顆粒はグリコーゲンを多く利用する細胞に特に多い。肝細胞には最大10%まで、筋肉には12%まで含まれる。(マラソン大会が行われていた。数日前から炭水化物多めの食事をしておくグリコーゲンローディング)

(図4,1-6の説明)

グリコーゲン合成はほとんどの細胞で行われるが、主として肝臓がグリコーゲンからグルコースを動員してあらゆる組織に絶えず供給する。筋肉は自分自身が使うためにグリコーゲンを合成する。

☆臨床検査技師国家試験問題:健常成人でグリコーゲンの総量が最も多い臓器はどれか。

1,脳

2,肝臓

3,膵臓

4,腎臓

5,脾臓

(正解2。)

(1)グリコーゲンの合成

グルコース→グルコース6-リン酸 ⇔グルコース1-リン酸→UDP-グルコース。

CHO         CHO                CHO PO32-         CHO-UDP

H-C-OH       H-C-OH             H-C-OH           H-C-OH

HO-C-H      HO-C-H             HO-C-H            HO-C-H

H-C-OH      H-C-OH             H-C-OH           H-C-OH

H-C-OH      H-C-OH             H-C-OH           H-C-OH

CH2OH      CH2OPO32-           CH2OH            CH2OH

UDP(ウリジン二リン酸)はATPCoAのような高エネルギー化合物でUDP -グルコースは活性化された(反応しやすい)グルコース分子である。UDP -グルコースからグリコーゲン合成酵素により既存のn個のグルコースから成るグリコーゲン(n)に渡されてグルコースの数が一つ多いグリコーゲン(n+1)となる。

(2)グリコーゲンの分解

血液中のグルコースが低下した時にグルカゴンの働きでグリコーゲンが分解されるときはグリコーゲンホスホリラーゼ(ビタミンB6由来のピリドキサールリン酸が補酵素)によりグルコース1-リン酸に戻り、さらにホスホグルコムターゼによりグルコース6-リン酸に戻る。肝臓ではグルコース6-ホスファターゼによりグルコース6-リン酸がグルコースになって血中に出て脳や赤血球に供給される。このグルコース6-ホスファターゼは肝臓にしかない。

筋肉ではグルコース6-ホスファターゼがないのでそのまま筋肉細胞内の解糖系に入って筋肉自身のエネルギー産生に使われる。筋肉から血液中にグルコースを放出することはない。

☆国家試験問題:健常な成人において、血液中のグルコース濃度が低下した時に、グルカゴンの働きでグリコゲンを分解してグルコースを生成し、血液中に放出するのはどれか。

1,肝臓

2、骨格筋

3,脂肪組織

4,心臓

5、膵臓

1〇。グルコースに戻すグルコース6ホスファターゼは肝臓にしかない。)

(余談)マラソン大会の数日前から炭水化物の摂取を多めにしてグリコーゲン貯蔵量を増やしておくことをグリコーゲンローディングという。

糖原(グリコーゲンの日本語)

糖原病はグリコーゲン代謝の遺伝的疾患でグリコーゲンをグルコースに分解できない。グリコーゲンがたまって肝が腫大したり筋肉では筋力低下などが起こる。

糖原病133ページの表)はグルコース6-ホスファターゼの欠損で肝臓にグリコーゲンがたまって腫大する。空腹時にグリコーゲンを使用できないので治療は低血糖にならないように少量ずつ頻回に食事摂取、夜間は糖分持続注入しないと低血糖になってしまう。

そのほかに

糖原病(マッカ―ドル病)は筋肉のグリコーゲンホスホリラーゼの欠損。筋肉にグリコーゲンがたまる。グルコースが不足するので運動すると筋肉に痛みを伴うけいれんを起こす。

糖原病は肝臓のグリコーゲンホスホリラーゼの欠損。肝臓にグリコーゲンがたまる。

ペントースリン酸回路

解糖系に入ったグルコースの30%が(                    )に入る。

教科書71ページ

(図4.1-7の説明)

グルコース6-リン酸が脱炭酸されNADPHCO2リブロース5-リン酸を生じる。NADPHは脂肪酸合成やコレステロール合成のときの補酵素として利用される。脂質合成をよく行う肝臓、乳腺、脂肪組織、副腎皮質に多い。細胞が核酸を合成するときはリブロース5-リン酸はリボース5-リン酸に変化する。(その後リボースはさらにデオキシリボースになりDNAの成分として利用される。)

残りのリブロース5-リン酸は再び解糖系に戻るのでペントースリン酸「回路」という。

 グルコース6-リン酸       リブロース5-リン酸    リボース5-リン酸

      CHO                          

   H-C-OH                         CH2OH           CHO

HO-C-H                           C=O           HO-C-H

  H-C-OH                        H-C-OH           H-C-OH

  H-C-OH                        H-C-OH           H-C-OH

CH2OPO32-                      CH2OPO32                    CH2OPO32

糖新生

食事でグルコースが摂取できず、肝臓の貯蔵グリコーゲンを使い果たした場合は、体内でまったく新しくグルコースをつくる。これを(      )という。たとえばライオンなどの肉食動物はタンパク質しか摂取しないがアミノ酸から糖を作ってエネルギーにしている。糖新生の原料となるアミノ酸を(              )という。

教科書72ページ

(図4,1-8の説明)

(1)嫌気性呼吸で筋肉内で作られた乳酸⇔ピルビン酸

まずピルビン酸からホスホエノールピルビン酸へは逆に進めないため回り道をする。

ミトコンドリアに入ったピルビン酸がピルビン酸カルボキシラーゼ(ビオチンが補酵素)によりピルビン酸→オキサロ酢酸

オキサロ酢酸が細胞質に出てホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼによりオキサロ酢酸⇔ホスホエノールピルビン酸

 ピルビン酸→オキサロ酢酸⇔ホスホエノールピルビン酸⇔ジヒドロキシアセトンリン酸⇔グルコース6-リン酸

COOH      COOH     COOH

C=O         C=O      C-OPO32-

CH3             CH             CH3

COOH

最後に肝臓のみにあるグルコース6-ホスファターゼによりグルコース6-リン酸→グルコースとなって全身に送り出される。

(2)グリセロール→ジヒドロキシアセトンリン酸

CH2OH         CH2OPO32-

CHOH          C=O

CH2OH         CH2OH

(3)糖原性アミノ酸(第五回の講義で)

 アラニンなど→ピルビン酸

アスパラギン酸など→オキサロ酢酸

(図4,1-9の説明)

空腹でグルコースが足りなくなった時の状態を表している。体育の時間に全速で100m走った後に先生から、「走ってすぐに止まると筋肉に乳酸がたまるからそのままゆっくり歩け。」と言われたことがあると思います。ゆっくり歩くことによって血行を保てば乳酸やアラニンが筋肉から肝臓に運ばれて糖新生がうまく進むからです。筋肉タンパク質が分解してアミノ酸からもグルコースが作られる。赤血球はミトコンドリアがないので嫌気的解糖でATPを得る。

アラニン  →ピルビン酸←  乳酸

   COOH   COOH     COOH

H-C-NH2    C=O     H-C-OH

     CH3          CH3          CH3

ピルビン酸からの糖新生は肝臓だけで行われる。糖新生によりできたグルコースは肝臓から赤血球や筋肉に供給される。

教科書73ページ

血糖の調節とホルモンの作用

(図4,1-10の説明)

血糖の正常値=100mg/dL=100mg/100mL=0.1g/100g=0.1%

①血糖値を低下させるホルモン

膵臓ランゲルハウス島B(β)細胞から分泌される(          )

教科書74ページ

②血糖値を上昇させるホルモンは3つある。

膵臓ランゲルハンス島A(α)細胞から分泌される(          )

副腎髄質から分泌される(          )

副腎皮質から分泌される(          )

教科書105ページ

エネルギー代謝の統合と制御

教科書106ページ

肝臓、筋肉、脂肪組織が代謝の中心。(       )=満腹時と(       )=空腹時で変わる。これらを調節するのがホルモン。

摂食時

ホルモンとしては(          )が活躍する。エネルギーを貯蔵する方向。

(図5-1の説明)

肝臓:グルコースがATP産生に利用されるとともにグリコーゲンとして貯蔵される。アミノ酸合成にも使われる。余分のグルコースは脂肪酸に変換されてトリアシルグリセロールに合成され、リポタンパク質として肝臓から血液中に放出される。

筋肉:グルコースがATP産生に利用されるとともにグリコーゲンとして貯蔵される。このグリコーゲンは筋肉の収縮時に再びグルコースに分解されて使われる。マラソン選手は競技数日前より高炭水化物食によりグリコーゲンローディングを行う。

脂肪組織:グルコースからアセチルCoAを経て脂肪酸が合成されて中性脂肪として蓄えられる。

だけは常にグルコースを消費し続ける。貯蔵はできない。(だから低血糖時はぼんやりする。)

教科書107ページ

絶食時

ホルモンとしては(          )や(                )や(            )が活躍する。貯蔵していたグリコーゲン、中性脂肪、タンパク質を分解してエネルギーを得る方向。

教科書108ページ

(図5-2の説明)

肝臓:グリコーゲン分解とアミノ酸からの糖新生によりグルコースをつくって血中に放出する。脂肪酸からアセチルCoAができる。絶食時は肝臓内の糖が足りないのでクエン酸回路の回転が不足しておりアセチルCoAはクエン酸回路で消費されず運搬体のケトン体に変化して血液中に出る。

筋肉:筋蛋白を分解してアミノ酸にして血中に放出する。脂肪組織からの脂肪酸や肝臓からのケトン体をアセチルCoAにもどしてエネルギー産生に利用する。(マラソン選手はこのケトン体利用能力に優れている。)

脂肪組織:中性脂肪が分解されて脂肪酸を血中に放出する。

だけは常にグルコースを消費し続ける。長期の絶食の時はケトン体を利用する。

☆国家試験問題:健常な成人において空腹時にグルカゴンの働きでグリコーゲンを分解してグルコースを生成し血液中に放出するのはどれか。

1肝臓

2骨格筋

3脂肪組織

4,心臓

5,膵臓

(1の肝臓でのみ行われる。グリコーゲンは肝臓と骨格筋に多いが、グルコース6-リン酸→グルコースにするグルコース6-ホスファターゼが肝臓にしかない。)

代謝異常と疾患

糖質代謝異常の代表が(      )。脂質代謝異常は第四回講義で。

ラテン語でDiabetes(尿があふれる)+Mellitus(甘い)

→甘い尿が多量に出る=糖尿病DM

大きく2つに分けられる。

教科書109ページ

(1)インスリン分泌の少ない1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)通常20歳以下で発症する。

(図5-3の説明)

グルコースの利用ができないので脂肪やアミノ酸の利用が増える。

肝臓:グリコーゲン分解とアミノ酸分解による糖新生が増える。脂肪酸分解でアセチルCoAが増えて、その血中運搬体であるケトン体(酸性)が多量に送り出されて(                  )になる。

筋肉;タンパク質分解が進む。ケトン体がエネルギー産生に利用される。

脂肪組織:脂肪分解が進む。

→全身がやせた状態になる。

教科書110ページ

(2)インスリンがあっても効きにくい2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)インスリン受容体の異常で一般に見られる糖尿病。40歳以後に発症することが多い。

教科書111ページ

(図5-4の説明)

1型ほどのようなことは起きないが高血糖状態が長く続くことにより血管壁が障害されて網膜、腎機能、神経伝達が障害される。

(余談)糖尿病の検査

    尿糖:血糖値と腎尿細管の再吸収量で決まり、血糖値170180mg/dLを越えると尿に糖が検出される。

    空腹時血糖値:前夜から10時間以上絶食し(飲水は可)、朝食前に測定したものをいう。正常値100mg/dL前後。

    HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):高血糖が続くとグルコースはタンパク質に結合する。これを糖化という。赤血球のタンパク質であるヘモグロビンとグルコースが結合したものをグリコヘモグロビンという。このグリコヘモグロビンは何種類かあるが、糖尿病と密接な関係を示すのがHbA1cである。赤血球の寿命はおよそ120日(4か月)で、赤血球中のヘモグロビンには血糖値に比例してグルコースが結合したヘモグロビンであるHbA1cが生じることになる。血液中のHbA1c値は赤血球の寿命の約半分に当たる期間、つまり採血日から12か月間の血糖の状態を推測する指標として使用されている。

    75g経口糖負荷試験:75gのグルコースを含む水溶液を飲んでもらい、飲む前と飲んだ後30分、60分、120分の血糖値を測定する。

4回 脂質

脂質は様々な構造をもつが、水に溶けない点が共通である。。

教科書28ページ

脂質の構成

バターやラードが手につくとぬるぬるして水で洗ってもなかなか取れないが、石鹸や洗剤をつけるときれいにとれる。石鹼は親水基と疎水基の両方を持っていて疎水基が脂肪を取り囲んで外に向いた親水基が水になじんで脂肪が手から離れる。このように多くのC, H,と少しのOから成る水に溶けない(疎水性の)有機物をまとめて脂質と言う。常温で固体のものを脂(あぶら)fat、液体のものを油(あぶら)oilと言う。脂質には脂肪組織や細胞膜の構成成分、エネルギー源、ホルモンや生理活性物質としての役割がある。

教科書29ページ

(図2-9の説明)

代表的な脂質の構造は(          )の-OHと(      )の-COOHが脱水結合してできるエステル-(C=O)-O-結合をつくっている。図の黄色い四角がアルコール部分。そこに脂肪酸が結合して脂質になる。

(1)単純脂質

①中性脂肪

グリセロールと脂肪酸が脱水縮合して中性脂肪と水になる。

H2C-OH   + HOOC-R1   H2C-O-CO-R1

HC-OH    + HOOC-R2 HC-O-CO-R2  +3H2O

H2C-OH   + HOOC-R3   H2C-O-CO-R3

3価アルコールのグリセロールと3つの高級(=炭素原子の多い)脂肪酸がエステル結合すると脂肪酸の酸性が消えて中性になるので中性脂肪という。

②ロウwax

高級(分子量の多い)1価アルコール+高級脂肪酸→ロウ    +

                     R1-OH        +HOOC-R2R1-O-CO-R2+H2 O

代表的なものに蠟燭(ろうそく)の蝋(ろう)、ミツバチのつくる蜜蠟、マッコウクジラの頭部の空洞にある鯨蝋、軟膏の原料に使われるラノリンが成分の羊毛蝋、鳥の羽毛の撥水物質、植物表面の水をはじくつるつるした物質。

③コレステロールもアルコールの一種で食物中では脂肪酸とエステル結合した形になる。

(2)複合脂質

単純脂質にリン酸や糖が結合したもの。アルコール部分はグリセロールかスフィンゴシン。

スフィンゴシンというアルコールは発見当初はその働きがわからなかったので謎という意味のギリシャ語スフィンクスを語源に名付けられた。その構造式は

CH3(CH2)12-CH=CH-CHOH-CHNH2-CH2-OH

リン脂質のリン酸に「極性分子」のコリンが付く。コリンの構造式は

    -CH2-CH2N+(CH3)3

本来3本の手の窒素が4本の手になっているので極性分子という。

(余談)コリンにアセチル基が付いたアセチルコリンは神経伝達物質として重要。(アルツハイマー型認知症では脳内でアセチルコリンが減少していることが知られている。)

3)誘導脂質

脂質の分解で生じる。脂肪酸、コレステロールについてこれから説明。脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)は後日説明。その他脂肪酸のアラキドン酸から合成される生理活性物質もこれから説明。

(      )(R-COOH

炭化水素脂肪酸は飽和(単結合のみ)脂肪酸と不飽和(二重結合をもつ)脂肪酸がある。脂肪酸は炭素数と二重結合の位置により表される(たとえばパルミチン酸は160、オレイン酸は181)。

(余談)トランス脂肪酸:トランスとは「横切って、かなたに」という意味で、脂肪酸の場合では水素原子が炭素間の二重結合をはさんでそれぞれ反対側についていることを表す。それに対してシスとは「同じ側の、こちら側に」という意味で、脂肪酸の場合には水素原子が炭素の二重結合をはさんで同じ側についていることを表す。トランス脂肪酸は動脈硬化を促進する危険性があると言われている。

教科書30ページ

(表2-1の説明)

飽和脂肪酸:炭素が水素で飽和されて二重結合のないもの

短鎖脂肪酸は臭気あり。長鎖脂肪酸は無色無臭。

融点は固体が液体になる(分子どうしがバラバラになる)温度。

酪酸(40)(融点-7℃)(腐敗したバターの臭い)

カプロン酸(60)(融点-3℃)(ヤギの臭い)

カプリル酸(80)(融点16℃)(ココナツオイル)

カプリン酸(100)(融点31℃)(ココナツオイル)

ラウリン酸(120)(融点44℃)(ヤシ油、界面活性剤の原料)

ミリスチン酸(140)(融点53℃)(パーム油)

パルミチン酸(160)(融点63℃)(牛脂、豚脂)

ステアリン酸(180)(融点69℃)(木蝋)

アラキジン酸(200)(融点77℃)(ピーナッツ油)

分子量が大きくなると分子間力が強くなり融点が高くなる。炭素数10以下の脂肪酸はまだ水になじむので単独の遊離脂肪酸の形で存在するが、炭素数12以上の脂肪酸は人体内では固まってしまうのでグリセロールにエステル結合した形で存在する。

(表2-2の説明)

不飽和脂肪酸:炭素原子どうしの結合のうちに二重結合を含むもの。

長鎖不飽和脂肪酸は体温付近で液体(油)である。

パルミトオレイン酸(161)(融点-0.5℃)オリーブ油

オレイン酸(181)(融点12℃)オリーブ油

リノール酸(182)(融点-5℃)植物油、必須脂肪酸

リノレン酸(183)(融点-11℃)必須脂肪酸

アラキドン酸(204)(融点-49℃)必須脂肪酸

エイコサペンタエン酸(EPA) 205)(融点-54℃)魚油に多い。

ドコサヘキサエン酸(DHA) 206)(融点-44℃)魚油に多い。

植物は不飽和脂肪酸を合成できるが、動物は体内で飽和脂肪酸しか合成できない。外からの栄養として取り入れなければいけないので不飽和脂肪酸は必須脂肪酸と言われる。昔はビタミンFとも言われた。

教科書31ページ

(図2-10の説明)

CHを略した描き方。COOHから最も遠い炭素からの初めの二重結合の位置により分類されることがある。たとえばオレイン酸の二重結合は最後から数えて9番目にあるのでオレイン酸はn-9(エヌマイナスキュウ)系またはω9(オメガキュウ)脂肪酸と言われる。

言われる。炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸の構造式は書けるようにしておく。

☆国家試験問題:魚油に多く含まれる脂肪酸はどれか。

1,カプリル酸

2,オレイン酸

3,ミリスチン酸

4,ドコサヘキサエン酸

13は飽和脂肪酸。2は不飽和脂肪酸でオリーブ油に多いω9脂肪酸。4がDHAと略される青魚に多いω3脂肪酸。)

☆参考問題:次の生物のうち、細胞膜の不飽和脂肪酸の割合が最も高いと思われるのはどれか。

1,南極海の魚

2,砂漠のヘビ

3,人類

4,ホッキョクグマ

5100℃の温泉に住む好熱性細菌

(答えは1。南極海の魚は氷の海に生息し、しかも変温動物であるから、低温下でも膜の流動性を保つために不飽和脂肪酸の割合が高い。)

☆歯科医師国家試験問題:必須脂肪酸はどれか。

1,乳酸

2、リノール酸

3、パントテン酸

4、ヒアルロン酸

5、アスパラギン酸

(答え2。他はそもそも脂肪酸でない。)

(        )

(図2-11の説明)

トリ(3+アシル(炭化水素鎖)+グリセロール(三価アルコール)。

酸性の脂肪酸がグリセロールとエステル結合して中性になるので中性脂肪ともいう。

アルコールの-OHと脂肪酸の-Hが取れて水分子となる。脱水縮合という。

脂肪の大部分はこの形で食品中、体内の脂肪細胞に貯蔵される。

教科書32ページ

ステロイド類とコレステロール

(図2-12の説明)

今までの鎖状の脂質と比べるとずいぶん違う形に見えるが、炭素骨格が環状になっているだけで水に溶けにくい脂質である。炭素が六角形3つと五角形1つの構造を(          )骨格という。それぞれの炭素に番号が付いている。コレステロールはステロイド骨格のC3-OHが付いているのでアルコールである。体内のコレステロールは30%が食物から、70%が肝臓でアセチルCoAから合成される。つまり原料が糖、脂質、アミノ酸いずれの場合もある。さらにコレステロールから次のものが合成される。

(1)胆汁酸(肝臓でコール酸が合成されて、腸内で腸内細菌によりデオキシコール酸に変換される。)

(2)副腎皮質ホルモン(コルチゾール)

(3)性ホルモン(テストステロン、エストラジオール)

(4)ビタミンD(7-デヒドロコレステロール、コレカルシフェロール)

コレステロールはこのように体内に不可欠な物質の原料となる。血中コレステロールが高すぎると動脈硬化の原因となる。

☆歯科医師国家試験問題:生体内でコレステロールから合成されるのはどれか。

1,ヘム

2,ヒスタミン

3,メラトニン

4,ノルアドレナリン

5、コルチゾール

(答え5。)

☆臨床検査技師国家試験問題:コレステロールから生合成されないのはどれか。

1,胆汁酸

2,ビタミンD

3,アドレナリン

4,アルドステロン

5,エストラジオール

(正解3。アドレナリンはアミノ酸のチロシンから合成されることを次回の講義で学ぶ。)

教科書33ページ

(        ):細胞膜、神経鞘の成分。

単純脂質にリン酸が結合したもの。

(図2-13の説明)

大きく分けてアルコール部分がグリセロールのグリセロリン脂質とアルコール部分がスフィンゴシンのスフィンゴリン脂質がある。

グリセロリン脂質

グリセロールC1C2に脂肪酸、C3にリン酸が付くとホスファチジン酸という。

ホスファチジン酸のリン酸の先にコリンが付くとホスファチジルコリン(レシチン)と言う。脳、神経、肝臓、卵黄などに多く含まれている。生体で最も多いリン脂質である・

(余談)他にホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミンがある。細胞膜のリン脂質である。特にホスファチジルイノシトールはシグナルを細胞表面から細胞内へ伝達する特別の役目を持つ。

(余談)卵黄にはレシチンが豊富である。卵黄1個、食酢15ml、食塩1g、サラダ油150mlを混ぜて撹拌するとレシチンは界面活性剤として微小な油滴の周囲を取り囲んで食酢中に分散した乳濁液=マヨネーズができる。

スフィンゴリン脂質

スフィンゴシンのNH2部分に脂肪酸がついたものをセラミドという。さらにOH部分にリン酸+コリンが付いたものをスフィンゴミエリンという。脳、神経、赤血球に多い。ニーマン・ピック病(133ページ)は先天的なスフィンゴミエリナーゼの欠損でスフィンゴミエリンが肝臓や脾臓にたまって腫大する。神経症状(精神遅滞)も起きる。

教科書34ページ

(      ):神経鞘の成分。高等動物ではアルコール部分はほとんどスフィンゴシン。

(図2-14の説明)

スフィンゴシンのNH2部分に脂肪酸が付いたものをセラミド。セラミドのOHに糖が付いたものをスフィンゴ糖脂質という。

(ガラクト)セレブロシド(セレブロは脳の意味):セラミドのOHにガラクトースが付いたもの。神経組織に分布する場合が多い。クラッベ病はガラクトセレブロシドからガラクトースを切り離す酵素のガラクトセロブロシダーゼが先天的に欠損しており脳(特に後頭葉白質)の髄鞘が障害される。現在のところ治療法はない。

グルコセレブロシド:セラミドのOHにグルコースが付いたもの。脳白質に多く含まれる。ゴーシェ病(133ページ)はグルコセレブロシドからグルコースを切り離す酵素のグルコセレブロシダーゼが先天的に欠損しており肝臓、脾臓、骨にグルコセレブロシドが蓄積する。治療法があって点滴で投与できる酵素製剤(セレザイム)がある。

ガングリオシド:セラミドのOHに多くの糖が付いたもの。脳神経の成分。ガングリオシドは乳幼児期における脳の発達に伴い急速に生合成され、その後ヘキソサミニダーゼによって分解される。テイ・サックス病(133ページ)はヘキソサミニダーゼが先天的に欠損しているため生後6か月までは正常に発育するが、その後神経線維のガングリオシドの合成が止まらないため増大して精神身体能力の低下が起こる。治療法はなかったが、最近遺伝子組み換えによるヘキソサミニダーゼの動物実験が成功して人への応用が期待されている。

(              )

(図2-15の説明)

細胞膜のリン脂質から酵素(ホスホリパーゼ)の働きで不飽和脂肪酸のアラキドン酸(204)が生じる。これから生じる炭素数20(=エイコサ)個の様々な生理活性物質をエイコサノイドという。

(              )(トロンボの意味は血栓)血小板凝集(血栓を作る)、気管支収縮の作用。

(                  )(プロスタの意味は前立腺)男性の前立腺分泌液に子宮を収縮させる作用があることから研究された、痛みや発熱の原因になる。

(              )(ロイコの意味は白血球):白血球を誘導して免疫活性化、気管支収縮の作用。

教科書75ページ

脂質代謝

教科書76ページ

脂質代謝の役割と概要

(図4,2-1の説明)

貯蔵される脂質の大部分が中性脂肪。中性脂肪はエネルギー貯蔵物質として重要。中性脂肪はグリセロールと脂肪酸に分解されて代謝される。

(1)グリセロールは解糖系に入る。

(2)脂肪酸はβ酸化(後で説明)によりアセチルCoAになった後、クエン酸回路に入ってATP合成に進むかコレステロール→ステロイド(32ページ)またはケトン体(80ページ)の合成に進む。

脂質の消化・吸収と貯蔵

教科書77ページ

(図4,2-2の説明)

食物中の脂質の99%は中性脂肪=トリアシルグリセロール。脂質は水に溶けないのでそのままでは酵素の作用を受けにくい。コレステロールを原料に肝臓で合成されて十二指腸で分泌される(       )には界面活性剤の役割があり、脂肪を乳化して小さな脂肪球にする。続いて膵液中のリパーゼにより(      )とモノグリセリドに分解される。これらの物質は直径2nmのミセルとなって小腸粘膜上皮細胞の細胞膜から拡散によって細胞内に吸収される。長鎖脂肪酸とモノグリセリドは吸収上皮細胞の滑面小胞体に入り、そこでトリグリセリドに再合成される。トリグリセリドはゴルジ装置に運ばれ、そこで蛋白と結合して(            )となる。この大きなリポタンパク質は毛細リンパ管→中心乳び管→胸管→鎖骨下静脈→上大静脈→心臓→肝動脈から肝臓に入る。食後の血液は白濁しており、乳びと呼ばれる。食後30分から1時間で肝細胞に取り込まれて脂肪酸とグリセロールに分解されて乳びは消える。

一方、短鎖脂肪酸(長さが12炭素以下)はほかの栄養素(グルコースやアミノ酸など)と同様に毛細血管→門脈→肝臓に運ばれる。余分の脂質は脂肪組織に中性脂肪の形で貯蔵される。脂質は熱量が大きい(9kcal/g)ので貯蔵エネルギーとして適している。

☆国家試験問題:脂肪を乳化するのはどれか。

1,胆汁酸塩

2,トリプシン

3,ビリルビン

4,リパーゼ

(1が正解。脂肪は胆汁酸塩で「乳化」される。2のトリプシンはタンパク質分解酵素。3のビリルビンは胆汁酸と合わせて胆汁になる。4のリパーゼは脂肪分解酵素。)

☆国家試験問題:胆汁の作用はどれか。

1,殺菌

2,脂肪の乳化

3,蛋白質の分解

4,炭水化物の分解

2が正解。脂肪は胆汁酸塩で乳化される。)

☆国家試験問題:脂肪分解酵素はどれか。

1,ペプシン

2,リパーゼ

3,マルターゼ

4,ラクターゼ

(正解21はタンパク質分解酵素。34は糖質分解酵素。)

☆国家試験問題:膵リパーゼが分解するのはどれか。

1,脂肪

2,タンパク質

3,炭水化物

4,ビタミン

(正解1。)

☆国家試験問題:Aさん(56歳)は、膵癌で幽門輪(胃)温存膵頭十二指腸切除手術を受け、膵臓は約1/3になった。経過は良好である。Aさんの消化吸収機能で正しいのはどれか。

1,脂肪吸収が低下する。

2,ビタミンの吸収障害が起こる。

3,タンパク質が小腸粘膜から漏出する。

4,炭水化物を消化する能力は低下しない。

(膵臓切除後には膵液中の消化酵素分泌が低下するので正解1。胃の幽門輪を切除するとビタミンB12の吸収を促進する内因子の分泌がなくなる。3は炎症性腸疾患で起こる。4はアミラーゼが低下するので炭水化物の消化は低下する。)

☆国家試験問題:小腸で消化吸収される栄養素のうち、リンパ管から吸収されて胸管を通って輸送されるのはどれか。

1,糖質

2,タンパク質

3,電解質

4,中性脂肪

5,水溶性ビタミン

(正解4。1,2,3,5は毛細血管から吸収されて門脈に入って肝臓へ。)

教科書78ページ

脂肪酸の分解

(図4,2-3の説明)

脂肪組織の脂肪の分解は脂肪組織中の(                      )により行われる。インスリンにより阻害、グルカゴンにより促進される。絶食で血糖値が下がるとグルカゴンが分泌されてホルモン感受性リパーゼにより中性脂肪がグリセロールと脂肪酸に分解される。

グリセロールは解糖系に入る。

脂肪酸は次に説明するβ酸化を受けてアセチルCoAになる。ケトン体はアセチルCoAの血中運搬体(後で説明)。

(まとめ)脂肪分解酵素のリパーゼには3種類ある。

(1)膵臓から分泌される消化酵素のリパーゼ:食物中の中性脂肪を消化する。

(2)血管内皮中のリポタンパク質リパーゼ:キロミクロンに作用し、含まれる中性脂肪を分解する。

(3)脂肪組織中のホルモン感受性リパーゼ:アドレナリンやグルカゴンの作用で活性化され脂肪細胞内の中性脂肪を分解する。

教科書79ページ

空腹で運動を始めると初めの約15分は主にグリコーゲンがエネルギー産生に使われるが、その後脂肪組織の燃焼が始まる。脳を除く多くの組織で安静空腹時にはエネルギーの必要量の半分以上(残りはグリコーゲン分解)が脂肪酸の代謝でまかなわれている。

脂肪酸の-COOHに付いている炭素原子をα位、次をβ位と呼ぶ。脂肪酸のβ位のところが酸化されて、そこで炭素の鎖が切れて、炭素原子の2個少ない脂肪酸と炭素原子を2個持つアセチルCoAに分かれるのが(      )である。一言でいえば「脂肪酸の分解は-COOHの付いている炭素から二つ目の炭素のところで2つずつ炭素が外れていってアセチルCoAになる反応」ということ。これだけ頭に入っていればよい。次はそれの詳しい説明だが気楽に。

(図4,2-4の説明)パルミチン酸(160)の場合を例にしてβ酸化を説明。

CH3(CH2)12 CH2 CH2 COOH

まず細胞質でCoAと結合して代謝されやすい形(アシルCoA)となる。

CH3(CH2)12 CH2 CH2 CO-CoA

→アシルCoAはミトコンドリアの外膜を通過できるが内膜を通過できないので、カルニチンという渡し舟の役割をするタンパクと結合してミトコンドリア内膜を通過する。

   カルニチン

    CH3    H

H3C-N- CH2-C- CH2-COOH

    CH3    OH←ここにアシルCoAが付く

→アシルカルニチン(アシルCoA+カルニチン)はミトコンドリアのマトリクスに入った後カルニチンが離れて単独のアシルCoAに戻る。そしてβ位で酸化されて(2Hが抜かれて)エノイルCoAになる。

 CH3(CH2)12 CH=CHCO-CoA

H2Oが入って3-ヒドロキシアシルCoAになる。

OH

CH3(CH2)12 CHCH2CO-CoA

→酸化されて(2Hが抜かれて)β―ケトアシルCoAになる。

CH3(CH2)12COCH2CO-CoA

→アセチルCoAが抜かれて炭素が2つ少ないアシルCoAになる。

CH3(CH2)12CO-CoACH3CO-CoA

このようにβ位で炭素2つずつはずれて、はずれた2つの炭素はアセチルCoAとなってクエン酸回路に入って行く。残りの炭素が2つ少なくなったアシルCoAは炭素が全部消費されるまでβ酸化が繰り返される。炭素数16のパルミチン酸だったら8回β酸化を受けることになる。1モルのパルミチン酸から320個のATPができる。(1モルのグルコースからは93個のATP

(余談)サプリメントとしてカルニチンをとるカルニチンダイエット法があるが、効果はどうか?

確かにカルニチンは脂肪の燃焼に必要なものではあるが、脂肪の燃焼は糖質が足りなくなって来た時に起こるのでダイエットのためには糖質制限を同時にすることが必要。

それとカルニチンは人体中でアミノ酸(リシンとメチオニン)から合成されるので、バランスよく食事をしていればサプリメントとして取らなくてもよいのではないか。

小児の疾患でカルニチン欠乏症があるので、そのようなときは必要。

教科書80ページ

ケトン体の代謝

このように脂肪酸のβ酸化はエネルギー効率が良いが、アセチルCoAがたまってしまう時がある。

(図4,2-5の説明)

飢餓の時は食物が取れないので脂肪酸がエネルギー産生に使われる。脂肪酸からβ酸化によりアセチルCoAがどんどん作られるがクエン酸回路でそれらを処理できず、特に糖尿病の時はグルコースの利用が進まないためクエン酸回路が回りにくくなってアセチルCoAが消費されずたまってくる。クエン酸回路に入れなかったアセチルCoAは水に溶けないためアセチルCoAの血中運搬形の(        )に変化して血液中に出る。2分子のアセチルCoAが結合してアセト酢酸CH3COCH2COOHになる。アセト酢酸の大部分は3-ヒドロキシ酪酸CH3CHOHCH2COOHに、一部はアセトンCH3COCH3に変換される。アセトンは揮発性で呼気中に出る。3-ヒドロキシ酪酸は厳密にはケトン基-CO-を持たないが慣用的にケトン体に含めている。

教科書81ページ

(図4,2-6の説明)

血液中を移動して筋肉や脳などに到着したケトン体は再びアセチルCoAに戻ってATP産生に利用される。この処理能力を超えると全身にケトン体がたまってくる。ケトン体が増えて困るのはケトン体の酸性度が強いため(                )を起こすことである。

☆国家試験問題:脂肪分解の過剰で血中に増加するのはどれか。

1,尿素窒素

2,ケトン体

3,アルブミン

4,アンモニア

(答え21,4はアミノ酸分解で生じる。3は菅で合成されるタンパク質)

☆国家試験問題:尿ケトン体が陽性になる疾患はどれか。

1肝硬変

2糖尿病

3,尿路感染症

4,ネフローゼ症候群

(答え2。グルコースが利用できないので脂肪酸の分解が進んでケトン体が増える。)

☆歯科医師国家試験問題:過度のダイエットで血中濃度が上昇するのはどれか。

1,コレステロール

2,脂肪酸

3,ケトン体

4,インスリン

5、 グルコース

(答え3。)

脂肪酸と脂肪の合成

教科書82ページ

(図4,2-7の説明)

脂肪酸の合成はアセチルCoAを原料にして細胞質で起こる。(逆の脂肪酸のβ酸化はミトコンドリアで起こる。)アセチルCoAカルボキシラーゼ(補酵素ビオチン)によりアセチルCoACH3-CO-SCoA)に-COOHが付いてマロニルCoAHOOC-CH2-CO-SCoA)になる。→(マロニルCoAからマロニル基が外れて脂肪酸合成酵素に付く→マロニル基の-COOHからCO2が外れて、そこに合成中の脂肪酸が付く→還元反応により飽和脂肪酸の炭素鎖ができる)これを繰り返して1回転で脂肪酸の炭素原子が2個ずつ延長する。以上の説明は複雑なので「脂肪酸合成もアセチルCoAから炭素2つずつ伸びていって長鎖の脂肪酸になる」と理解しておけば十分。脂肪酸の炭素数が偶数が多い理由はこれだったということ。

教科書82ページ

コレステロールの代謝

食事由来のコレステロール(30%)と肝臓で合成されるコレステロール(70%)がある。

教科書83ページ

(図4,2-8の説明)

コレステロールもアセチルCoAを原料にして肝臓で合成される。

   3分子の

アセチルCoAHMG-CoA→メバロン酸→→→→→→→コレステロール

COOH       COOH

CH2          CH2

H3C-C-OH    H3C-C-OH

             CH2          CH2

             C=O          CH2OH

             S-CoA

HMG-CoAは正式には「3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコーエー」だが「エッチエムジーコーエー」と略される。

HMG-CoAから(                  )によりメバロン酸を経て合成される。ほとんどの高コレステロール血症の薬はこの酵素を抑制することにより血中コレステロールを低下させる。このように単に脂質のとりすぎだけでなく糖質も含めた高カロリー食でアセチルCoAが増えて血中コレステロールが増える。脂質異常症の食事療法では脂質制限だけでなく糖質制限も大切な理由である。合成されたコレステロールは蛋白と結合してリポタンパク質の形で末梢組織に運ばれる。

☆国家試験問題:肝細胞で合成されるのはどれか。2つ選べ。

1,アルブミン

2,ガストリン

3,セクレチン

4,γグロブリン

5,コレステロール

(正解は152は胃、3は小腸、4はリンパ球のB細胞で合成される。)

教科書83ページ

リン脂質とエイコサノイド

教科書84ページ

(図4,2-9の説明)(表4,2-1の説明)

細胞膜のリン脂質に(                )が作用してアラキドン酸(204)が切り離される。この反応はステロイドホルモン(抗炎症薬として利用)により阻害される。

アラキドン酸は(                    )(      )により次のような物質ができる。この反応はアスピリンやロキソニンなどの解熱鎮痛薬(COX阻害薬)によって阻害される。

プロスタグランジンE2(C19H31O3COOH) 子宮収縮。血管拡張による痛み、発熱。

プロスタサイクリン(C19H31O3COOH)抗血小板作用、血管拡張による痛み、発熱

トロンボキサンA2(C19H31O3COOH) 抗血小板作用、気管支収縮。

一方(                )により次の物質になる。

 

ロイコトリエンは白血球を誘導して炎症を強めて気管支を収縮させる。

普通のホルモンは分泌細胞から離れたところに標的細胞があるが、プロスタグランジンは分泌された細胞の周辺で作用するので局所ホルモン(オータコイド)といわれる。

☆歯科医師国家試験問題:細胞膜由来の起炎性物質はどれか。

1,ヒスタミン

2,カリクレイン

3,ブラジキニン

4,ロイコトリエン

5,プロスタグランジン

(答え45。)

☆国家試験問題:抗血小板作用と抗炎症作用があるのはどれか。

1,ヘパリン

2,アルブミン

3,アスピリン

4,ワルファリン

3のアスピリンはシクロオキシゲナーゼを阻害して血小板凝集と炎症を起こすプロスタグランジンの産生を抑制する。ヘパリンとワルファリンは抗凝固剤だが、抗炎症作用はない。アルブミンは血清タンパク質。)

教科書85ページ

血中リポタンパク質

脂質は水に溶けないので

血液中を運搬される時は親水性を高めるために(              )粒子を形成する。リポタンパク質は外側にリン脂質の親水性部分を向けているので水に溶け込むことができる。

(表4,2-2の説明)

密度によってキロミクロン(0.95g/mL)、超低密度リポタンパク質(VLDL,0.95~1.006g/mL)、中間密度リポタンパク((IDL,1.006~1.019g/mL)、低密度リポタンパク質(LDL,1.019~1.063g/mL)、高密度リポタンパク質(HDL,1.063~1.210g/mL)に分類される。リポタンパク質のタンパク質部分をアポタンパク質という。

(            ):食物に由来する中性脂肪を小腸からリンパ管、血液を介して運ぶ。アポタンパク質B,C,Eを持つ。

(        ):肝臓で作られた内因性の中性脂肪、コレステロールを末梢に運ぶ。始めに肝臓で合成された時にはアポ蛋白Bだけを持つ。血液中に出た後にHDLからアポタンパク質C,Eをもらう。

IDLVLDL中の中性脂肪がアポタンパク質Cに刺激された血管内皮細胞のリポ蛋白リパーゼにより分解されて中間密度リポタンパク質IDLに変わってアポタンパク質はB,Eだけになる。)

(      ):IDLの中性脂肪がアポタンパク質Eを介して肝臓のリパーゼによりさらに分解されてコレステロールの割合が高くなってLDLに変わる。アポタンパク質はBだけになる。LDLは末梢細胞のLDL受容体から取り込まれて細胞膜や胆汁酸やステロイドホルモンの原料になる。多すぎると動脈硬化の原因になる。

(      ):アポ蛋白A,C,Eを持つ。アポタンパク質AHDLの主要なタンパク質で末梢の過剰なコレステロールを抜き取る酵素(LCAT)を活性化する作用がある。アポタンパク質Cはリポ蛋白リパーゼを活性化する作用がある。アポタンパク質Eはリポタンパク質の細胞表面受容体に対する認識因子として働く。LDL受容体に先回りしてLDLが細胞に取り込まれるのを抑える働きと末梢の過剰なコレステロールを抜き取る働きがある。運動や少量のアルコール摂取で増加する。

LDLには「悪玉」、HDLには「善玉」のようなあだながついているが、LDLに含まれているコレステロールもHDLに含まれているコレステロールもまったく同じもの。リポタンパク質の役割が正反対で、HDLはたくさんあったほうが健康にいいので善玉、LDLは少ない方がいいので悪玉と呼ばれている。

食後は血中の中性脂肪がキロミクロンとしても存在するので脂質異常症の採血は空腹時に採血することが大事。

☆国家試験問題:食事由来のトリグリセリドを運搬するのはどれか。

1HDL

2LDL

3VLDL

4,キロミクロン

(答え4

類題(1):肝臓で作られたトリグリセリドを脂肪組織に貯蔵してLDLに変わるのは?

類題(2):コレステロールを組織に運ぶのは?

類題(3):組織のコレステロールを肝臓に運ぶのは?

教科書86ページ

脂質異常症

健康診断で指摘される異常で一番多い。以前は血液中の悪玉(LDL)コレステロール値か中性脂肪が高い状態を(        )と呼んだが、今は善玉(HDL)コレステロール値が低い状態も含めて(          )と呼んでいる。

動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診断基準では

LDL140mg/dL以上

HDL40mg/dL未満

TG150mg/dL以上

non-HDL(総コレステロールからHDLを引いたもの)170mg/dL以上

を脂質異常症という。

☆国家試験問題:低値によって脂質異常症と診断される検査項目はどれか。

1,トリグリセリド

2,総コレステロール

3,低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C

4,高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C

(正解4。)

脂質異常症があると、血管の壁に余分な脂質が沈着し、プラークと呼ばれる塊ができて硬くなる。この動脈硬化が進行すると血管の内側が狭くなってつまりやすくなり脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす。

(表4,2-3の説明)

Ⅰ型:リポタンパク質リパーゼは肝臓以外の脂肪組織や筋肉などの毛細血管内皮細胞表面に存在し、中性脂肪を分解する。アポタンパク質CⅡはリポタンパク質リパーゼを活性化するのに必要。

a型:LDL受容体はアポタンパク質Bの受容体で血液中のLDLを結合して細胞内に取り込む細胞表面の受容体。

Ⅲ型:アポタンパク質Eはリポタンパク質の細胞表面受容体に対する認識因子として働く。

他は原因不明か糖尿病や肝機能低下からの続発性。

脂質異常症の治療は生活習慣の改善が基本。バランス良い食事を一日三食、一回を腹八分目、薄味にして食物繊維の多い野菜から食べることが大事。早食いや菓子、マーガリンなどのトランス脂肪酸を避ける。運動すれば中性脂肪は低下し、HDLコレステロールは上昇する。ウォーキングなどの有酸素運動を15分以上続けると脂肪が燃える。薬物治療はHMG-CoA還元酵素阻害剤によるコレステロール合成の低下やフィブラート系による中性脂肪の低下。

教科書87ページ

脂肪細胞と生活習慣病

脂肪組織から分泌される(                  )。アディポは脂肪、サイトカインは生理活性物質の意味。

血中濃度は一般的なホルモンに比べてけた違いに多く㎍/mL。(ペプチドホルモンはng/mL、ステロイドホルモンはpg/mL

善玉と悪玉がある。

善玉のアディポネクチンは脂肪酸の燃焼、細胞内の脂肪酸を減少させてインスリン感受性を亢進、動脈硬化抑制。内臓脂肪量が少ないほど多くなる。

逆に遊離脂肪酸やTNF-αは悪玉で内臓脂肪が多いほど分泌が増してインスリン作用を妨害して高血糖を起こす。

(余談)コロナウィルス感染症で肥満が重症化リスクの一つである理由。ウイルス感染により脂肪組織から大量のサイトカインが放出されてサイトカインストームが起きやすくなる。

☆国家試験問題:脂質異常症の成人患者に対する食事指導の内容で正しいのはどれか。

1, 不飽和脂肪酸の摂りすぎに注意する。

2, コレステロール摂取量は1日600mg未満とする。

3, 高トリグリセリド血症では、アルコールを制限する。

4, LDLコレステロール血症では、トランス脂肪酸の摂取を促す。

(正解3。)

☆国家試験問題:生活習慣病の一次予防はどれか。(他の科目で習いますが一次予防は健康増進や病気にならないための予防、二次予防は早期発見、早期治療、病気が悪くならないための予防、三次予防は病気治療後の後遺症治療や再発予防のこと。)

1,早期治療

2,検診の受診

3,適切な食生活

4、社会復帰を目指したリハビリテーション

12は二次予防。3〇。4は三次予防。)

(特)肥満症

「肥満」とは摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることにより脂肪組織に中性脂肪が過剰に蓄積した状態である。

BMI=体重kg÷身長m÷身長m22が標準体重で最も病気になりにくいと言われる。18.5未満を低体重、25以上を肥満と定義する。BMI25以上でも皮下脂肪型(ぽっちゃり型)は寒さに強いなど健康な場合が多いが内臓脂肪型(ずんぐり型)は代謝異常、動脈硬化などよくないことが多い。

肥満度=(実測体重-標準体重)÷標準体重×10020%以上は軽度肥満。30%以上は中等度肥満。50%以上は高度肥満。

☆国家試験問題:身長160cm、体重64kgである成人のBMIを求めよ。

64÷1.6÷1.625、答え25

☆国家試験問題:身長170cm、体重70kgである成人の体格指数(BMI)を求めよ。ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第一位を四捨五入すること。

70÷1.7÷1.724.2214…答え24

☆国家試験問題:A君(11歳)は、身長145㎝、体重50㎏である。身長145㎝の11歳男児の標準体重は38㎏とする。A君の肥満度を求めよ。ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下を四捨五入すること。

5038)÷38×10031.5…、答え32

「肥満症」とは肥満に関連する健康障害が生じて医学的な見地から減量が必要な肥満を指す。特に脂肪の蓄積部位が内臓脂肪の場合、合併症が生じやすい。糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳梗塞は内臓脂肪の過剰蓄積がその病態に関与する。睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患は脂肪細胞の量に関連する。

脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインや遊離脂肪酸などの生理活性物質により合併症が誘導される。

治療の目的は減量による健康障害の改善ならびに進展予防にある。1か月に12kg程度、36か月の治療。

食事療法:脂質制限よりもカロリー制限。炭水化物の取りすぎでアセチルCoAがいっぱいできてコレステロール合成が過剰になるのだから。25kcal×標準体重/日の摂取エネルギーの指導を行う。野菜を先に食べる。早食いをしない。よく噛んで食べる。夕食は遅い時刻に食べない。糖質、脂質、タンパク質、ビタミンをバランス良く摂取することが大事なことが生化学の学習でよくわかる。

運動療法:特に内臓脂肪型肥満の改善に有用。速歩、ジョギング、自転車、水泳などの有酸素運動を130分、週3日を目安に実施する。エレベーターでなく階段を使う。歩数計の装着、運動しやすい服装。

行動療法:体重、食事、運動を自主的に記録。過食の要因となるストレス管理。身の回りのお菓子やグルメ番組の撤去。減量の実現への医療者や周囲からの賞賛や励まし。

5 アミノ酸とタンパク質

教科書35ページ

タンパク質とは何か

タンパク質は元々は漢字で蛋白質と書いて卵の白身という意味だった。英語ではプロテインproteinC,H,Oに加えてN( システィンとメチオニンだけはS)から成る(        )がペプチド結合でつながったポリマー。

☆国家試験問題:タンパク質で正しいのはどれか。

1,アミノ酸で構成される。

2,唾液により分解される。

3,摂取するとそのままの形で体内に吸収される。

4,生体を構成する成分で最も多くの重量を占める。

(1〇。2の唾液中のアミラーゼで分解されるのはデンプンなどの糖質。3×アミノ酸に消化されてから小腸で吸収される。4×水が最も多い。)

アミノ酸

(図2-16の説明)

アミノ酸は名前からわかるようにアミノ基(-NH2)とカルボキシ基- COOHをもつ。-COOHから1番目の炭素をα炭素という。α炭素のまわりに-NH2- COOH-H、側鎖が結合しているのをαアミノ酸という。各アミノ酸は独自の側鎖(R)を有する。この場合鏡に映した状態の立体異性体ができる。-COOHを上に置いた時-NH2が左に位置するものをL型、右に位置するものをD型という。自然界では大部分L-アミノ酸(糖は大部分D-型)。D型とL型はこれだけの違いだが物質としての性質は大きく異なる。たとえばL-グルタミン酸は昆布の旨味成分であるが、D-グルタミン酸には旨味がなく少し苦味を持つ。

(余談)味の素の発明。1908年池田菊苗博士は昆布40kgから旨味成分を熱水抽出し、約30gL-グルタミン酸を取り出した。グルタミン酸ナトリウムの形(粉末)にして化学調味料として商品化した。

   L-グルタミン酸ナトリウム   (D-グルタミン酸ナトリウム)

      味の素

COOH            COOH

NH2- C-H            H-C-NH2

CH2             CH2

CH2             CH2

COONa           COONa

アミノ基は酸性の環境で-NH2+H+-NH3+H+を受け取る。カルボキシ基はアルカリ性の環境で-COOH-COO-+H+H+を放出する。両方の性質をもつので両性電解質と呼ばれる。

R-CH-COOH→酸性(+H+)→R-CH-COOH

  NH2                    NH3+

R-CH-COOH→アルカリ性(- H+)→R-CH-COO-

  NH2                         NH2

教科書36ページ

(表2-3の説明)

タンパク質を構成するアミノ酸は20種類ある。☆が付いているのは体内では合成できず食物として摂取することが必要な(            )。その他のアミノ酸は体内で合成できる非必須アミノ酸。たとえばシスティンはメチオニンから、チロシンはフェニルアラニンから合成される。

(余談)タンパク質を構成するアミノ酸の同定は1900年代初頭動物栄養の研究から始まり一つ一つ同定されていき、1935年に最後の20番目のトレオニンが発見された。その後20年に及ぶ実験で20種類のアミノ酸のうち10種類が栄養に必須であり、どの一つを除いても実験動物の成長が止まり、最後は死ぬことがわかった。他の10種類のアミノ酸は動物が必要量をつくることができるので「非必須」である。

標準アミノ酸20種の三文字または一文字表記は生化学で広く用いられる。

中性アミノ酸

(        )(Gly/G)RHのみで最も単純な構造。立体異性体がない。

(        )(Ala/A)RCH3で次に単純な構造。

以上の2つの構造式は書けるように。

(      )(Val/V) 必須アミノ酸

(        )(Leu/L) 必須アミノ酸

(            )(Ile/I) 必須アミノ酸

以上の3つは分枝鎖アミノ酸Branched Chain Amino AcidBCAA)と言って筋肉の主成分。人体では枝分かれ部分の合成ができないので外から取り入れないといけない必須アミノ酸である。

(      )(Ser/S)-OHが付くと親水性を帯びる。

(          )(Thr/T)-OHが付く。必須アミノ酸。

(         )(Cys/C)-SHが付く。-S-S-結合を作って2つがひとつになるとシスチンという。毛や爪に多い。

(          )(Met/M)-S-を持つ。-CH3を渡しやすい。必須アミノ酸。

(            )(Asn/N)-CONH2(アミド基)を持つ。

(          )(Gln/Q)-CONH2を持つ。

(              )(Phe/F):ベンゼン環を持つ。必須アミノ酸。

(        )(Tyr/Y):ベンゼン環を持つ。カテコールアミンの材料。

(             )(Trp/W):インドール環を持つ。補酵素NADの原料。必須アミノ酸。

(        )(Pro/P):これだけはアミノ基-NH2でなくイミノ基-NH-を持つので厳密にはイミノ酸という。側鎖が自身の窒素原子に唯一結合しているアミノ酸で、水素結合に不可欠のN-H結合が存在しない。そのためタンパク質分子はプロリンのところで曲がる。たとえばミオグロビンには4つのプロリンがあるが、それらはどれも曲がり角にある。

酸性アミノ酸

(              )(Asp/D):アスパラギンの-CONH2-COOHになる。

(            )(Glu/E):グルタミンの-CONH2-COOHになる。味の素の主成分。

塩基性アミノ酸

(      )(Lys/K):必須アミノ酸。-NH2が付く。ケトン体の原料になる。必須アミノ酸

(          )(Arg/R):成長期に不足しやすい。小児の必須アミノ酸。

(          )(His/H):必須アミノ酸。トリプトファンと並んで複雑な形。必須アミノ酸

タンパク質の構造には4段階ある。

教科書37ページ

(図2-17の説明)

アミノ酸は鎖状につながってポリマーをつくる。アミノ酸が結合したものを(        )という。水分子がとれて結合して生じるCO-NH結合(アミド結合)をアミノ酸の結合の場合は特にペプチド結合という。アミノ酸2個から(          )、アミノ酸3個からトリペプチド、アミノ酸10個以下から(              )、アミノ酸多数から(            )、アミノ酸50個以上からタンパク質ができる。長くなるほど分子内で相互作用をして複雑な構造になる。アミノ酸の配列をタンパク質の一次構造という。

教科書38ページ

タンパク質の構造を赤血球中にある酸素を運ぶ役割をもつヘモグロビンを例にして考える。ヘモグロビンはその構造が最もよく調べられたタンパク質である。

(図2-18の説明)

(        ):アミノ酸の種類と配列順序のこと。ヘモグロビンは574個のアミノ酸からできている。

教科書39ページ

(図2-19の説明)

(        ):ペプチド結合どうしの水素結合-N-HO=C-によって生じるらせん(αヘリックス)やジグザグ(βシート)の部分的な立体構造のこと。

(図2-18の説明)ヘモグロビンを例にして。

(        ):側鎖どうしS-S結合や疎水基どうしの疎水結合により二次結合が折りたたまれてできる全体的な立体構造のこと。特にプロリンだけは水素結合に必要な-N-Hが欠落してαらせんが形成されないので、その部分でポリペプチド鎖が折れ曲がりやすい。

(        ):ポリペプチド(サブユニット)が複数結合して生じた構造のこと。

単に集まっただけではなくて微妙な効果をもたらす。たとえばヘモグロビンはα鎖2本とβ鎖2本から成っていてそれぞれに1分子ずつヘムが結合しており、このヘムの鉄原子と酸素が結合する。1つのヘムと酸素が結合すると他のグロビンの立体構造が変化して2つめのヘムはより酸素と結合しやすくなる。2つめのヘムと酸素が結合すると3つめはさらに酸素と結合しやすくなる。こうして多くの酸素を運んで組織で一気に酸素を供給できる。

ここで教科書95ページに飛びます。

ヘムの生合成とビリルビンの代謝

(            )は赤血球中に含まれていて酸素を運ぶ役割を持つ。静脈血中のヘモグロビンは酸素が少ないので暗い紫色だが、動脈血中のヘモグロビンは酸素が付くと明るい赤色になる。一酸化炭素COはヘモグロビンに酸素の200倍強く結合して毒性を示す。

☆国家試験問題:末梢血液中の「 」が低下した状態を貧血という。「 」に入るのはどれか。

1,血漿量

2,血小板数

3,アルブミン濃度

4,ヘモグロビン濃度

(正解4。)

☆国家試験問題:貧血を診断する際の指標となる血液検査項目はどれか。

1,アルブミン

2,ヘモグロビン

3,フィブリノゲン

4,プロトロンビン時間

(正解2。1はタンパク質、34は血液凝固の検査。)

☆国家試験問題:貧血の診断に用いられるのはどれか。

1,血糖値

2,尿酸値

3C反応性蛋白値

4,ヘモグロビン濃度

(正解43は炎症の程度を表す。)

☆国家試験問題:貧血の定義で正しいのはどれか。

1,血圧が下がること

2,脈拍を自覚すること

3,立ち上がると失神すること

4,血色素量(ヘモグロビン量)が減っていること

(正解4。一般に1,2,3を間違って貧血と呼んでいる。)

教科書96ページ

(図4,3-7の説明)ヘモグロビンの合成

グリシン+スクシニルCoA

COOH     COOH          

CH2       CH2             

NH2        CH2             

            C=O            

            SCoA           

4分子縮合してポルフィリンがつくられる

→ポルフィリンの中央に2価の鉄が加わって(    )になる

→骨髄で合成されたヘムにグロビンが加わってヘモグロビンになる。

96ページ右側のプラスα

(1)肝臓で合成されたヘムは薬物代謝酵素のシトクロムP450に利用される。

(2)糖尿病で高血糖状態が続くと糖がヘモグロビンに結合して(                  )=(         )になる。これを測定することによって最近12か月の血糖値を推定できる。

☆国家試験問題:糖尿病の診断指標となるのはどれか。

1,尿酸値

2HbA1c

3,赤血球沈降速度

4,プロトロンビン時間

2が正解。)

☆国家試験問題:糖尿病の血糖コントロールの指標となる検査値はどれか。

1,総ビリルビン

2,総コレステロール

3,グリコヘモグロビン(HbA1c

4,クレアチニンクリアランス

3が正解。)

教科書97ページ

(図4,3-8の説明)

脾臓でヘモグロビンが分解されると(          )になる。赤血球の寿命は120日。脾臓の大食細胞や肝臓のクッパー細胞で破壊される。ヘムの鉄は造血に再利用され、残りのポルフィリン部分は黄緑色の(              )になる。細胞傷害性があり水に溶けにくいのでアルブミンに結合し、肝細胞に取り込まれて滑面小胞体にあるグルクロニルトランスフェラーゼによってグルクロン酸と結合してオレンジ色の(              )になる。(グルコースのC6が酸化されて- COOHになったものをグルクロン酸という。)

炭素番号 グルコース グルクロン酸

1         CHO        CHO

2       HCOH       HCOH

3       HOCH      HOCH

4         HCOH      HCOH

5         HCOH      HCOH

6           CH2OH     COOH

直接ビリルビンは水に溶け、一部は血中に入るが大部分は胆汁中に排泄されて脂質の消化に加わり一部は小腸で再吸収されて肝臓にもどり(腸肝循環)一部は尿中(ウロビリノーゲン)便中(ステルコビリン)に排泄される。尿や便の色はこのビリルビンによる。

 血液中のビリルビンが高くなって皮膚や白眼の部分が黄色くなることを(    )という。

黄疸が起きるのは

(1)赤血球の破壊が亢進して間接ビリルビンが増えている時

(2)肝臓の機能が下がってグルクロン酸抱合ができなくて間接ビリルビンが増えている時

(3)結石やがんで胆管が閉塞して直接ビリルビンが排泄されなくて直接ビリルビンが増えている時

(4)新生児で胎児型のヘモグロビンFが破壊されたりビリルビン代謝が未熟な時。生後35日目をピークにして新生児黄疸が起きるが普通は自然に治まっていく。

☆国家試験問題:血液中のビリルビンの由来はどれか。

1, 核酸

2, メラニン

3, アルブミン

4, グリコゲン

5, ヘモグロビン

(正解5。)

☆国家試験問題:血中濃度が上昇すると黄疸となるのはどれか。

1,グルコース

2,ビリルビン

3,クレアチニン

4,総コレステロール

(正解2。)

☆国家試験問題:黄疸で黄染を確認しやすい部位はどれか。

1

2毛髪

3爪床

4眼球結膜

(「白い巨塔」で財前五郎は鏡に映る自分の眼球結膜の黄染で自分の病気を悟った。答え4。)

☆国家試験問題:生後3日。Aちゃんは母乳をよく飲み、体重3050g、体温測定37.2℃、呼吸数34/分、心拍数136/分である。昨日は排尿6回、排便4回であった。Aちゃんの母親はAちゃんの顔の黄染を心配している。Aちゃんの血液検査データは血清総ビリルビン13mg/dLである。Aちゃんの母親への説明で適切なのはどれか。

1,生理的な黄疸です

2,早発性の黄疸です

3,光線療法を受けると思います

4,頭のこぶで黄疸が強くなります

(総ビリルビン(正常値0.2~1.2mg/dL)は上昇しているが、全身状態は安定しているので正解は1。新生児黄疸について詳しくは小児看護学などで学びます。)

教科書39ページに戻る。

タンパク質の性質

一般にタンパク質は60℃以上の高温では立体構造が壊れてしまう(ゆで卵がよい例)。これをタンパク質の(    )という。

教科書40ページ

タンパク質の種類

(表2-4の説明)

    酵素タンパク質:アミラーゼ、ペプシン、リパーゼ

    輸送タンパク質:脂質を運ぶアルブミンやリポタンパク質、鉄を運ぶトランスフェリン、銅を運ぶセルロプラスミン、O2CO2を運ぶヘモグロビン

    貯蔵タンパク質:肝臓中の鉄と結合するフェリチン、筋肉中の酸素と結合するミオグロビン(クジラはこれが発達しているので長時間水中にいられる。)

    収縮性タンパク質:筋肉のアクチン、ミオシン、細胞分裂のときのチューブリン

    構造タンパク質:皮膚や軟骨のコラーゲン、靱帯のエラスチン。皮膚や爪のケラチン、DNAと結合するヒストン、絹糸の中のフィブロイン

    防御タンパク質:抗体(免疫グロブリン)、抗ウイルス作用のインターフェロン、血液凝固因子のフィブリノゲン、トロンビン

    調節タンパク質:ペプチドホルモン(インスリン、グルカゴン)

教科書88ページ

タンパク質とアミノ酸の代謝

教科書89ページ

タンパク質・アミノ酸の役割と概要

タンパク質が糖や脂質と大きく異なる点は窒素Nを含んでいること。

(図4,3-1の説明)94ページまで勉強した後で見直す。

タンパク質の消化と吸収

教科書90ページ

(図4,3-2の説明)

かみ砕かれた食物が胃に入ると胃酸(塩酸)の分泌を刺激する。胃内のpH2となりタンパク質は変性して消化されやすくなる。胃の主細胞から不活性型のペプシノーゲンが分泌され、塩酸の働きで活性型の(        )になる。最適pHは2である。

☆国家試験問題:正常な胃液のpHはどれか。

1pH1~2

2pH4~5

3pH7~8

4pH10~11

(強酸性の1を選ぶ。)

☆国家試験問題:頻回の嘔吐で生じやすいのはどれか。

1,血尿

2,低体温

3,体重増加

4,アルカローシス

(正解4。頻回の嘔吐では胃液中の塩酸HClH++CL-が喪失するため体はアルカリ性に傾く。)

次に十二指腸に酸性の食物が入ってくると膵液の分泌が促進される。膵液中のアルカリ性の重炭酸イオンHCO3-により中和される。膵液のタンパク質消化酵素はまず不活性型の前駆体のトリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンとして分泌されてから活性型の(          )、(              )に変えられる。これらの酵素の最適pH8である。

☆国家試験問題:胃底腺の主細胞の分泌物に由来するタンパク質分解酵素はどれか。

1,アミラーゼ

2,キモトリプシン

3,トリプシン

4,ペプシン

5,リパーゼ

(正解4。他は膵臓から分泌される酵素)

☆国家試験問題:膵液について正しいのはどれか。

1,弱アルカリ性である。

2,糖質分解酵素を含まない。

3,セクレチンによって分泌量が減少する。

4,ランゲルハンス島のβ細胞から分泌される。

(答え12アミラーゼがある。3セクレチンは膵液分泌を促進する。4はインスリンのこと。)

最終的に小腸粘膜の(            )によってアミノ酸に分解されて毛細血管に吸収される。グルコースと同様に上腸間膜静脈から門脈を通って肝臓に至る。

☆国家試験問題:栄養素と消化酵素の組合せで正しいのはどれか。

1,炭水化物―――――リパーゼ

2,タンパク質―――――トリプシン

3,脂肪―――――マルターゼ

4,ビタミン―――――ペプチダーゼ

(正解2。)

(ここで質問)タンパク質分解酵素はなぜ不活性型の前駆体で分泌されるのか?

(答え)人の細胞の成分は水に次いでタンパク質が多いのでタンパク質消化酵素は自分の細胞、組織を消化する恐れがあるため、不活性型の前駆体(実際に働く一歩手前の状態)としてつくられ貯蔵されている。自分で自分を消化しないよう安全装置を備えていると考えられる。細胞から分泌された後、酸や塩基の作用を受けて活性型に変化する。急性膵炎では膵臓の中で消化酵素が活性化されて発症する。細胞が破壊され、漏れ出た酵素が周囲の細胞を破壊し、さらにその酵素を活性化するために病巣が広がる。治療は絶食と酵素阻害剤の注射である。

(もう一つ質問)糖尿病の治療に使うインスリンは注射で投与しないと効果がない。なぜインスリンの飲み薬はないのか?

(答え)インスリンは51個のアミノ酸から成るペプチドホルモンである。口から投与するとアミノ酸に消化されてしまう。

アミノ酸の代謝

教科書91ページ

(図4,3-3の説明)

(1)アミノ酸からアミノ基がはずされて2-オキソ酸(COOHから数えて2番目の炭素にオキソ酸=Oが付くもの)=α-ケト酸(ケトン基C=Oがα炭素にあるもの)になる。アミノ基転移反応という。この反応は(                      )=(                  )により行なわれる。(ビタミンB6がアミノ基を運ぶ補酵素。)

R           R

H-C-NH2     C=O    +-NH2

COOH      COOH

アミノトランスフェラーゼの代表的なもの

ASTアスパラギン酸アミノ基転移酵素(= GOTグルタミン酸オキサロ酢酸トランスフェラーゼ)心臓、肝臓などに広く分布。

ALTアラニンアミノ基転移酵素( =GPTグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)おもに肝臓に分布

(2)このアミノ基を2-オキソグルタル酸(α-ケトグルタル酸)が受け取ってグルタミン酸になる。つまりアミノ基はすべていったんグルタミン酸として集められる。

COOH             COOH

CH2               CH2

CH2               CH2

C=O   +-NH2 H-C-NH2

COOH            COOH

(3)このグルタミン酸にグルタミン酸脱水素酵素が働いてアンモニアNH3が生じる。

COOH          COOH

CH2            CH2

CH2            CH2

H-C-NH2          C=O          + NH3

COOH          COOH

(4)NH3は肝臓の(        )に入って尿素に変えられ尿中に排泄される。

教科書92ページ

(図4,3-4の説明)

尿素回路はミトコンドリアにある。

アンモニアはまずミトコンドリアに入りカルバモイルリン酸になる。

NH3+CO2+ATPHN-COO-PO32-

カルバモイルリン酸+オルニチン→シトルリン

シトルリンは細胞質に出てアスパラギン酸と一緒になって→アルギニノコハク酸となり

アルギニノコハク酸は→アルギニンとフマル酸に分かれる。

アルギニンは尿素CO(NH2)2を放出して→オルニチンに戻りミトコンドリアに入る。

尿素は腎臓から尿中に排泄される。

尿素回路の各段階のどの酵素が欠損しても高アンモニア血症を起こす。(133ページ表7-1

肝臓の機能が低下(肝硬変や肝癌末期)するとアンモニアの処理ができないので血中のアンモニアが増加して(                )となる。アンモニアは中枢神経毒性があり意識低下(完成昏睡)、けいれんなどが起こる。

腎臓の機能が低下すると排泄できないので血液中の尿素(      )=(            )が上昇する。

(余談)尿漏れなどで衣服に付いた尿が匂うのは尿素がアンモニアに再び分解されるから。膀胱炎などで尿素分解酵素(ウレアーゼ)を持つ細菌の感染では排尿直後からアンモニア臭がする。

☆歯科医師国家試験問題:肝臓で合成されるのはどれか。

1,尿素

2,葉酸

3,レニン

4、トリプシン

5、クレアチニン

(答え12はビタミンで食事から取る。3は腎臓。4は膵臓。5は筋肉。))

☆臨床検査技師国家試験問題:1モルの尿素からウレアーゼによって生成されるアンモニアのモル数はどれか。

11/2モル

21モル

32モル

43モル

54モル

(正解3。尿素の構造式を見ればわかる。)

☆国家試験問題:肝性脳症の直接的原因はどれか。

1, 尿酸

2, アンモニア

3, グルコース

4, ビリルビン

(正解2。)

教科書93ページ

(図4,3-5の説明)

アミノ酸からアミノ基が外れた炭素骨格はピルビン酸、アセチルCoA、アセト酢酸、2-オキソグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、オキサロ酢酸のいずれかに行き着く。これらの物質はクエン酸回路に入りATP合成に使用される。

それらの構造式を描いてみましたが眺めるだけでいいです。覚える必要はありません。

(1)アラニン、セリン、グリシン、システィン、トリプトファンはピルビン酸に分解

アラニン→ピルビン酸

COOH       COOH

CH-NH2      C=O

CH3          CH3

システィン → ピルビン酸

COOH            COOH

CH-NH2           C=O

CH2-SH            CH3

グリシン→セリン→ピルビン酸

COOH    COOH    COOH

CH2-NH2  CH-NH2   C =O

    CH2OH   CH3

トリプトファン→ → →ピルビン酸+アセト酢酸

COOH                   COOH        COOH

CH-NH2                 C=O          CH2

CH2                     CH3           C=O

C8H6N                                 CH3

(2)アスパラギンとアスパラギン酸はオキサロ酢酸に分解

アスパラギン→アスパラギン酸→オキサロ酢酸

COOH        COOH          COOH

CH-NH2       CH-NH2       C=O

CH2           CH2         CH2

CO NH2       COOH        COOH

(3)グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、プロリン、ヒスチジンは2-オキソグルタル酸に分解

グルタミン→グルタミン酸→2-オキソグルタル酸

COOH      COOH         COOH

CH-NH2     CH-NH2       C=O

CH2         CH2          CH2

CH2         CH2        CH2

CONH2      COOH        COOH

アルギニン→オルニチン→→グルタミン酸→2-オキソグルタル酸

COOH     COOH     COOH    COOH

CH-NH2   CH-NH2    CH-NH2   C=O

CH2       CH2        CH2     CH2

CH2       CH2        CH2     CH2

CH2       CH2        COOH    COOH

NH        NH2

HN-C=NH2  +尿素

プロリン→→→グルタミン酸→オキソグルタル酸

COOH          COOH    COOH

CH-NH-CH2     CH-NH2   C=O

CH2-CH2        CH2      CH2

                 CH2       CH2

                 COOH      COOH

ヒスチジン→→→→グルタミン酸→2-オキソグルタル酸

COOH            COOH        COOH

CH-NH2          CH-NH2       C=O

CH2              CH2          CH2

C3H3N2           CH2           CH2

                  COOH        COOH

(4)トレオニン、メチオニン、バリン、イソロイシンはスクシニルCoAに分解

トレオニン→→スクシニルCoA

COOH        S-CoA

CH-NH2       C=O

CH-OH       CH2

CH3          CH2

               COOH

メチオニン→SAM→→→→→→スクシニルCoA

     (S-アデノシルメチオニン)

COOH                       S-CoA

CH-NH2                     C=O

CH2                         CH2

CH2                         CH2

S-CH3                      COOH

バリン  →→→→→スクシニルCoA

COOH                              S-CoA

CH-NH2                 C=O

CH-CH3                 CH2

CH3                     CH2

COOH

イソロイシン→→→→→アセチルCoA+スクシニルCoA

COOH                 CH3          S-CoA

CH-NH2                C=O         C=O

CH-CH3                 S-CoA       CH2

CH2                      CH2

CH3                      COOH

(5)ロイシン、リシンはアセチルCoA+アセト酢酸に分解

ロイシン→→→→→→→アセチルCoA+アセト酢酸

COOH                CH3           COOH

CH-NH2              C=O           CH2

CH2                  S-CoA         C=O

CH-CH3                             CH3

CH3   

リシン→→→→(複雑→→→)→アセチルCoA+アセト酢酸

COOH                         CH3              COOH

CH-NH2                       C=O          CH2

CH2                           S-CoA         C=O

CH2                                          CH3

CH2  

CH2 NH2

(6)トリプトファンはピルビン酸+アセト酢酸に分解

トリプトファン→ → →ピルビン酸+アセト酢酸

COOH                   COOH        COOH

CH-NH2                 C=O          CH2

CH2                     CH3           C=O

C8H6N                                 CH3

(7)フェニルアラニンとチロシンはアセト酢酸とフマル酸に分解

フェニルアラニン→チロシン→アセト酢酸、フマル酸

COOH            COOH     COOH     COOH

CH-NH2           CH-NH2   CH2       CH

CH2               CH2       C=O       CH

C6H5              C6H4OH   CH3       COOH

教科書94ページ

(表4,3-1の説明)

アミノ基を失った後クエン酸回路に入って糖新生でグルコースになるものは(              )、アセチルCoAを経てケトン体や脂肪酸の材料になるものは(                )と言われる。このようにアミノ酸やタンパク質もエネルギー源として利用される。

アミノ酸のその他の使われ方

アミノ酸からいろいろなものがつくられる。

(図4,3-6の説明)

(1)核酸塩基の合成

プリン塩基の材料(次回の核酸代謝で)

ピリミジン塩基の材料(次回の核酸代謝で)100ページ図4,4-2

(2)ポルフィリン→ヘムの材料

(3)生理活性アミン

アミノ酸は脱炭酸酵素によりアミンと二酸化炭素に分解される。

ヒスチジンから-COOHがとれてヒスタミンになる。ヒスタミンはアレルギー反応や胃酸分泌促進を起こす。だから花粉症の薬や胃潰瘍の薬は抗ヒスタミン剤。

COOH                    

CHNH2                   CH2 NH2

CH2                      CH2

C3H3N2                   C3H3N2

☆歯科医師国家試験問題:アミノ酸から合成されるのはどれか。

1,ヒスタミン

2,アルドステロン

3、ロイコトリエン

4、血小板活性化因子

5、プロスタグランジン

(答え1。他は脂質から。)

チロシンから-COOHがとれてドパミン→アドレナリンになる。

ドパミンが欠乏するとパーキンソン病になる。

ドパミンの過剰になると統合失調症の幻覚や妄想の原因となる。

COOH  

CH-NH2            CH2-NH2   CH2-NH2-CH3

CH2                CH2           CHOH

C6H4OH            C6H3(OH)2     C6H3(OH)2

C6H3(OH)2の部分をカテコールといい、これにアミノ基が付いたものをカテコールアミンという。

トリプトファンから-COOHがとれてセロトニン(腸と脳の神経伝達物質)になる。

うつ病ではセロトニンとノルアドレナリンの活性が低下している。

COOH

CH-NH2                          CH2-NH2

CH2                     CH2

C8H6N                   C8H6N

グルタミン酸は脳内で興奮性に働くが、-COOHがとれてγ-アミノ酪酸(GABA)に変換されると抑制性に働く。

COOH

CH-NH2                 CH2-NH2

CH2                     CH2

CH2                     CH2

COOH                  COOH

入眠剤はGABA受容体作動薬が多い。

精神状態が生化学的に説明できる時代になっている。

☆国家試験問題:神経伝達物質と精神疾患の組合せで最も関連が強いのはどれか。

1,ドパミン―――――脳血管性認知症

2,セロトニン―――――うつ病

3,ヒスタミン―――――アルツハイマー病

4,アセチルコリン―――――統合失調症

(1,    ドパミンは少ないとパーキンソン病、過剰だと統合失調症。2が正解。3,アルツハイマー病ではアセチルコリンが低下している。)

☆国家試験問題:統合失調症の幻覚や妄想に最も関係する神経伝達物質はどれか。

1,ドパミン

2,セロトニン

3,アセチルコリン

4,ノルアドレナリン

(正解1234はアミンではあるが、カテコールアミンではない。)

☆国家試験問題:神経伝達物質でカテコールアミンはどれか。

1,ドパミン

2,セロトニン

3,γ-アミノ酪酸

4,アセチルコリン

(正解1。)

(4)ホルモン、補酵素の原料

チロシンにヨウ素が結合したものがチロキシン(甲状腺ホルモン)、メラニン(皮膚色素)もチロシンからつくられる。

トリプトファン→ニコチン酸(48ページ図2-28)→補酵素のNADNADP

COOH

CH-NH2

CH2

C8H6N

教科書95ページ

遺伝子の異常による代謝疾患を(              )という。

アミノ酸代謝の異常

フェニルケトン尿症135ページの図7-3の説明)

フェニルアラニンはフェニルアラニン水酸化酵素によりチロシンになる

COOH       COOH

HCNH2      HCNH2

CH2         CH2

  C6H5        C6H4OH

が、この酵素が欠損するとフェニルアラニンが蓄積して

フェニルピルビン酸(フェニルケトン)、フェニル酢酸、フェニル乳酸を生じる。

COOH                                COOH

C=O                   COOH      H-C-OH

CH2                   CH2           CH2

C6H5                    C6H5           C6H5

放置するとチロシンからのメラニンが合成されないため肌が白く、甲状腺ホルモンやカテコールアミンの不足による知能障害が起こる。新生児マススクリーニングで早期発見して低フェニルアラニン食(雪印メグミルクのフェニルアラニン除去ミルク)で育てるとほとんど正常に育つ。

133ページの表7,1のアミノ酸代謝異常)

メープルシロップ尿症(楓糖尿症):分枝アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)が脱アミノした後のα―ケト酸脱水素酵素の欠損によりロイシン、イソロイシン、バリン、α―ケト酸が蓄積する。α―ケト酸が汗、尿に出てメープルシロップの臭いがする。精神遅滞を起こすので分枝アミノ酸抜きの人工乳(国内では雪印メグミルクのみ製造)で育てる。

ホモシスチン尿症:メチオニンからスクシニルCoAに至る途中のホモシスティンがシスティンに変換されず、血中メチオニン、ホモシスチンが上昇して精神遅滞、高身長を起こす。治療はメチオニン除去ミルク(雪印メグ、明治乳業)で育てる。

先天性白皮症:チロシナーゼ欠損でチロシンが分解されてメラニンにならないので皮膚、髪の毛が白くなる。

高アンモニア血症Ⅰ92ページ図4,3-4):尿素回路の入り口でアンモニアがカルバモイルリン酸にならないので血中アンモニアが上昇する。

教科書89ページに戻る

(図4,3-1の説明)まとめ

 

消化管から吸収されたアミノ酸はタンパク質やそれ以外の物質に利用される。

(1)核酸塩基(プリン、ピリミジン)の材料。(100ページの図4,4-2

チロシンのベンゼン環に-OHが付いて-COOHがはずれてドパミン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、エピネフリン(アドレナリン)になる。(135ページの図7-3

グリシンとスクシニルCoA、鉄からヘムが合成される。(96ページの図4,3-7

(2)脱アミノ(-NH2が外れる)されたアミノ基はアンモニアから尿素に変わり尿に排泄。

(3)脱アミノされた炭素骨格がエネルギー合成や糖質、脂質合成の材料に。

(4)DNAのプログラムに沿って特定のタンパク質合成の材料に。

 

6 核酸とヌクレオチド代謝

教科書40ページ

核酸(ポリマー)とヌクレオチド(モノマー)

核酸とは何か

細胞核から見つかった酸性の物質ということで核酸と名付けられた。核酸には(      )と(      )がある。

核酸はヌクレオチド(モノマー)が多数鎖状につながってできたポリマーである。

教科書41ページ

(図2-20の説明)

ヌクレオチドは塩基、糖、リン酸からなる。ヌクレオチドどうしはリン酸と糖の間で結合する。

DNAを構成するヌクレオチドは糖がデオキシリボースであり、塩基はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)である。単糖と書いてあるところを見てください。塩基における炭素原子の番号と区別するため、糖の炭素原子の番号には‘(ダッシュまたはプライムと読む)を付ける。塩基が付いている炭素C11’とする。C22’)に付く-OH-Hになった糖がデオキシリボース。-H-OHより安定している。塩基にはプリン塩基(六角形と五角形)とピリミジン塩基(六角形)がある。注:核酸のプリンはpurine、お菓子のプリンはpuddingで無関係。ウラシルにメチル基がつくとチミンになる。A(アデニン)にはU(ウラシル)またはT(チミン)、G(グアニン)にはC(シトシン)が水素結合する(43ページ図2-22)。

RNA を構成するヌクレオチドは糖がリボースであり、塩基はアデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)である。RNAは不安定で変異しやすい(たとえばコロナウィルスやインフルエンザウイルスはRNAウィルスで変異しやすい。)が、DNARNAの進化形であり安定しているので遺伝情報を伝えるのに適している。

(余談)なぜDNAではウラシルでなくチミンなのか?

チミンはRNAに含まれるウラシルからかなりの手間をかけてメチル基が付加される(103ページ図4,4-5)。なぜ細胞は面倒なチミン合成を行うのか?その謎は「シトシンからアミノ基がとれてウラシルになりやすい」という性質がわかって解決した。これに対してメチル基は取れにくいので安定している。もしDNAの塩基がTでなくUだったらCの脱アミノで生じたUなのかそれとも元はCだったのか見分けられず、変異を誘発しやすい。メチル基が付いたチミンであることがDNAの安定性につながっている。

☆歯科医師国家試験問題:RNAに含まれない塩基はどれか。

1,アデニン

2、ウラシル

3、グアニン

4、シトシン

5、チミン

(答え5。)

教科書42ページ

(            )と(            )

(図2-21の説明)

ヌクレオチドとその誘導体は遺伝以外の場面でいろいろな働きをしている。

(1)アデノシン三リン酸(ATP

+塩基をヌクレオシドという。リボース+アデニンをアデノシンという。

ヌクレオシド+リン酸をヌクレオチドという。アデノシンにリン酸が一つ付いてAMP。二つ付いてADP。三つ付いてATP

ADPATPの高エネルギーリン酸結合にエネルギーを保持している。

(2)サイクリックヌクレオチド:cAMPcGMP

5’のリン酸と3’の酸素が結合して環状構造(サイクリック)になっている。ホルモンや薬剤(第一伝達物質=ファーストメッセンジャー)が細胞に作用するときの第二伝達物質=セカンドメッセンジャーとして働く。

(余談)勃起不全治療剤のバイアグラの仕組み

陰茎海綿体の細胞は性的刺激により一酸化窒素NOを産生する。NOはファーストメッセンジャーとして細胞膜に付いてcGMPの産生を促進する。cGMPはセカンドメッセンジャーとして陰茎海綿体および陰茎動脈の平滑筋の弛緩を起こし、陰茎海綿体の充血と勃起がもたらされる。老化によりcGMPの産生量が低下して勃起の強さや持続時間が弱まる。バイアグラはcGMPを分解するホスホジエステラーゼ5PDE5)の阻害薬でcGMPが分解されずに勃起状態が保たれる。

(3)その他のヌクレオチド:補酵素(ヌクレオチド+ビタミンB群の形)

FAD(フラビン/アデニン/ジヌクレオチド):ADP+リボフラビン

NAD(ニコチンアミド/アデニン/ジヌクレオチド):ADP+ニコチンアミド

NADP(ニコチンアミド/アデニン/ジヌクレオチド/リン酸):NAD+リン酸

補酵素A(CoA)ATP+パントテン酸

教科書43ページ

DNAの構造

(図2-22の説明)

1953年ワトソンとクリックはDNAX線写真による分析や構成成分であるA(アデニン)とT(チミン)、G(グアニン)とC(シトシン)の数の割合がそれぞれ等しいことなどから、DNAの構造モデルを提唱した。これは、DNAA,T,C,G4種類の塩基をもつヌクレオチドが多数連なった(  )本の鎖からなり、この鎖はATGCがそれぞれ対になって(    )的に結合し、(          )構造をとっているというものである。

糖(デオキシリボース)の5’炭素にリン酸が付いてそれが次の糖の3’炭素につながる。二本のDNA鎖が逆向きに(5’3’3’5’)並んでいる。

CGの間に三本の水素結合(…が水素結合)

NHOC

NHN-、

C=OHN

ATの間に二本の水素結合

COHN

NH…N-、

教科書44ページ

(図2-23の説明)

らせん状に巻いているので二重らせん構造という。

細胞分裂の時に一本鎖に分かれてそれぞれ複製される。

☆医師国家試験問題:DNAの三次元立体構造と役割の解明に貢献したのはだれか。

1,ダーウィン

2,マックリントック

3,メンデル

4,モノ―

5,ワトソン

(正解5。)

DNAの性質

加熱すると塩基対の水素結合が切れて2本鎖がほぐれて1本鎖になる。

この性質は親子鑑定に使われる。父母の血液を採取してDNAPCRで増幅して制限酵素で切断して電気泳動する。ここに子供のDNAが付くと判定できる。

教科書45ページ

RNAの構造

(図2-24の説明)

DNAと違って一本鎖である。

核内でDNAからメッセンジャー(伝令)RNA(mRNA)に遺伝情報が転写されて、核の外に出てリボソームRNA(rRNA)と蛋白が結合したリボソームの中でトランスファー(転移=運搬)RNA(tRNA)が運んできたアミノ酸に翻訳されて蛋白が合成されてゆく。

(余談)

新型コロナウイルスワクチンはmRNAを脂質膜で囲んだもの。筋肉内に注射すると筋細胞のリボソームにmRNAが取り込まれてウイルスタンパク質を産生して、そのタンパク質に対する免疫反応が起こる。mRNAなので核に取り込まれるわけではない。

教科書99ページ

核酸・ヌクレオチドの代謝

教科書100ページ

ヌクレオチド代謝の役割と概要

(図4,4,-1の説明)

モノマーの(            )が連なってポリマーの(    )になる。

アミノ酸とリボース5-リン酸とCO2よりリボヌクレオチドが新規合成される。細胞内伝達のセカンドメッセンジャー(cAMP, cGMP)、エネルギーの貯蔵(ATP, GTP)、補酵素(NAD, FAD)としての役割。リボヌクレオチドが多数つながって(      )となる。リボヌクレオチドは還元されて安定した形のデオキシリボヌクレオチドとなり多数つながって(      )になる。ヌクレオチドは分解されて再利用されたり分解排泄される。プリン塩基が分解されると尿酸となり尿中に排泄される。(尿酸は水に溶けにくいので産生が増加したり腎臓の機能が低下して排泄が悪くなると関節や腎臓に沈着して痛風の原因となる。)

☆国家試験問題:最終代謝産物に尿酸が含まれるのはどれか。

1,核酸

2,リン脂質

3,中性脂肪

4,グルコース

5,コレステロール

(正解1)

ヌクレオチドの合成

(図4,4,-1の説明)

プリン塩基の材料:グリシン、アスパラギン酸、グルタミン、CO2

ピリミジン塩基の材料:アスパラギン酸、グルタミン、CO2

リボース5-リン酸はペントースリン酸回路から。

教科書101ページ

(                  )の合成

(1)新規合成経路:リボース5-リン酸にリン酸が付いてホスホリボシルピロリン酸(PRPP)ができる。PRPPを土台にアミノ酸やCO2が付いてIMP(イノシン酸)となり、そこにアミノ基が付いて(ここを阻害するのが抗がん剤のアザチオプリン)AMPGMPが出来上がる。

(2)再利用経路:プリン塩基がPRPPと結合することによって再利用される。

(追加)(                      )の合成

プリン塩基の時と同様にPRPPを土台にしてまずウラシル-TPができてそこにアミノ基が付いてシトシン-TPができる。チミンはその後結構な手間をかけてメチル基が付いてできる(図4,4-5)。

ヌクレオチドの分解

教科書102ページ

(図4,4-4の説明)

プリンヌクレオチドからリン酸が除かれてアデノシン、グアノシンになる。アデノシンはADA(アデノシンデアミナーゼ)によりイノシンになる。(アデノシンデアミナーゼ欠損症では細胞にdATPがたまり、dATPの毒性が免疫細胞のT細胞に強く出るため重症複合型免疫不全症を発症する。)その後ヒポキサンチン→キサンチン、グアニン→キサンチンに集約されて、(                      )により(    )ができる。尿酸結晶が関節に蓄積すると炎症を起こして(    )を発症する。治療薬のアロプリノールはキサンチンオキシダーゼ抑制剤である。

先天性代謝異常のレッシュ・ナイハン症候群133ページの表7,1)はヒポキサンチン、グアニンを再利用するためのHGPRT(ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素が欠損していてプリン塩基が再利用されない。プリン塩基が再利用されない結果PRPPが増加してプリンヌクレオチドの新規合成が促進されて尿酸産生が増加する。乳児期の早期から哺乳異常、発育不良、1歳ごろから不随意運動、2歳ごろに自傷行為が現れる。高尿酸血症により腎機能低下、尿路結石を起こす。

ピリミジンヌクレオチドはCO2, H2O, NH3まで分解されて排泄される。

☆国家試験問題:痛風の患者の血液検査データで高値を示すのはどれか。

1, 尿酸

2, 尿素窒素

3, アルブミン

4, トリグリセリド

(正解1。)

☆歯科医師国家試験問題:プリン体の代謝産物はどれか。

1,乳酸

2、尿酸

3、リン酸

4、ビリルビン

5、サイログロブリン

(答え2。)

(余談)イカはADA欠損症

活きたイカが元気に泳ぐのはATPを豊富に産生しているからだが、イカが死ぬとATPを合成できないためどんどん分解されてATPADPAMPとなる。カツオやさばでは、この次にADAによってAMPIMP(旨味成分)に変わっておいしくなる。活きている魚や釣りたての魚が美味しくないのはまだIMPができていないから。イカはADAを持たないため魚と同じ旨味成分はできないがイカもある程度時間をおいてからの方がおいしくなるのはイノシン酸になれなかったAMPがイカの旨味だから。

教科書103ページ

抗がん薬と免疫抑制薬の作用

がんはDNA複製の制御ができなくなって細胞が異常に増殖する状態であるのでがん細胞のDNA合成を阻害する薬は(        )になる。

(図4,4-5の説明)

CDPdCTPdCMP→)dUMP→ここで葉酸を介して-CH3が付いてdTMP(ここを阻害するのが抗がん剤の5-フルオロウラシルとメトトレキサート)→dTTPDNAに入る。

ピリミジンヌクレオチドのdUMPdTMPを進めるチミジル酸合成酵素を阻害する5-フルオロウラシル(FU)とここでのメチル基を運ぶ葉酸のジヒドロ葉酸還元酵素を阻害するメトトレキサート。がん細胞のだけでなく正常細胞のDNA合成も抑制する。特に細胞増殖が盛んな部分が影響を受けやすい。骨髄は赤血球、白血球、血小板を作っているので貧血、白血球減少、出血傾向が起こる。毛包の細胞分裂が抑制されると脱毛、腸粘膜の合成が抑えられると下痢の副作用が出る。

(図4,4-3に戻って)

プリンヌクレオチドのIMPAMP, GMPを阻害するアザチオプリンはリンパ球の増殖も抑制するので(          )として使われる。メトトレキサートも自分の関節を攻撃するリンパ球増殖を抑制して関節リウマチの治療に使われている。

☆国家試験問題:骨髄抑制が出現するのはどれか。

1,麻薬

2,利尿薬

3,抗がん薬

4,強心薬

(正解3。)

☆国家試験問題:抗がん薬による骨髄機能抑制症状はどれか。

1嘔吐

2脱毛

3下痢

4歯肉出血

(正解4。骨髄での血小板産生が少なくなって止血作用が抑制される。)

☆国家試験問題:抗がん薬の副作用(有害事象)である骨髄抑制を示しているのはどれか。

1嘔吐

2下痢

3神経障害

4,白血球減少

(正解4。)

教科書113ページ

遺伝情報

教科書114ページ

DNA:遺伝情報を担う物質

(図6-1の説明)

DNAに遺伝情報が記録されていて、そこからRNAやタンパク質がつくられる。例外として一部のウイルス(HIV、インフルエンザ、コロナ)ではRNAに遺伝情報が保存されている。

DNAの構造

教科書115ページ

(図6-2の説明)

真核生物ではDNAは核内にコンパクトに折りたたまれている。

DNAは(        )というタンパクの周囲を巻き付いて(              )という形になる。さらにコイル状になったものを(          )という。細胞分裂時以外はこの形で核全体に広がっている。細胞分裂時にはさらに凝縮して(      )として現れる。ヒトでは46本(23対)ある。

(追加)染色体について

人の細胞の染色体は常染色体22対(44本)と性染色体1対(2本)(男性XY女性XX)の合計46本から構成される。男性は44+XY、女性は44+XX。生殖細胞は減数分裂で半分になり精子は常染色体22+性染色体Xまたは22+Y、卵子は22+X。生殖細胞の23本の染色体に記録された遺伝情報を(      )という。

 受精の時に卵子にXを持った精子が受精すれば女の子、Yを持った精子が受精すれば男の子になる。

☆国家試験問題:ヒトの精子細胞における染色体の数はどれか。

122

223

344

446

22+Xまたは22+Yだから23本の2が正解。)

☆国家試験問題:精子の性染色体はどれか。

1X染色体1種類

2XY染色体1種類

3X染色体とY染色体の2種類

4XY染色体とXX染色体の2種類

(正解3。)

☆国家試験問題:ヒトの染色体と性分化で正しいのはどれか。

1,常染色体は20対である。

2,女性の性染色体はXYで構成される。

3,性別は受精卵が着床する過程で決定される。

4,精子は減数分裂で半減した染色体を有する。

(1×22対である。2×XXである。3×受精の時である。4〇)

☆国家試験問題:配偶子の形成で正しいのはどれか。

1,卵子の形成では減数分裂が起こる。

2,精子の形成では極体の放出が起こる。

3,成熟卵子はXまたはY染色体をもつ。

4,精子は23本の常染色体と1本の性染色体をもつ。

(1〇。2×卵子の形成で極体の放出が起こる。3×卵子はX染色体のみ。4×22本の常染色体と1本の性染色体。)

☆歯科医師国家試験問題:ヒト染色体で正しいのはどれか。

1,体細胞では44本ある。

2,卵子はY染色体をもつ。

3,数の異常は致死的である。

4、細胞の分裂間期でみられる。

5, DNAとタンパク質とからなる。

(答え5。)

☆歯科医師国家試験問題:ヒト体細胞の常染色体数はどれか。

122

223

344

4,46

5,47

(答え3。)

遺伝情報の保存と発現

教科書116ページ

(図6-3の説明)まずはこの図だけが頭の中に入れば国家試験問題が解ける。中心教義(セントラルドグマ)と言われている。

遺伝情報の保存:DNAの(    )

遺伝情報発現:DNAmRNAへの(    )

mRNA→タンパク質への(    )。

☆歯科医師国家試験問題:セントラルドグマはどれか。

1RNADNA→タンパク質

2RNA→タンパク質→DNA

3DNA→タンパク質→RNA

4DNARNA→タンパク質

5DNADNA→タンパク質

(答え4。)

☆国家試験問題:遺伝子について正しいのはどれか。

1RNAの塩基配列に基づきアミノ酸がつながることを転写という。

2DNAの遺伝子情報からmRNAがつくられることを翻訳という。

3DNA1本のポリヌクレオチド鎖である。

4DNAは体細胞分裂の前に複製される。

(1×転写でなく翻訳。2×翻訳でなく転写。3×1本でなく2本。4〇)

☆国家試験問題:遺伝について正しいのはどれか。

1,遺伝子の本体はRNAである。

2,転写とはタンパク質合成のことである。

3,ヒトの染色体は2244本である。

4,遺伝子とは遺伝情報を伝える基本単位である。

(1×RNAでなくDNA。2×転写でなく翻訳。3×2346本である。4〇)

これから詳しいことを学ぶ。

DNAの複製:遺伝情報のコピー

教科書117ページ

(図6-4の説明)

まず(                )により二本鎖DNAがほどける。

そしてそれぞれの鎖を鋳型にして各塩基に相補的な塩基を持ったデオキシリボヌクレオチドが結合していく。

(図6-5の説明)

さらに(                  )によって隣り合ったヌクレオチドどうしが結合してデオキシリボースの5´→3´方向に新しい鎖が合成されていく。DNAポリメラーゼは正確にDNAを複製する酵素なので、アメリカの大学の生化学研究室で几帳面な人へのほめ言葉として「あなたの正確な仕事はまるでDNAポリメラーゼ並みね。」などと使われるそうである。

教科書118ページ

(図6-6の説明)

このようにして生じた新しい2本鎖DNAのうち1本は鋳型となったもとの鎖で、1本だけが新しく合成された鎖である。このような複製を(            )という。

(図6-7の説明)

(          )は複数存在する。DNA1mもあるので、1か所ずつでは間に合わないから。

DNAが損傷を受けても修復する機構がある。色素性乾皮症ではこの機能が低下していて、日光が皮膚に当たると異常に強い紅斑や水疱が発生し、火傷のようになってしまう。損傷を受けたDNAが修復されないために皮膚がんになりやすい。

☆歯科医師国家試験問題:ヒトのDNAで正しいのはどれか。2つ選べ。

1RNAの逆転写で合成される。

2,プリン塩基は尿酸へ異化される。

3,塩基間の結合は共有結合である。

4,アデニンとウラシルの含量は等しい。

5、損傷を受けると修復する機構がある。

(答え251RNAウイルスで行われる。3は水素結合。4はアデニンとチミン、シトシンとグアニンの量が等しい。)

DNAからmRNAへの転写:遺伝情報の読み取り

RNAには三種類ある。

(1)(        )はリボソームの構成成分。

(2)(        )はアミノ酸の運搬をする。

(3)(        )はDNAから転写されてできる。

転写反応

教科書119ページ

(図6-8の説明)

転写は(                  )により行われる。鋳型となった鎖を(       )、それに相補的な鎖を(        )という。

DNAがほどけたところにRNAポリメラーゼによりmRNAがつながっていく。

転写の基本的な機構

教科書120ページ

(図6-9の説明)

転写は酵素がDNA上の開始部位(            )に結合して始まる。この時転写因子がDNAの(            )に結合すると転写が促進され、(            )に結合すると転写が抑制されて調節されている。

転写されたばかりのRNAhn(ヘテロ核)RNAという。5’側に(            )が付く。これはリボソームを引き寄せる作用がある。

遺伝子にはタンパク質に翻訳される部分(        )とタンパク質にならない部分(          )があり、hnRNAのイントロンが除かれてエクソンの部分のみとなることを(              )という。最後に(            )(mRNAの卒業証書のようなもの)が付いてmRNAが完成する。

(余談その1)毒キノコのタマゴテングダケの毒であるαアマニチンはRNAポリメラーゼを阻害してDNAからmRNAへの転写を阻害する。

(余談その2)スプライシングの異常による疾患に地中海性貧血(βサラセミア)がある。βグロビン遺伝子のイントロンに変異があり、それによってmRNAのスプライシングに異常が起こり正常なヘモグロビンが形成されず貧血を招く。

☆歯科医師国家試験問題:正しいのはどれか。

1DNAはウラシル塩基をもつ。

2RNAはデオキシリボースをもつ。

3、核内のmRNAはイントロンをもつ。

4,アデニンはグアニンと相補性をもつ。

5, 原核細胞のmRNAはポリAをもつ。

(答え35のポリAは真核細胞のみ。)

遺伝子発現の調節

教科書121ページ

(図6-10の説明)

受精卵はすべての遺伝情報を持っていてその後内臓によって(    )していく。分化の進んだ細胞でも細胞内に含まれる遺伝情報は受精卵と同じである。細胞によってそれぞれどの部分が転写されるのか(          )は緻密な制御を受けている。このような制御を(                     )という。

教科書122ページ

RNAからタンパク質への翻訳:遺伝情報の解読

教科書123ページ

(図6-11の説明)

6-9の続き。核内で完成したmRNAは核膜孔を通って細胞質に出てリボソームに付着する。細胞質中には特定のアミノ酸と結合したtRNAがある。mRNAの塩基配列に相補的な塩基をもったtRNAmRNAのところまでアミノ酸を運んでくる。mRNAの隣り合う3つの塩基が遺伝暗号となり、1つのアミノ酸に対応する。このような3つで1組の塩基をトリプレットといい、特にmRNAのトリプレットを(      )という。また、このコドンに相補的な塩基をもったtRNAのトリプレットを(            )という。運ばれてきたアミノ酸どうしは順次ペプチド結合してペプチド鎖となる。

(余談)リボソームは大小2つのサブユニットから成る。遠心機にかけたときの沈降速度によって名づけられている。沈降速度を測るのに使われる単位はスベドベリ(略してS)。遠心機の発明者Svedbergにちなんで名づけられた。Sの値が大きいほど沈降速度は速く分子も大きい。リボソームは真核生物と原核生物で大きさが違う。細菌などの原核生物では大きいサブユニットの沈降速度は50スベドベリ単位なので50Sサブユニット、小さいサブユニットは30Sサブユニットと呼ばれる。原核生物のリボソームは丸ごとで70Sサブユニットと呼ばれる。70S50S30Sの合計よりも小さいのは沈降速度が形と大きさの両方で決まり、正確な質量を表すわけではないからである。真核生物のリボソームは少し大きく、40S60S のサブユニットからなり、全体では80Sリボソームとなる。抗生物質のミノサイクリンは細菌の70SリボソームでのmRNAtRNAの接触を妨げる。80Sリボソームには作用しないので人体への影響はない。

tRNAの構造。アミノ酸との結合部位の反対側にmRNAのコドンと対応するアンチコドンを持つ。アミノ酸とtRNAを結合させるにはアミノアシルtRNA合成酵素が必要である。20種類のアミノ酸に対応するように、この酵素も20種類ある。

教科書124ページ

遺伝暗号(コドン)

(図6-12の説明)

もしmRNAの塩基が1つでアミノ酸に対応する遺伝暗号となるのであれば、塩基はA, U, G, C4種類しかないので暗号も4種類で、たった4種類のアミノ酸しか指定できないことになる。また、2つの塩基で1つのアミノ酸を指定する遺伝暗号だとしても4416種類のアミノ酸しか指定できない。しかし、3つの塩基で1つのアミノ酸を指定する暗号であれば44464種類の(        )が可能で、20種類のアミノ酸を十分指定できることになる。19551966年にかけて64種類の暗号がすべて解明された。

(表6-1の説明)

遺伝暗号(コドン)の読み方の練習

①遺伝暗号表を見てmRNAのコドンがGAUに対応するアミノ酸は何か?

 1番目の塩基がGである一番下の欄を右に見ていき、2番目の塩基がAである左から3番目の塩基の欄で止まり、3番目の塩基がUである一番上のアスパラギン酸が該当するアミノ酸となる。

DNAの鋳型鎖の塩基配列ATAから転写されて生じるアミノ酸は何か?

 ATAを転写するとUAU、これを遺伝暗号表から読むとチロシンとなる。

③トリプトファンと結合しているtRNAのアンチコドンの塩基は何か?

 トリプトファン(Trp)を遺伝暗号表から探すとmRNAのコドンはUGGとわかる。tRNAはこのUGGに相補的な塩基を持つのでACCがアンチコドンの塩基配列となる。

④ロイシンを指定するコドンは何通りあるか?

遺伝暗号表中のLeuを探すと1番目の塩基がUCのところにUUA, UUG, CUU, CUC, CUA, CUG6通りある。

    フェニルアラニン・イソロイシン・セリンというペプチドを指定するmRNAの塩基配列は何通りあるか?

 フェニルアラニンはUUU, UUC2通り、イソロイシンはAUU, AUC, AUA3通り、セリンはUCU, UCC, UCA, UCG, AGU, AGC6通りあるので、全部で2×3×636通りとなる。

☆歯科医師国家試験問題:鋳型DNATAC-CTC-TTAから合成されるペプチドはどれか。(mRNAの暗号表付き)

1,チロシン―アラニン―システィン

2,チロシン―ロイシン―ロイシン

3,メチオニン―グルタミン酸―アスパラギン

4,メチオニン―グルタミン―アスパラギン酸

5、メチオニン―グルタミン―アスパラギン

(このDNAから転写されるmRNAの塩基配列はAUG-GAG—AAU。暗号表より答え3。)

☆歯科医師国家試験問題:CCUをアンチコドンにもつtRNAが運搬するアミノ酸はどれか。(mRNAの暗号表付き)

1,リシン

2、グリシン

3、プロリン

4、ヒスチジン

5、イソロイシン

(答え2CCUに対するmRNAのコドンはGGAだからグリシン。)

教科書125ページ

翻訳(タンパク質合成)の過程

(図6-13の説明)

AUGはメチオニンを指定するコドンであると同時に翻訳の開始を意味する開始コドンでもある。mRNA のなかで最初に登場するAUGの部分から翻訳が始まる。2回目以降に登場したAUGはメチオニンを指定するだけのコドンとして働く。一方UAA, UAG, UGAの3種類は終止コドンと呼ばれ、その部分にはアミノ酸は対応せず。翻訳はその手前で終わる。

できたタンパク質はこの後ゴルジ体で修飾を受けて完成。エクソサイトーシスで細胞外に放出される。

(余談)新型コロナウィルスのワクチンはmRNAワクチンである。ウィルスのタンパク質をつくる遺伝情報をもつmRNAを壊れにくくするためにポリエチレングリコールに包んでいる。投与すると、細胞に取り込まれてリボソーム内でウイルスタンパク質の一部がつくられて細胞外に出る。その後、そのタンパク質に対する免疫反応が起き、ウィルスに対する抗体などの獲得免疫が備わる。

☆国家試験問題:遺伝で正しいのはどれか。

1,細胞は器官によって異なる遺伝情報を持つ。

23つの塩基で1種類のアミノ酸をコードする。

3,動物と植物のDNAは異なる塩基を持つ。

4,遺伝情報に基づき核内でタンパク合成が行われる。

(1×どの細胞も同じ。2〇。3×地球上のすべて生物に共通。4×細胞質に出てリボソームで行われる。)

☆国家試験問題:遺伝子について正しいのはどれか。

1DNAは体細胞分裂の前に複製される。

2DNA1本のポリヌクレオチド鎖である。

3DNAの遺伝子情報からmRNAが作られることを翻訳という。

4RNAの塩基配列に基づきアミノ酸がつながることを転写という。

(1〇。2×2本鎖である。3×転写である。4×翻訳である。)

☆国家試験問題:遺伝で正しいのはどれか。

1,細胞は器官によって異なる遺伝情報を持つ。

23つの塩基で1種類のアミノ酸をコードする。

3,動物と植物のDNAは異なる塩基をもつ。

4,遺伝情報に基づき核内でタンパク合成が行われる。

(1,    同じ個体の細胞はすべて同じ遺伝情報を持つ。2が正解。3,地球上の生物のDNAの塩基はすべてA,T,C,Gで同じ。4,細胞質のリボソームで行われる。)

☆国家試験問題:核酸で正しいのはどれか。

1mRNAがアミノ酸をリボソームへ運ぶ。

2DNA1本のポリヌクレオチド鎖である。

3DNAには遺伝子の発現を調節する部分がある。

4RNAの塩基配列によってアミノ酸がつながることを転写という。

1,アミノ酸を運んでいるのはtRNA22本鎖である。3,正解。4,翻訳である。)

教科書126ページ

RNAの研究が進んでmRNAtRNArRNA以外の働きがあることが分かってきた。ncRNAmiRNAが転写や翻訳の調節をしていて発生・分化などの生理現象やがんなどの病的現象での制御が研究されている。

7回 先天性代謝異常、ビタミン、酵素

教科書126ページ

遺伝子の変化

親から子へ遺伝する病気を(      )という。遺伝子の異常による疾患を(          )という。ある病気が発生しやすい家系があり、発症前から予測できることがある。

たとえばHBOC(遺伝性乳癌卵巣癌症候群)では原因遺伝子としてBRCA1(第17染色体にある)、BRCA2(第13染色体にある)。これらの遺伝子の変異により乳癌、卵巣癌、男性では前立腺癌の発生率が高まる。遺伝学的検査により診断される。予防的切除を受ける場合がある。

教科書127ページ

(図6-14の説明)

環境的な要因でDNAが損傷を受けて修復されずに変化が残ってしまう場合をDNAの(        )という。

教科書128ページ

(図6-15の説明)

①ナンセンス変異:塩基の変化で終止コドンになってそこでタンパク質合成がストップ。

②ミスセンス変異:塩基の変化でアミノ酸が変化。

③欠失:塩基が欠失してアミノ酸の3つの枠がずれてしまう。

④挿入:塩基が挿入されてアミノ酸の3つの枠がずれてしまう。

⑤サイレント変異:3つ目の塩基の変化ではアミノ酸に影響しないことがある。たとえばCCU, CCC, CCA, CCGはいずれもプロリンを指定するコドン。

スプライシング異常でβサラセミア、レッシュナイハン症候群、血友病(血液凝固因子の欠損)神経変性疾患(脊髄性筋萎縮症、前頭側頭痴呆症)、がん(骨髄異形成症候群)

遺伝子変異が(      )だけでなく(        )に起こった場合は子孫に伝わることもある。

遺伝子疾患

(1)(            ):染色体の数の異常。正常の人の染色体は22対(44本)の常染色体と1対(2本)の性染色体の合計46本から構成される。男性は44+XY、女性は44+XX。常染色体の対(ペア)には大きい順に1番から22番まで番号が付いている。生殖細胞は精子は常染色体22+性染色体Xまたは22+Y、卵子は22+Xのみ。

異常型:ダウン症候群(第21番染色体が3本ある、3本あることをトリソミーという)ターナー症候群(性染色体がX1本だけしかない)クラインフェルター症候群(性染色体がX1本多いXXY

☆国家試験問題:先天異常で正しいのはどれか。

1,ダウン症候群は染色体の構造の異常が原因である。

2,正常な常染色体数は2346本である。

3,フェニルケトン尿症は先天性の代謝異常である。

4,クラインフェルター症候群は性染色体の欠損である。

(1×数の異常、2×常染色体は2244本、3〇、4×性染色体のX1本多い)

☆国家試験問題:ダウン症候群を生じるのはどれか。

113トリソミー

218トリソミー

321トリソミー

4,性染色体異常

(正解3。)

(2)(            ):ある1つの遺伝子、つまり1つの酵素の異常。フェニルケトン尿症などの先天性代謝異常

(3)(        ):いくつかの遺伝子と環境要因による。糖尿病、高血圧など体質的に発生しやすい人とたくさん食べても大丈夫な人がある。

教科書129ページ

遺伝情報の初期化とiPS細胞

受精卵(精子+卵子)はすべての細胞に分化できる多能性を持っている。もし、自分の細胞を初期化してからたとえば腎臓に分化させることができれば腎移植で拒絶反応が起きない。細胞を初期化する方法を見つけ出したのが山中伸弥先生。初期化された細胞がiPS細胞。

(          )・(          )と看護学的課題

(図6-16の説明)

世界最初の遺伝子治療はADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症(102ページ図4,4-4参照)の治療。酵素そのものを点滴投与する以外に患者のリンパ球にADA合成遺伝子を組み込んで体内に戻す遺伝子治療が行われている。

教科書131ページ

先天性代謝異常

教科書132ページ

(              )の概念

(図7-1の説明)

遺伝子(DNA塩基配列)の変異→mRNA異常→タンパク質(酵素、受容体、その他)の異常

早期発見のための(                        ):生後4〰7日目のすべての新生児に行う。足の裏からごく少量の血液をとり、ろ紙にしみこませ、検査施設に郵送する。1977年から6疾患、2011年より19疾患。2018年より20疾患。

教科書133ページ

(表7-1の説明)

アミノ酸代謝異常(第五回講義)

フェニルケトン尿症(p135)、メープルシロップ尿症(p134)、ホモシスチン尿症、先天性白皮症(p135)、高アンモニア血症(p92)

糖質代謝異常(第三回講義)

糖原病Ⅰ(p70)、ガラクトース血症(p67,133)

内分泌異常(第二回講義)

先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎皮質過形成症

脂質代謝異常(第四回講義)

テイ・サックス病(p34)、ニーマン・ピック病(p33)、ゴーシェ病(p34)

その他(第六回講義)

レッシュ・ナイハン症候群(p102)、鎌状赤血球貧血(p136

酵素異常による発症のメカニズム

教科書134ページ

(図7-2の説明)

(1)中間代謝物の蓄積:メープルシロップ尿症、高アンモニア血症、(      )

(2)生成物の欠如:(            )(チロシナーゼ欠損によるメラニン減少)

(3)異常代謝物質の蓄積:(                  )

(4)蓄積物質による別の代謝酵素の促進または阻害:(                      )におけるPRPP増加によるプリンヌクレオチド合成の促進。

教科書135ページ

(図7-3の説明)

フェニルケトン尿症135ページの図7-3):

フェニルアラニンはフェニルアラニン水酸化酵素によりチロシンになるが、この酵素が欠損するとフェニルアラニンが蓄積して

フェニルピルビン酸、フェニル酢酸、フェニル乳酸を生じる。

放置するとチロシンからのメラニンが合成されないため肌が白く、甲状腺ホルモンやカテコールアミンの不足による知能障害が起こる。新生児マススクリーニングで早期発見して低フェニルアラニン食で育てるとほとんど正常に育つ。フェニルアラニン除去ミルク(雪印メグミルク)を使う。

☆国家試験問題:先天性疾患で正しいのはどれか。

1,フェニルケトン尿症は遺伝病である。

2,口唇口蓋裂は単一遺伝疾患である。

3,近親婚はターナー症候群の発生頻度を高くする。

4,ダウン症候群は13番染色体のトリソミーである。

(正解1。2は多因子型。3は染色体の数の異常。4は21番染色体のトリソミー。))

☆国家試験問題:知的障害(精神遅滞)の原因となる疾患はどれか。

1,統合失調症

2,フェニルケトン尿症

3,アルツハイマー病

4,クロイツフェルト・ヤコブ病

(生まれつきの疾患は2のみ。1,3,4は成長後の疾患で今後学びます。)

教科書136ページ

受容体の異常

(                          )はLDL受容体の欠損によりコレステロールの細胞内取り込みができない。

その他のタンパク質の異常

(              )は第11染色体のヘモグロビンβ鎖の6番目のアミノ酸がグルタミン酸からバリンに変わっている。赤血球が鎌状になり貧血をきたしやすいがマラリア原虫が侵入しにくいのでマラリア流行地では有利なこともある。

(          )(地中海貧血):グロビン遺伝子のイントロンに変異があり、それによってmRNAのスプライシングに異常が起こり正常なヘモグロビンが形成されず貧血を招く。

これらタンパク質の構造の異常による病気を(      )という。

 

教科書45ページ

(        )vita(生命)+amine(アミン)

脚気は脚のしびれと心不全を起こし、ついには死につながる疾患である。日本では米を精米して洗って食べる習慣により江戸時代に流行した。1910年鈴木梅太郎先生が米糠からビタミンB1を抽出してオリザニンと名付けた。1911年ポーランドのフンクも米糠の中から脚気に有効な成分を発見し、1912年「生命に重要なアミン」という意味の(       )と名付けた。その後発見されたビタミンの中にはアミン以外の構造のものもあり、水溶性と脂溶性に大きく分けられる。

教科書46ページ

まずビタミン全体をざっと見渡して国家試験問題を解いてみる。

(表2-5の説明)

水溶性ビタミン:B群(B1からB12まである)とC

過剰にとりすぎても水溶性なので尿中へ排泄されるため副作用はない。欠乏が問題。

B1の欠乏で脚気、ウェルニッケ脳症、代謝性アシドーシス

B12の欠乏で巨赤芽球性貧血(鉄剤が効かないので悪性貧血とも言われた。)

Cは抗酸化作用。これの欠乏で壊血病

(表2-6の説明)

脂溶性ビタミン:ADEK(アデックと覚える)

とりすぎると吸収されやすく尿中に排泄されないため過剰症を起こす。

Aの欠乏で夜盲症。過剰症で脱毛、胎児奇形。

Dの欠乏でカルシウム吸収の抑制で小児のくる病、成人では骨軟化症。過剰症で高カルシウム血症、軟組織の石灰化。

Eは抗酸化作用。欠乏で(マウスの)不妊症、動脈硬化症。過剰症で下痢や骨粗しょう症。

Kは血液凝固因子。新生児で欠乏しやすい。欠乏で消化管出血。

☆国家試験問題:水溶性ビタミンはどれか。

1,ビタミンA

2,ビタミンC

3,ビタミンD

4,ビタミンE

5,ビタミンK

(答え一発2。)

☆国家試験問題:ビタミンと生理作用の組合せで正しいのはどれか。

1ビタミンA―――――嗅覚閾値の低下

2ビタミンD―――――鉄吸収の抑制

3ビタミンE―――――脂質の酸化防止

4ビタミンK―――――血栓の溶解

(1×不足すると夜盲症。2×カルシウム吸収の促進効果。3〇。4×血液凝固に必要。)

☆国家試験問題:ビタミンと欠乏症の組合せで正しいのはどれか。

1,ビタミンB1―――――ウェルニッケ脳症

2,ビタミンC―――――脚気

3,ビタミンD―――――新生児メレナ

4,ビタミンE―――――悪性貧血

(正解1。)

☆国家試験問題:ビタミンの欠乏とその病態との組合せで正しいのはどれか。

1,ビタミンA―――――壊血病

2,ビタミンB1―――――代謝性アシドーシス

3、ビタミンC―――――脚気

4、ビタミンD―――――悪性貧血

5,ビタミンE―――――出血傾向

ビタミンB1はピルビン酸脱水素→アセチルCoAを触媒するピルビン酸脱水素酵素の補酵素になるので不足するとピルビン酸→乳酸が進んで血液が酸性に傾く。)

ビタミンについて覚えるべきことはここまで。この後は気軽に。

教科書47ページ

水溶性ビタミン:補酵素作用

(1)ビタミンB1(チアミン)図2-25:基質からCO2を抜き取る酵素の補酵素。

一番有名なのはピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸からCO2を抜いてアセチルCoAにする酵素)の補酵素。

2-オキソグルタル酸脱水素酵素(α-ケト酸からCO2を抜いてスクシニルCoAにする酵素)の補酵素。

分枝アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)からCO2を抜いて~CoAにする酵素の補酵素。

ペントースリン酸回路のリボース5-リン酸にケトン基を移して解糖系に戻す酵素の補酵素。

胚芽に多く含まれているので白米に依存しすぎたり、食物をとらずにアルコールのみを摂取しているとアルコールはビタミンB1の吸収を阻害するので欠乏する。神経細胞における糖質代謝に支障をきたし脚がしびれて脚気となる。重篤になると心臓における糖質代謝にまで影響して心不全をきたす。ウェルニッケ脳症では意識障害、体のふらつきが起こる。

☆国家試験問題:アルコールを多飲する人によくみられ、意識障害、眼球運動障害および歩行障害を特徴とするのはどれか。

1, 肝性脳症

2, ペラグラ

3, ウェルニッケ脳症

4, クロイツフェルト・ヤコブ病

(正解3。)

☆医師国家試験問題28歳の女性。全身倦怠感の増強を主訴に来院した。1週間前に自宅近くの診療所で妊娠と診断された。5日前から悪心と嘔吐とが出現し、自宅で経過をみていたが改善せず、食事摂取が困難になった。超音波検査で子宮内に胎嚢と心拍動を有する胎芽とを認める。血液所見:赤血球430万、Hb14.8g/dL, Ht46%, 白血球12100、血小板32万。輸液を行うこととした。輸液に加えるべきものはどれか。

1,ビタミンB1

2, ビタミンB2

3,ビタミンB6

4,ビタミンB12

5,ビタミンC

(正解1。食事摂取困難による輸液なので栄養補給が目的であり、通常はグルコース主体の輸液を行う。グルコースの解糖ではビタミンB1が必要であり、不足しやすく不足すると重症化しやすい。)

(2)ビタミンB2(リボフラビン)図2-26:水素や電子の受け渡しに関与する補酵素。

FMNは電子伝達系でNADHから電子を受け取り補酵素Qに渡す。

FADの成分。クエン酸回路でのコハク酸脱水素酵素の水素を運ぶ補酵素。コハク酸+FAD⇔フマル酸+FADH2

教科書48ページ

(3)ビタミンB6(ピリドキシン)図2-27:ピドキサールリン酸に変化してアミノ基を運ぶ。アミノ基が付くとピリドキサミンになる。脱炭酸反応にも関与。アミノ酸の脱炭酸により神経伝達アミンができるのでB6の欠損は神経症状が出る。

グリコーゲンホスホリラーゼの補酵素でもある。

スフィンゴ脂質の合成分解の時の補酵素でもある。

(4)ナイアシン(ニコチン酸)図2-28:乳酸脱水素酵素やリンゴ酸脱水素酵素などの水素原子を運ぶ補酵素のNADの成分。グルコース6リン酸脱水素酵素、HMGCoA還元酵素、薬物代謝酵素の補酵素NADPの成分。欠乏症はペラグラ。ペラグラはイタリア語で「皮膚のかゆみ」という意味。ナイアシンはアミノ酸のトリプトファンからも合成されるが、トウモロコシにはナイアシンもトリプトファンも含まれないためトウモロコシに食事が偏るとペラグラを来す。

(余談)NADNADPの違い:NADPNADより1個リン酸が多く、NADPHの形で高エネルギー電子を使ってエネルギーに富んだ生体分子を生産する合成反応(同化)に関わることが多い。一方NADはエネルギーに富んだ食物分子を酸化してATPを生産する反応(異化)に関わっている。

(5)パントテン酸(図2-29):補酵素Aの成分。結合した物質を活性化して分解されやすい形にする。

アセチル基に付いてアセチルCoA(活性酢酸)となる、

脂肪酸に付いてアシルCoA(活性脂肪酸)など。

(6)ビオチン(図2-30):COOHを付ける反応の補酵素。

糖新生の時のピルビン酸(C3)→オキサロ酢酸(C4)にするピルビン酸カルボキシラーゼの補酵素。

脂肪酸合成の時のアセチルCoAからマロニルCoAにするアセチルCoAカルボキシラーゼの補酵素。

教科書49ページ

(7)葉酸(図2-31):核酸合成の時にウラシルにメチル基を付けてチミンにする時のメチル基を運ぶ

103ページ)。ビタミンB12とともに骨髄での赤芽球の核酸合成に必須で、摂取不足または吸収障害によって細胞分裂が進行しなくなり、その結果大きな赤血球、すなわち巨赤芽球性貧血を来す。

(8)ビタミンB12(シアノコバラミン)図2-32:コバルトを含む。胃から分泌される内因子と結合して小腸から吸収されるので胃切除後は欠乏症になる。葉酸にメチル基を付ける核酸合成やホモシスティンにメチル基を付けてメチオニンにするアミノ酸代謝、メチルマロニルCoAからスクシニルCoAへの変換、ノルエピネフリンからエピネフリン、ホスファチジルエタノールアミンからホスファチジルコリン、グアニジノ酢酸からクレアチンの補酵素。欠乏症は巨赤芽球性貧血脱髄による神経症状。

☆国家試験問題:巨赤芽球性貧血の原因はどれか。

1, ビタミンA欠乏

2, ビタミンB12欠乏

3, ビタミンC欠乏

4, ビタミンE欠乏

5, ビタミンK欠乏

(正解2。)

☆臨床検査技師国家試験問題:ビタミンB12の構成成分はどれか。

1, Al

2, Co

3, Li

4, Mn

5, Zn

(正解2。)

(9)ビタミンC(アスコルビン酸)図2-33:構造がグルコースと似ている。たいていの哺乳動物の肝臓や植物でグルコースから合成される。しかし、人間は体内で合成できないので新鮮な果物などの食物から摂取しないといけない。ビタミンCの役割はコラーゲンの成分のプロリンの水酸化酵素の補酵素である。欠乏すると不安定なコラーゲンが作られることによりコラーゲンの多い骨、歯、血管が弱くなって歯肉出血を起こしたり皮膚の青あざ(内出血)が起きたり創傷治癒が遅れたりする(壊血病)。

☆歯科医師国家試験問題:コラーゲンの生合成におけるビタミンCの役割はどれか。

1,プロペプチドの切断

2,プロリンの水酸化

3,ヒドロキシリシンのグリコシル化

4、プロコラーゲンの細胞外への分泌

5、コラーゲン線維の架橋

(答え2。)

教科書50ページ

脂溶性ビタミン:ホルモン作用

脂溶性ビタミンは水に溶けないので過剰摂取しても排泄されにくく過剰症になることあり。

☆国家試験問題:食事摂取基準に耐容上限量が示されているビタミンはどれか。2つ選べ。

1,ビタミンA

2,ビタミンB1

3,ビタミンB2

4,ビタミンC

5,ビタミンD

(脂溶性ビタミンの15が正解。)

(1)ビタミンA2-34:レチノールはアルコール型、レチナールはアルデヒド型、レチノイン酸はレチナールの酸化によりできる。かぼちゃやニンジン(carrot)のβ―カロテンはレチナールが2分子逆向きに結合したものでプロビタミンAと言われる。β―カロテンは体内でレチナールとなり網膜中のオプシンと結合してロドプシン(視紅)となる。ロドプシンは明暗感知に関わる桿体細胞にある物質で暗いところで反応する。ビタミンAの摂取が不足するとロドプシンの再合成が行われにくくなり、薄暗くなるとものが見えにくくなる夜盲症になる。

(2)ビタミンD(カルシフェロール)図2-35:ビタミンDの化学構造はコレステロールに似ている。しいたけ(エルゴステロール)や魚の肝臓(デヒドロコレステロール)のプロビタミンDが人体の皮膚血管中で日光(紫外線)を受けてビタミンDに変化する。さらに肝臓でC25が水酸化され、次に腎臓でC1が水酸化されて初めて活性型となり、腸や骨に作用してカルシウム吸収や骨形成を促進する。したがって腎不全ではカルシウム代謝が遺贈になる。欠乏すると小児のくる病や大人の骨軟化症。

☆歯科医師国家試験問題:活性型ビタミンDで正しいのはどれか。

1、肝から分泌される。

2、血清カルシウムの調節因子である。

3、血糖の調節因子である。

4、受容体は細胞膜にある。

5、遊離型で血中運搬される。

(答え2。)

☆歯科医師国家試験問題:活性型ビタミンDの生成に関与するのはどれか。2つ選べ。

1,骨

2、肝臓

3、腎臓

4、唾液腺

5、副腎皮質

(答え23。)

教科書51ページ

(3)ビタミンE(トコフェロール、商品名ユベラ)2-36:不飽和脂肪酸の過酸化を防ぐ。欠乏症はマウスの不妊症。ヒトの欠乏症は不明。

(4)ビタミンK(フィロキノン、メナキノン)図2-37:肝臓での血液凝固因子プロトロンビン合成に必要。(詳しく説明するとプロトロンビン中のグルタミン酸のγ位にカルボキシ基を付ける反応にビタミンKが必要でこれはカルシウムとの結合に関与するのでこれがないと血液が固まりにくくなる。)抗出血作用がある。野菜に多く含まれ、腸内細菌も合成しているので普通は欠乏しないが、抗生物質常用者では腸内細菌の死滅により欠乏症(出血傾向)がみられる。

母乳はビタミンKの含有量が少なく新生児の腸内細菌叢も十分でないことから新生児はビタミンKが欠乏しやすい。新生児メレナ(血便)の予防として生後すぐ、生後1週間、1か月健診の時にビタミンK2シロップを摂取させる。

教科書52ページ

逆に抗凝固剤のワルファリンはビタミンKの作用を妨げる。血栓形成の予防に使われる。

☆国家試験問題:母乳栄養で不足しやすいのはどれか。

1,ビタミンA

2,ビタミンB

3,ビタミンC

4,ビタミンE

5,ビタミンK

(正解5。新生児には全員投与する。)

☆国家試験問題:人工乳と比べた母乳栄養の利点で誤っているのはどれか。

1,消化吸収しやすい。

2,感染防御作用がある。

3,母子相互作用を高める。

4,ビタミンK含有量が多い。

5,アレルギーを生じる可能性が低い。

4が誤っている。)

教科書53ページ

(    )

教科書54ページ

酵素の役割

(図3-1の説明)

 糖質のデンプンを試験管内(in vitro)で分解しようと思ったら、塩酸を加えて煮沸し、何時間も時間をかけなければ分解しない。通常の化学反応では煮沸するなどしてエネルギーを与え、反応しやすい状態にしてやらないと反応は開始されない。この反応に必要なエネルギーを(                )という。

一方、生体内(in vivo)では37度前後の常温で、しかも何時間もかけずにデンプン分解が行なわれる。それは酵素が働いているからである。酵素が関与する場合でも活性化エネルギーは必要だが、酵素はその活性化エネルギーを低下させる。

このように活性化エネルギーを低下させ、反応を促進する物質を(    )という。触媒は反応を促進する働きがあるが、自分自身は変化しない。酵素も反応を促進するが、酵素自身は変化しないので消費されたりはしない。酵素は生体で働く触媒のようなものなので生体触媒とも呼ばれる。

たとえば小学校で習ったように2H2O2(過酸化水素)はそのままではほとんど反応が起きないが二酸化マンガンを加えると急激に酸素が発生する。これは 二酸化マンガンが触媒として働いたからである。この二酸化マンガンと同様に生体内で過酸化水素を水と酸素に分解する反応を促進する酵素がカタラーゼである。どちらの場合も過酸化水素は水と酸素に分解するが、二酸化マンガンやカタラーゼ自体は反応の前後で変化していない。

酵素の性質

(1)酵素が普通の触媒と大きく異なるのは主成分がタンパク質であるということである。

(図3-2の説明)

 酵素の主成分はタンパク質だが、タンパク質以外の金属や低分子有機物を必要とする酵素がある。たとえばカタラーゼには鉄イオン、ATPアーゼにはマグネシウムイオン、炭酸脱水酵素(H2CO3H2O+CO2炭酸水を口に入れたら急にしゅわっとなるのは口腔内にこの酵素があるので)には亜鉛イオンが必要である。一方、低分子有機物を補酵素という。

教科書55ページ

補酵素を必要とするとき、酵素本体のタンパク質部分をアポ酵素といい、アポ酵素と補酵素を合わせたものをホロ酵素という。補酵素はタンパク質の本体部分であるアポ酵素と弱く結合しているので、容易に解離することができるのが特徴である。補酵素の多くはビタミンB群から合成されることが多い。

例:LDH(乳酸脱水素酵素)とNAD(ニコチン酸が成分)

 コハク酸脱水素酵素とFAD(ビタミンB2が成分)

ピルビン酸脱水素酵素とNAD, TPP(ビタミンB1)、補酵素A(パントテン酸)

アミノ基転移酵素とピリドキシン(ビタミンB6

(図33の説明)

2)酵素が働きかける相手のことを(    )、基質が変化して生じた物質を(      )という。酵素が働く時、まず酵素と基質が結合し、酵素基質複合体を形成する。その結果、反応が起こり基質が生成物に変化する。でも酵素は変化していないので、また次の基質と反応する。酵素の大きな特徴は基質が酵素によって決まっているということである。たとえば先ほどのカタラーゼは過酸化水素に働いて水と酸素にすることはできるが、それ以外の物質に働きかけることはできない。また、アミラーゼはデンプンを分解する酵素だが、タンパク質を分解することはできない。酵素の種類によって基質の種類がきまっているので、これを基質特異性という。

3)もう一つの特徴は一つの酵素は一つの反応しか触媒しないということである。このおかげで一つの細胞の中で複数の反応が間違われずに行われている。これを(          )という。

教科書56ページ

4)(図34の説明)酵素反応に影響する因子

pH

タンパク質は酸やアルカリによって形が変わってしまうので、酵素の働きも酸やアルカリの影響を受ける。最も酵素がよく働くときのpHを(       )という。一般に酵素は中性付近(pH7前後)でよく働く。たとえば唾液に含まれるデンプンを分解する酵素のアミラーゼの最適pHは7であるが、胃液に含まれるタンパク質を分解するペプシンの最適pH2で、強酸性でよく働く。膵液に含まれるタンパク質を分解するトリプシンの最適pH8で弱アルカリ性でよく働く。

☆国家試験問題:正常な胃液のpHはどれか。

1pH1~2

2pH4~5

3pH7~8

4pH10~11

(強酸性の1を選ぶ。)

②温度

タンパク質は高温では変性してしまうので酵素も高温では働きを失ってしまう。そのため酵素には最もよく働く時の温度、すなわち(         )が存在する。

③基質濃度に比例、ある程度のところから平らになる。

    時間に比例、ある程度のところから平らになる。

    酵素量に比例。

    (      )は本来の基質と構造がよく似ているため酵素反応の際に酵素の活性部位に結合して反応を阻害する。反対に反応を促進する物質を(        )という。

たとえばエタノールはメタノールと構造が似ているのでメタノールを誤飲した時に治療としてエタノールを与えるとアルコール脱水素酵素を阻害してメタノールが網膜に有害なホルムアルデヒドにならないようにする。メトトレキサートは葉酸によく似た構造でジヒドロ葉酸還元酵素を阻害してDNA合成を阻害するので抗がん剤として用いられる。

HMGCoA合成酵素阻害剤:コレステロール合成を阻害。脂質異常症の治療薬に。

キサンチンオキシダーゼ阻害薬:尿酸合成を阻害。高尿酸血症の治療薬。

プロスタグランジ合成阻害剤:痛み物質ができないようにする。アスピリン、ロキソニンなどの鎮痛剤、

細菌の細胞壁合成阻害剤:ペニシリンなどの抗生物質

ビタミンK還元酵素阻害薬:トロンビンの合成阻害。ワーファリン(抗凝固薬)

RNAポリメラーゼ阻害薬:アビガン。コロナウィルスはRNAウイルスなので抗コロナウイルス薬として期待。

グレープフルーツジュース:薬物分解酵素のCYP3A4(チトクロームP4503A4)を阻害する。

教科書57ページ

酵素の分類

語尾にドイツ後の〰アーゼが付いて〰を分解するものという意味になる。

各酵素は国際生化学連合の定めた4組の数字から成るEC(enzyme code)番号で整理されている。たとえば乳酸脱水素酵素はEC1.1.1.27

 (表3-1の説明)

(1)酸化還元酵素(EC1):酸化還元反応の-H-Oを移動させる。

乳酸脱水素酵素(LDHEC1.1.1.27

: 乳酸 ⇔ ピルビン酸+2H

COOH     COOH

H-C-OH       C=O

   CH    CH3

ピルビン酸脱水素酵素EC1.2.4.1

:ピルビン酸+CoA-SH → アセチルCoA+CO2+2H

   COOH                 S-CoA

   C=O                   C=O

   CH3                   CH3

(2)転移酵素(EC2)2種の基質間で特定の基を移動させる

アミノ基を移動させるアミノトランスフェラーゼ(トランスアミナーゼ)

アスパラギン酸トランスアミナーゼ(ASTEC2.6.1.1=グルタミン酸・オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT

:アスパラギン酸+α-ケトグルタル酸 ⇔ グルタミン酸+オキサロ酢酸

COOH             COOH          COOH       COOH

CH2               CH2             CH2          CH2

H-C-NH2              CH2            CH2         C=O

COOH             C=O         H-C-NH2       COOH

                  COOH          COOH

アラニントランスアミナーゼ(ALTEC2.6.1.2=グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT

:アラニン+α-ケトグルタル酸 ⇔ グルタミン酸+ピルビン酸

    CH3        COOH           COOH      CH3

H-C-NH2       CH2             CH2        C=O

    COOH      CH2             CH2        COOH

                C=O          H-C-NH2

                COOH           COOH

リン酸基を移動させるリン酸化酵素(〰キナーゼ)

ヘキソキナーゼ(肝臓ではグルコキナーゼ)EC2.7.1.1

:グルコース+ATP → グルコース-6-リン酸+ADP

     CHO             CHO

H-C-OH           H-C-OH

  HO-C-H          HO-C-H

   H-C-OH           H-C-OH

   H-C-OH           H-C-OH

    CH2OH            CH2OPO32-

クレアチンキナーゼ(CKEC2.7.3.2

:クレアチンリン酸+ADP → クレアチン+ATP

     COOH                COOH

     CH2                  CH2

  N-CH3                   N-CH3

HN=C-NHPO32-             HN=C-NH2

筋肉収縮のエネルギー源はATPだが筋肉中のATPはそれほど多くないので筋肉収縮するとすぐにATPが消費されてしまう。一方クレアチンリン酸が多く蓄えられており、クレアチンキナーゼによりすぐにATPが合成される。クレアチンリン酸の消費で生じたクレアチンは筋肉中のグリコーゲンの分解によるATPによりクレアチンリン酸に再生される。

(3)加水分解酵素(EC):文字通り水を加えて分解する酵素

消化酵素(ペプシンEC3.4.23.1、トリプシンEC3.4.21.4、リパーゼEC3.1.1.3、アミラーゼEC3.2.1.1、マルターゼEC3.2.1.20

アルカリホスファターゼ(ALP)EC3.1.3.1:細胞膜のリン脂質を加水分解する。アルカリ性で作用が強くなる。

(4)脱離酵素(EC):加水分解によらず基質から特定の基を切り取る。

COを除去する脱炭酸酵素デカルボキシラーゼ

グルタミン酸脱炭酸酵素EC4.1.1.15(ビタミンB6が補酵素)

:グルタミン酸→GABA+COCOをビタミンB6に渡す

   COOH      COOH

   CH2        CH2

   CH2        CH2

H-C-NH2    H-C-NH2

   COOH      H

ピルビン酸脱炭酸酵素EC4.1.1.1

:ピルビン酸→アセトアルデヒド+CO2COをビタミンB6に渡す

  CH3        CH3

  C=O        C=O

  COOH      H

水を除去する脱水酵素

炭酸脱水酵素

H2CO3CO2+H2O (炭酸水を口に入れたら急にしゅわっとなるのは口腔内にこの酵素があるから)

フマラーゼEC4.2.1.2(クエン酸回路の酵素)リンゴ酸から見たら脱水酵素

:フマル酸+H2O⇔リンゴ酸

   COOH            COOH

   CH           HO-C-H

   ||                |

   CH               CH2

COOH            COOH

(5)異性化酵素(EC):基質を自分の中で付け替えて異性体に変化させる。

トリオースリン酸イソメラーゼEC5.3.1.1(解糖系の酵素)

:ジヒドロキシアセトンリン酸(ケトン体)⇔グリセルアルデヒド三リン酸(アルデヒド)

CH2OPO32-               CH2OPO32-

                   C=O                  H-C-OH

           HO-C-H                      CHO

(6)合成酵素(EC) くっつける。

グルタミン合成酵素EC6.3.1.2

:グルタミン+-オキソグルタル酸→2グルタミン酸

     COOH       COOH             COOH    COOH

H-C-NH2        C=O            H-C-NH2   H-C-NH2

    CH2          CH2                CH2       CH2

     CH2         CH2                CH2      CH2

O=C-NH2       COOH             COOH    COOH

ピルビン酸カルボキシラーゼEC6.4.1.1(糖新生の酵素。ビオチンが補酵素)

:ピルビン酸+CO2→オキサロ酢酸

   COOH            COOH

   C=O              C=O

   CH3              CH2

                     COOH

教科書58ページ

(            )

酵素としての性質はほぼ同じでありながら、タンパク質分子としては別種であるような酵素のこと。

(図3-5の説明)

たとえば乳酸脱水素酵素(LDH)は4つの(         )から成る。Hサブユニット(心筋型)とMサブユニット(骨格筋型)の組み合わせでLDH1HHHH)は心筋にLDH5MMMM)は肝臓や骨格筋に多い。心筋細胞が障害された時は血中にLDH1が放出され、肝細胞や骨格筋細胞が障害された時は血中LDH5が上昇する。

教科書59ページ

臨床診断と酵素

(表3-2の説明)

(1)アルカリホスファターゼ(ALP):主に細胞膜のリン酸エステルを加水分解する酵素のうちアルカリ性側に至適pHを持つもの。骨疾患、肝臓胆道疾患(閉塞性)、妊娠、成長期などで上昇。

(2)クレアチンキナーゼ(CK):心筋、骨格筋に多い。心筋梗塞、筋ジストロフィー、激しい運動の後に上昇。

(3)乳酸脱水素酵素(LDH):NADを補酵素として乳酸⇔ ピルビン酸+2Hの反応を触媒する酵素で解糖系の最終段階に位置する。アミノ酸組成の異なるH型とM型とのサブユニットが結合して四量体を形成し5種類の形が存在する。

LDH1HHHH)はピルビン酸で阻害されやすいので心・腎・赤血球などの好気的条件では乳酸への変化は抑制されてクエン酸回路の方へ供給してATPが産生される。一方LDH5MMMM)はピルビン酸に阻害されにくいので速やかに乳酸が産生されてNADを供給する。肝・骨格筋などの嫌気的な組織で好都合。

(4)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST

=グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT

肝臓にも心臓にも多く含まれるので肝炎、心筋梗塞で上昇・

(5)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

=グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT

肝臓のみに多いので肝炎、脂肪肝で上昇。心筋梗塞では上がらない。

(6)アミラーゼ(AMY):唾液腺型(S)と膵型(P)とがある。耳下腺炎ではS型、膵炎ではP型が上がる。

心筋梗塞発作後最も早く上昇するのがCK、次にGOT、その次がLDH。発症時刻の推定に重要。この順番は重要。

☆国家試験問題:肝障害の指標となる血液検査の項目はどれか。

1CRP

2,尿素窒素

3,アミラーゼ

4ALT(GPT)

(答え41は炎症、2は腎障害、3は膵炎、唾液腺炎で上がる。)

☆国家試験問題:42歳の男性。会社員。同僚と飲酒した翌朝、腹痛と嘔気とで目が覚めた。通常の二日酔いとは異なる強い心窩部痛があったため受診した。意識は清明で呼吸困難はない。急性膵炎と診断され入院となった。高値が予想される血液検査データはどれか。

1,カルシウム

2,アルブミン

3,アミラーゼ

4,α-フェトプロテイン

(急性膵炎だから正解は3。4は肝細胞癌の腫瘍マーカー。)

☆国家試験問題:Aさん(43歳、男性)は、胆道狭窄のため内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)検査を受けた。検査後に心窩部痛が出現したため、禁食、抗菌薬および蛋白分解酵素阻害薬による治療が行われている。翌日実施した血液検査の項目でAさんに生じている合併症を判断できるのはどれか。

1,アミラーゼ

2,アルブミン

3,クレアチニン

4,クレアチンキナーゼ

(急性膵炎だから正解は13は腎機能低下、4は心筋梗塞で上昇。)

☆国家試験問題Aさん(48歳、男性、会社員)は、大量の飲酒の後、急激な上腹部通と背部痛を訴え、救急外来を受診し、急性膵炎と診断された。

Aさんの救急外来受診時の血液検査結果で予測されるのはどれか。

1, 血小板数の増加

2, 血清LDH値の低下

3, 血清γ-GTP値の低下

4, 血清アミラーゼ値の上昇

5, 血清カルシウム値の上昇

(正解4

☆国家試験問題:急性心筋梗塞において上昇のピークが最も早いのはどれか。

1AST(GOT)

2ALT(GPT)

3LDLDH

4CK(CPK)

(答え4。心筋梗塞後はCKGOTLDHの順に上昇する。)

 

第8回 まとめ

生化学試験予告

    講義でやった看護師国家試験問題から20題出題。12題(60%以上)正解で合格。(60点)

    61100点は化学式の問題で採点。①で60%以下でも化学式で挽回可能。

    グルコースを水に溶かした時の三つの状態の化学式(教科書p2425)が描けるなら優秀。

知っておきたい化学式

国試では化学式は出ませんが、生化学やこれから学ぶ看護全般の理解に役立つ化学式はぜひ覚えておいてください。

水素分子(p138参照)H2

酸素分子(p14参照)O2

窒素分子(p138参照)N2

水(p14参照)H2O

二酸化炭素(p138参照)CO2

アンモニア(p13参照)NH3

エタノール(p143参照)C2H5OH

アセトアルデヒド(p142参照)CH3CHO

酢酸(p142参照)CH3COOH

尿素(ノート参照)

ブドウ糖は分子式C6H12O6だけでなく鎖状、α-D-グルコース(p24参照)、β-D-グルコース(p25参照)の3つの状態。

ピルビン酸(p67,141参照)C3H4O3でも例の図の通りでも良い。

乳酸(p67,141参照)C3H6O3でも例の図の通りでも良い。

脂肪酸p30,31142、ノート通りでも良い。

パルミチン酸(飽和脂肪酸)

オレイン酸(ω9不飽和脂肪酸)

グリセロール(p31参照)

ステロイド骨格(p32参照)

アミノ酸(単純な構造のもの)(p36参照)

グリシン

アラニン

核酸

プリン骨格(p41参照)

ピリミジン骨格(p41参照)

ATPp42参照)