生化学講義第二回

代謝総論、酵素、ビタミン、細胞

教科書11ページから始めましょう。

第1章代謝総論

教科書12ページ

代謝とは

体の中での化学反応を(     )という。体の中での多くの化学反応を仕切っているのが(      )である。

生きるためにはエネルギーが必要。18〰29歳では基礎代謝量(じっとしていても使う最低限のエネルギー)男性1520kcal、女性1110kcal使う。そこに身体活動が加わると平均で男性3050kcal、女性2200kcalを消費する。1calは1gの水の温度を1度上昇させるのに必要なエネルギー。1kcalは1kgの水の温度を1度上昇させるのに必要なエネルギー。

(図1-1の説明)

生体内のエネルギー代謝ではエネルギーの仲立ちをする物質としてアデノシン三リン酸(ATP)が使われる。ATPはアデニンとリボースが結合したアデノシンにリン酸が3分子結合した構造(教科書42ページの図)をしている。

ATPのリン酸どうしの結合にはたくさんのエネルギーが蓄えられているので高エネルギーリン酸結合という。食物の分解によって得られたエネルギーを使ってADPとリン酸を結合させてATPを合成する。逆にATPADPとリン酸に分解されると多量のエネルギーが放出され、そのエネルギーがいろいろな生命活動に利用される。次のような反応式になる。

ATP+H2OADP+ Pi (H3PO4+7.3kcal

教科書13ページ

(図1−2の説明)

代謝は物質を分解する反応と物質を合成する反応とに大きく分けることができる。分解する反応を(    )、合成する反応を(     )という。異化は複雑な有機物を低分子の有機物や無機物に分解する反応でエネルギーを放出する反応を伴う。逆に同化は低分子物質から複雑な有機物を合成する反応でエネルギーを吸収する反応を伴う。

異化=分解の反応=エネルギーが発生する反応

@食物の消化

 糖質(CHO) 脂質(CHO) タンパク質(CHON)

    ↓    ↓  ↓      ↓

   単糖類 脂肪酸 グリセロール アミノ酸

    ↓    ↓  ↓      ↓

 A (                 )

:構造はアセチル基に補酵素A(CoA)が付いたもの

 B 最終的にH2OCO2NH3として排泄される。

同化=合成の反応=エネルギーを吸収、貯蔵する反応

単糖類 脂肪酸 グリセロール アミノ酸 ヌクレオチド

↓     ↓  ↓     ↓    ↓

グリコ コレステ 中性脂肪 タンパク質 核酸

ーゲン ロール       ペプチドホルモン

     ↓        カテコールアミン

    ステロイドホルモン

教科書14ページ

(図1-3の説明)

異化によりATPが生産される。逆に同化の時にATPが消費される。

第一段階は消化管で行われる。

第二段階は細胞質で行われる。アミノ酸、単糖、グリセロール、脂肪酸の炭素原子がアセチルCoAに変わる。

第三段階はミトコンドリアで行われる。アセチルCoAがクエン酸回路でCO2に酸化されて水素が分離される。電子伝達系で

O2に移してH2Oになる。この過程でさらに多くのATPが生産される。

教科書15ページ

代謝とその制御

たとえはよくないが、死体は放置しておくとどんどん腐っていくが、生きている体はいつまでも新鮮である。常に分解と合成により古いものが新しいものに置き換えられているからである。これを(      )という。

(図1-41-5の説明)

運動中、絶食中はエネルギーを使うため異化(分解)亢進。

食事摂取、休息中はエネルギーをため込むため同化(合成)亢進。「寝る子は育つ。」

教科書16ページ

ホルモンの作用と代謝の調節

(      )は内分泌腺(ないぶんぴつせん、ないぶんぴせん、どちらでもよい)と呼ばれる特定の器官の細胞で作られ、血液中に分泌(ぶんぴつ、ぶんぴ、どちらでもよい)されて血液に乗って全身に運ばれ、特定の器官(標的器官)に作用する。標的器官には標的細胞があり、標的細胞には特定のホルモンを受け取る受容体が存在する。ホルモンは標的細胞の受容体に結合することによってその細胞に作用する。ホルモンには脂質に溶けやすい脂溶性(疎水性)ホルモンと水に溶けやすい水溶性(親水性)ホルモンがあり、作用するしくみがそれぞれ異なる。細胞膜は脂質でできているので脂溶性ホルモンは容易に細胞膜を通過して細胞内に入り細胞質や核内にある受容体に結合することによって特定の遺伝子発現を調節する。水溶性ホルモンは標的細胞に到達すると標的細胞の細胞膜に存在する受容体に結合する。細胞膜受容体がホルモンと結合すると細胞内の特定の化学反応が促進される。(図5)

教科書17ページ

(表1-1の説明)

ステロイド 脂質から合成、脂溶性→核内受容体に作用。

ペプチド  アミノ酸がつながってできる、水溶性→細胞膜受容体に作用

アミン   アミノ酸から炭酸が取れてできる、親水性=水溶性→細胞膜受容体に作用

(特)甲状腺ホルモンはアミンだけどベンゼン環が含まれていて脂溶性なので核内受容体に作用する。(図6)

☆国家試験問題:標的細胞の細胞膜に受容体があるのはどれか。

1男性ホルモン、2甲状腺ホルモン、3糖質コルチコイド、4甲状腺刺激ホルモン

(1,2,3は脂溶性→核内受容体。4はペプチドホルモンなので水溶性→細胞膜受容体。それを知らなくても他が間違いと分かれば消去法で解ける。)

教科書53ページに飛びます。

第3章酵素

教科書54ページ

酵素の役割

(図3-1の説明)

 糖質のデンプンを試験管の中で分解しようと思ったら、塩酸を加えて煮沸し、何時間も時間をかけなければ分解しない。通常の化学反応では煮沸するなどしてエネルギーを与え、反応しやすい状態にしてやらないと反応は開始されない。この反応に必要なエネルギーを活性化エネルギーという。

体内では37度前後の常温で、しかも何時間もかけずにデンプン分解が行なわれる。それは酵素が働いているからである。酵素が関与する場合でも活性化エネルギーは必要だが、酵素はその活性化エネルギーを低下させる。

このように活性化エネルギーを低下させ、反応を促進する物質を触媒という。触媒は反応を促進する働きがあるが、自分自身は変化しない。酵素も反応を促進するが、酵素自身は変化しないので消費されたりはしない。酵素は生体で働く触媒のようなものなので生体触媒とも呼ばれる。

たとえば小学校で習ったように2H2O2(過酸化水素)はそのままではほとんど反応が起きないが二酸化マンガンを加えると急激に酸素が発生する。これは 二酸化マンガンが触媒として働いたからである。この二酸化マンガンと同様に生体内で過酸化水素を水と酸素に分解する反応を促進する酵素がカタラーゼである。どちらの場合も過酸化水素は水と酸素に分解するが、二酸化マンガンやカタラーゼ自体は反応の前後で変化していない。

酵素の性質

酵素が普通の触媒と大きく異なるのは主成分がタンパク質であるということである。

(図3-2の説明)

 酵素の主成分はタンパク質だが、タンパク質以外の金属や低分子有機物を必要とする酵素がある(必要としない酵素もある)。たとえばカタラーゼには鉄イオン、ATPアーゼにはマグネシウムイオン、炭酸脱水酵素(H2CO3H2O+CO2炭酸水を口に入れたら急にしゅわっとなるのは口腔内にこの酵素があるので)には亜鉛イオンが必要である。一方、低分子有機物を補酵素という。たとえばNAD(ニコチンアミド/アデニン/ジヌクレオチド)という物質はLDH(乳酸脱水素酵素)の補酵素である。

教科書55ページ

補酵素を必要とするとき、酵素本体のタンパク質部分をアポ酵素といい、アポ酵素と補酵素を合わせたものをホロ酵素という。補酵素はタンパク質の本体部分であるアポ酵素と弱く結合しているので、容易に解離することができるのが特徴である。補酵素の多くはビタミンB群から合成されることが多い。

例:LDH(乳酸脱水素酵素)とNAD(ニコチン酸が成分)

 コハク酸脱水素酵素とFAD(ビタミンB2が成分)

ピルビン酸脱水素酵素とNAD, TPP(ビタミンB1)、補酵素A(パントテン酸)

アミノ基転移酵素とピリドキシン(ビタミンB6)

(図3−3の説明)

酵素が働きかける相手のことを基質、基質が変化して生じた物質を生成物という。酵素が働く時、まず酵素と基質が結合し、酵素基質複合体を形成する。その結果、反応が起こり基質が生成物に変化する。でも酵素は変化していないので、また次の基質と反応する。酵素の大きな特徴は基質が酵素によって決まっているということである。たとえば先ほどのカタラーゼは過酸化水素に働いて水と酸素にすることはできるが、それ以外の物質に働きかけることはできない。また、アミラーゼはデンプンを分解する酵素だが、タンパク質を分解することはできない。酵素の種類によって基質の種類がきまっているので、これを基質特異性という。

もう一つの特徴は一つの酵素は一つの反応しか触媒しないということである。このおかげで一つの細胞の中で複数の反応が間違われずに行われている。これを反応特異性という。

教科書56ページ

(図3−4の説明)酵素反応に影響する因子

@    pH

タンパク質は酸やアルカリによって形が変わってしまうので、酵素の働きも酸やアルカリの影響を受ける。最も酵素がよく働くときのpHを(       )という。一般に酵素は中性付近(pH7前後)でよく働く。たとえば唾液に含まれるデンプンを分解する酵素のアミラーゼの最適pHは7であるが、胃液に含まれるタンパク質を分解するペプシンの最適pH2で、強酸性でよく働く。膵液に含まれるタンパク質を分解するトリプシンの最適pH8で弱アルカリ性でよく働く。

☆国家試験問題:正常な胃液のpHはどれか。

pH1~2

pH4~5

pH7~8

pH10~11

(強酸性の1を選ぶ。)

A温度

タンパク質は高温では変性してしまうので酵素も高温では働きを失ってしまう。そのため酵素には最もよく働く時の温度、すなわち(         )が存在する。

B基質濃度に比例、ある程度のところからプラトー(平たん=変化せず)になる。

C時間に比例、ある程度のところからプラトー(平たん=変化せず)になる。

D酵素量に比例。

E(      )は本来の基質と構造がよく似ているため酵素反応の際に酵素の活性部位に結合して反応を阻害する。薬として利用される。

 アルコール脱水素酵素阻害剤:メタノールを誤飲した時に治療としてエタノールを与えるとメタノールは網膜に有害なホルムアルデヒドにならないうちに尿中に排泄される。

ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤:DNA合成阻害。抗がん剤として。

HMGCoA合成酵素阻害剤:コレステロール合成を阻害。脂質異常症の治療薬に。

キサンチンオキシダーゼ阻害薬:尿酸合成を阻害。高尿酸血症の治療薬。

プロスタグランジ合成阻害剤:痛み物質ができないようにする。アスピリン、ロキソニンなどの鎮痛剤、

細菌の細胞壁合成阻害剤:ペニシリンなどの抗生物質

ビタミンK還元酵素阻害薬:トロンビンの合成阻害。ワーファリン(抗凝固薬)

RNAポリメラーゼ阻害薬:アビガン。コロナウィルスはRNAウイルスなので抗コロナウイルス薬として期待。

グレープフルーツジュース:薬物分解酵素のCYP3A4(チトクロームP4503A4)を阻害する。

教科書57ページ

酵素の分類

語尾にドイツ後の〰アーゼが付いて〰を分解するものという意味になる。

各酵素は国際生化学連合の定めた4組の数字から成るEC(enzyme code)番号で整理されている。たとえば乳酸脱水素酵素はEC1.1.1.27

 (表3−1の説明)

@    酸化還元酵素(EC1):酸化還元反応を触媒する

乳酸脱水素酵素(LDHEC1.1.1.27

: 乳酸 ⇔ ピルビン酸+2H

COOH     COOH

H-C-OH       C=O

   CH    CH3

ピルビン酸脱水素酵素EC1.2.4.1

:ピルビン酸+CoA-SH → アセチルCoA+CO2+2H

   COOH                 S-CoA

   C=O                   C=O

   CH3                   CH3

A    転移酵素(EC2)2種の基質間で特定の基を移動させる

アミノ基を移動させるアミノトランスフェラーゼ(トランスアミナーゼ)

アスパラギン酸トランスアミナーゼ(ASTEC2.6.1.1=グルタミン酸・オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT

:アスパラギン酸+α−ケトグルタル酸 ⇔ グルタミン酸+オキサロ酢酸

COOH             COOH          COOH       COOH

CH2               CH2             CH2          CH2

H-C-NH2              CH2            CH2         C=O

COOH             C=O         H-C-NH2       COOH

                  COOH          COOH

アラニントランスアミナーゼ(ALTEC2.6.1.2=グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT

:アラニン+α−ケトグルタル酸 ⇔ グルタミン酸+ピルビン酸

    CH3        COOH           COOH      CH3

H-C-NH2       CH2             CH2        C=O

    COOH      CH2             CH2        COOH

                C=O          H-C-NH2

                COOH           COOH

リン酸基を移動させるリン酸化酵素(〰キナーゼ)

ヘキソキナーゼ(肝臓ではグルコキナーゼ)EC2.7.1.1

:グルコース+ATP → グルコース--リン酸+ADP

     CHO             CHO

H-C-OH           H-C-OH

  HO-C-H          HO-C-H

   H-C-OH           H-C-OH

   H-C-OH           H-C-OH

    CH2OH            CH2OPO32-

クレアチンキナーゼ(CKEC2.7.3.2

:クレアチンリン酸+ADP → クレアチン+ATP

     COOH                COOH

     CH2                  CH2

  N-CH3                   N-CH3

HN=C-NHPO32-             HN=C-NH2

筋肉収縮のエネルギー源はATPだが筋肉中のATPはそれほど多くないので筋肉収縮するとすぐにATPが消費されてしまう。一方クレアチンリン酸が多く蓄えられており、クレアチンキナーゼによりすぐにATPが合成される。クレアチンリン酸の消費で生じたクレアチンは筋肉中のグリコーゲンの分解によるATPによりクレアチンリン酸に再生される。

B加水分解酵素(EC):文字通り水を加えて分解する酵素

消化酵素(ペプシンEC3.4.23.1、トリプシンEC3.4.21.4、リパーゼEC3.1.1.3、アミラーゼEC3.2.1.1、マルターゼEC3.2.1.20

アルカリホスファターゼ(ALP)EC3.1.3.1:細胞膜のリン脂質を加水分解する。アルカリ性で作用が強くなる。

C脱離酵素(EC):加水分解によらず基質から特定の基を除去する

COを除去する脱炭酸酵素デカルボキシラーゼ

グルタミン酸脱炭酸酵素EC4.1.1.15(ビタミンB6が補酵素)

:グルタミン酸→GABA+COCOをビタミンB6に渡す

   COOH      COOH

   CH2        CH2

   CH2        CH2

H-C-NH2    H-C-NH2

   COOH      H

ピルビン酸脱炭酸酵素EC4.1.1.1

:ピルビン酸→アセトアルデヒド+CO2COをビタミンB6に渡す

  CH3        CH3

  C=O        C=O

  COOH      H

水を除去する脱水酵素

炭酸脱水酵素

H2CO3CO2+H2O (炭酸水を口に入れたら急にしゅわっとなるのは口腔内にこの酵素があるから)

フマラーゼEC4.2.1.2(クエン酸回路の酵素)リンゴ酸から見たら脱水酵素

:フマル酸+H2O⇔リンゴ酸

   COOH            COOH

   CH           HO-C-H

   ||                |

   CH               CH2

COOH            COOH

D異性化酵素(EC):基質をその異性体に変化させる

トリオースリン酸イソメラーゼEC5.3.1.1(解糖系の酵素)

:ジヒドロキシアセトンリン酸(ケトン体)⇔グリセルアルデヒド三リン酸(アルデヒド)

CH2OPO32-               CH2OPO32-

                   C=O                  H-C-OH

           HO-C-H                      CHO

E合成酵素(EC)

グルタミン合成酵素EC6.3.1.2

:グルタミン+-オキソグルタル酸→2グルタミン酸

     COOH       COOH             COOH    COOH

H-C-NH2        C=O            H-C-NH2   H-C-NH2

    CH2          CH2                CH2       CH2

     CH2         CH2                CH2      CH2

O=C-NH2       COOH             COOH    COOH

ピルビン酸カルボキシラーゼEC6.4.1.1(糖新生の酵素。ビオチンが補酵素)

:ピルビン酸+CO2→オキサロ酢酸

   COOH            COOH

   C=O              C=O

   CH3              CH2

                     COOH

教科書58ページ

アイソザイム

酵素としての性質はほぼ同じでありながら、タンパク質分子としては別種であるような酵素のことを(        )という。

(図3-5の説明)

たとえば乳酸脱水素酵素(LDH)は4つの(         )から成る。Hサブユニット(心筋型)とMサブユニット(骨格筋型)の組み合わせでLDH1(HHHH)は心筋にLDH5(MMMM)は肝臓や骨格筋に多い。心筋細胞が障害された時は血中にLDH1が放出され、肝細胞や骨格筋細胞が障害された時は血中LDH5が上昇する。

教科書59ページ

臨床診断と酵素

(表3-2の説明)

@アルカリホスファターゼ(ALP):主に細胞膜のリン酸-エステルを加水分解する酵素のうちアルカリ性側に至適pHを持つもの。骨疾患、肝臓胆道疾患(閉塞性)、妊娠、成長期などで上昇。

B    クレアチンキナーゼ(CK):心筋、骨格筋に多い。心筋梗塞、筋ジストロフィー、激しい運動の後に上昇。

C    乳酸脱水素酵素(LDH):NADを補酵素として乳酸⇔ ピルビン酸+2Hの反応を触媒する酵素で解糖系の最終段階に位置する。アミノ酸組成の異なるH型とM型とのサブユニットが結合して四量体を形成し5種類の形が存在する。

LDHT(HHHH)はピルビン酸で阻害されやすいので心・腎・赤血球などの好気的条件では乳酸への変化は抑制されてクエン酸回路の方へ供給してATPが産生される。

一方LDHX(MMMM)はピルビン酸に阻害されにくいので速やかに乳酸が産生されてNADを供給する。肝・骨格筋などの嫌気的な組織で好都合。

Cアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST

=グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT

肝臓にも心臓にも多く含まれるので肝炎、心筋梗塞で上昇・

Dアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

=グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT

肝臓のみに多いので肝炎、脂肪肝で上昇。心筋梗塞では上がらない。

D    アミラーゼ(AMY):唾液腺型(S)と膵型(P)とがある。耳下腺炎ではS型、膵炎ではP型が上がる。

心筋梗塞発作後最も早く上昇するのがCK、次にGOT、その次がLDH。発症時刻の推定に重要。この順番は重要。

☆国家試験問題:肝障害の指標となる血液検査の項目はどれか。

CRP、2尿素窒素、3アミラーゼ、4ALT(GPT)

(答え一発4。1は炎症、2は腎障害、3は膵炎、唾液腺炎。)

☆国家試験問題:42歳の男性。会社員。同僚と飲酒した翌朝、腹痛と嘔気とで目が覚めた。通常の二日酔いとは異なる強い心窩部痛があったため受診した。意識は清明で呼吸困難はない。急性膵炎と診断され入院となった。高値が予想される血液検査データはどれか。

1カルシウム、2アルブミン、3アミラーゼ、4α-フェトプロテイン

(答え一発3。4は肝細胞癌の腫瘍マーカー。)

☆国家試験問題:急性心筋梗塞において上昇のピークが最も早いのはどれか。

AST(GOT)、2ALT(GPT)、3LDLDH)、4CK(CPK)

(答え一発4。心筋梗塞後はCKGOTLDHの順に上昇する。)

教科書45ページに戻ります。

ビタミン:vita(生命)+amine

脚気は脚のしびれと心不全を起こし、ついには死につながる疾患である。日本では米を精米して洗って食べる習慣により江戸時代に流行した。1910年鈴木梅太郎先生が米糠からビタミンB1を抽出してオリザニンと名付けた。1911年ポーランドのフンクも米糠の中から脚気に有効な成分を発見し、1912年「生命に重要なアミン」という意味の(       )と名付けた。その後発見されたビタミンの中にはアミン以外の構造のものもあり、水溶性と脂溶性に大きく分けられる。

教科書46ページ

まずビタミン全体をざっと見渡して国家試験問題を解いてみる。

(表2-5の説明)

水溶性ビタミン:B群(B1からB12までいろいろある)とC

B1の欠乏で脚気、ウェルニッケ脳症、代謝性アシドーシス

B12の欠乏で悪性貧血

Cの欠乏で壊血病

(表2-6の説明)

脂溶性ビタミン:ADEK(アデックと覚える)

Aの欠乏で夜盲症

Dの欠乏でカルシウム吸収の抑制で小児のくる病、成人では骨軟化症。

Eは抗酸化作用。欠乏で(マウスの)不妊症、動脈硬化症

Kは血液凝固因子。新生児で欠乏しやすい。欠乏で消化管出血。

☆国家試験問題:水溶性ビタミンはどれか。

1ビタミンA

2ビタミンC

3ビタミンD

4ビタミンE

5ビタミンK

(答え一発2。)

☆国家試験問題:ビタミンと生理作用の組合せで正しいのはどれか。

1ビタミンA―――――嗅覚閾値の低下

2ビタミンD―――――鉄吸収の抑制

3ビタミンE―――――脂質の酸化防止

4ビタミンK―――――血栓の溶解

(1×不足すると夜盲症。2×カルシウム吸収の促進効果。3〇。4×血液凝固に必要。)

☆国家試験問題:ビタミンと欠乏症の組合せで正しいのはどれか。

1ビタミンB1―――――ウェルニッケ脳症

2ビタミンC―――――脚気

3ビタミンD―――――新生児メレナ

4ビタミンE―――――悪性貧血

(答え一発1。)

☆国家試験問題:ビタミンの欠乏とその病態との組合せで正しいのはどれか。

1ビタミンA―――――壊血病

2ビタミンB1―――――代謝性アシドーシス

3ビタミンC―――――脚気

4ビタミンD―――――悪性貧血

5ビタミンE―――――出血傾向

(2は第三回講義の内容だが、それを知らなくても他が間違いと分かれば消去法でも解ける。ビタミンB1はピルビン酸脱水素→アセチルCoAを触媒するピルビン酸脱水素酵素の補酵素になるので不足するとピルビン酸→乳酸が進んで血液が酸性に傾く。)

☆国家試験問題:母乳栄養で不足しやすいのはどれか。

1ビタミンA

2ビタミンB

3ビタミンC

4ビタミンE

5ビタミンK

(答え一発5。新生児には全員投与する。)

ビタミンについて覚えるべきことはここまで。この後は気軽に。

教科書47ページ

水溶性ビタミン:補酵素作用

(1)ビタミンB1(チアミン)図2-25:基質からCO2を抜き取る酵素の補酵素。

一番有名なのはピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸からCO2を抜いてアセチルCoAにする酵素)の補酵素。

2−オキソグルタル酸脱水素酵素(α-ケト酸からCO2を抜いてスクシニルCoAにする酵素)の補酵素。

分枝アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)からCO2を抜く酵素の補酵素。

ペントースリン酸回路の6−ホスホグルコン酸からHCO2を抜いてリブロース5リン酸にする酵素の補酵素。

胚芽に多く含まれているので白米に依存しすぎたり、食物をとらずにアルコールのみを摂取しているとアルコールはビタミンB1の吸収を阻害するので欠乏する。神経細胞における糖質代謝に支障をきたし脚がしびれて脚気となる。重篤になると心臓における糖質代謝にまで影響して心不全をきたす。ウェルニッケ脳症では意識障害、体のふらつきが起こる。

(2)ビタミンB2(リボフラビン)図2-26:水素や電子の受け渡しに関与する。

FMNは電子伝達系でNADHから電子を受け取り補酵素Qに渡す。

FADの成分。クエン酸回路でのコハク酸脱水素酵素の水素を運ぶ補酵素。コハク酸+FAD⇔フマル酸+FADH2

教科書48ページ

(3)  ビタミンB6(ピリドキシン)図2-27:ピドキサールリン酸に変化してアミノ基を運ぶ。アミノ基が付くとピリドキサミンになる。

脱炭酸反応にも関与。アミノ酸の脱炭酸により神経伝達アミンができるのでB6の欠損は神経症状が出る。

グリコーゲンホスホリラーゼの補酵素でもある。

スフィンゴ脂質の合成分解の時の補酵素でもある。

(4)ナイアシン(ニコチン酸)図2-28:乳酸脱水素酵素やリンゴ酸脱水素酵素などの水素原子を運ぶ補酵素のNADの成分。グルコース6リン酸脱水素酵素、HMGCoA還元酵素、薬物代謝酵素の補酵素NADPの成分。欠乏症はペラグラ。ペラグラはイタリア語で「皮膚のかゆみ」という意味。ナイアシンはアミノ酸のトリプトファンからも合成されるが、トウモロコシにはナイアシンもトリプトファンも含まれないためトウモロコシに食事が偏るとペラグラを来す。

(5)パントテン酸図2-29:補酵素Aの成分。結合した物質を活性化して分解されやすい形にする。

アセチル基に付いてアセチルCoA(活性酢酸)となる、

脂肪酸に付いてアシルCoA(活性脂肪酸)など。

(6)ビオチン図2-30COOHを付ける反応の補酵素。

糖新生の時のピルビン酸(C3)→オキサロ酢酸(C4)にするピルビン酸カルボキシラーゼの補酵素。

脂肪酸合成の時のアセチルCoAからマロニルCoAにするアセチルCoAカルボキシラーゼの補酵素。

教科書49ページ

(7)葉酸(図2-31):核酸合成の時にウラシルにメチル基を付けてチミンにする時のメチル基を運ぶ

103ページ)。ビタミンB12とともに骨髄での赤芽球の核酸合成に必須で、摂取不足または吸収障害によって細胞分裂が進行しなくなり、その結果大きな赤血球、すなわち巨赤芽球性貧血を来す。

(8)ビタミンB12(シアノコバラミン)図2-32:コバルトを含む。胃から分泌される内因子と結合して小腸から吸収されるので胃切除後は欠乏症になる。葉酸にメチル基を付ける核酸合成やホモシスティンにメチル基を付けてメチオニンにするアミノ酸代謝、メチルマロニルCoAからスクシニルCoAへの変換、ノルエピネフリンからエピネフリン、ホスファチジルエタノールアミンからホスファチジルコリン、グアニジノ酢酸からクレアチンの補酵素。欠乏症は巨赤芽球性貧血脱髄による神経症状。

(9)ビタミンC(アスコルビン酸)図2-33:構造がグルコースと似ている。肝臓や植物でグルコースから合成されるので。役割はコラーゲンの成分のプロリンの水酸化の補酵素。欠乏すると不安定なコラーゲンが作られることによりコラーゲンの多い骨、歯、血管が弱くなって歯肉出血を起こしたり創傷治癒が遅れたりする(壊血病)。

教科書50ページ

脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミンは水に溶けないので過剰摂取しても排泄されにくく過剰症になることあり。

(1)  ビタミンA2-34:レチノールはアルコール型、レチナールはアルデヒド型、レチノイン酸はレチナールの酸化によりできる。かぼちゃやニンジンのβ―カロテンはレチナールが2分子逆向きに結合したものでプロビタミンAと言われる。β―カロテンは体内でレチナールとなり網膜中のオプシンと結合してロドプシン(視紅)となる。ロドプシンは明暗感知に関わる桿体細胞にある物質で暗いところで反応する。ビタミンAの摂取が不足するとロドプシンの再合成が行われにくくなり、薄暗くなるとものが見えにくくなる夜盲症になる。

(2)ビタミンD(カルシフェロール)図2-35:プロビタミンDの化学構造はコレステロールに似ている。しいたけ(エルゴステロール)や魚の肝臓(デヒドロコレステロール)のプロビタミンDが人体の皮膚血管中で日光(紫外線)を受けてビタミンDに変化する。さらに肝臓でC25が水酸化され、次に腎臓でC1が水酸化されて初めて活性型となり、腸や骨に作用してカルシウム吸収や骨形成を促進する。したがって腎不全ではカルシウム代謝が遺贈になる。欠乏すると小児のくる病や大人の骨軟化症。

教科書51ページ

(3)ビタミンE(トコフェロール、商品名ユベラ)2-36:不飽和脂肪酸の過酸化を防ぐ。欠乏症はマウスの不妊症。ヒトの欠乏症は不明。

(4)ビタミンK(フィロキノン、メタキノン)図2-37:肝臓での血液凝固因子プロトロンビン合成に必要。抗出血作用がある。野菜に多く含まれ、腸内細菌も合成しているので普通は欠乏しないが、抗生物質常用者では腸内細菌の死滅により欠乏症(出血傾向)がみられる。

母乳にはビタミンKが少なく腸内細菌叢も十分でないことから新生児も欠乏しやすい。新生児メレナ(血便)の予防として生後すぐ、生後1週間、1か月健診の時にビタミンK2シロップを摂取させる。

教科書52ページ

逆に抗凝固剤のワルファリンはビタミンKの作用を妨げる。血栓形成の予防に使われる。

教科書20ページに戻ります。

細胞(機能ごとに理解すれば覚えやすい)

(図2-1の説明)

@ 自分自身と同じ機能をもつ個体を作り出すこと()

細胞分裂ではまず核が2つに分裂し、続いて細胞質が分裂して、さらに外側から細胞膜がくびれて2つの細胞になる。 

(  ):細胞の司令塔に相当する。(  )を取り囲む核膜は二重になっている。核膜孔という穴があいており、細胞質と通じている。通常は1つの細胞に1つの(  )がある。骨格筋細胞では1個の細胞に多数の(  )をもつ。赤血球のように(  )がない細胞もある。赤血球は骨髄の中で作られた後に血中に出る時に(  )もミトコンドリアも捨てて酸素運搬に特化した形になる。

☆国家試験問題:健常な成人の血液中にみられる細胞のうち核がないのはどれか。

1単球、2好中球、3赤血球、4リンパ球

(答え一発3。)

 染色質DNAとヒストンというタンパク質から成る糸状の構造で、通常は見えない。細胞分裂の時に凝縮して見えるようになると染色体と呼ばれる。ヒトでは46本(常染色体44本+性染色体2本)ある。

 核小体(仁):核の中にある小器官。リボソームRNAと運搬RNAの合成の場所である。

A    エネルギーを取り出して自分自身を維持すること

異化は(      )と(              )で行われる。

(      ):細胞の中で核以外の部分をいう。細胞の形や運動を保つ細線維(フィラメント)や微小管がある。

食物の消化後に細胞内に取り込まれたブドウ糖は細胞質で解糖によりピルビン酸に分解される。脂肪酸合成も細胞質で行われる。

(              ):肝細胞では1個の細胞に2000個の(              )があるという。二重膜(外膜と内膜)に囲まれた構造をしている。さらに内膜はところどころくびれこんで櫛の歯のような構造をつくっている。このようなくびれこんだ内膜の構造をクリステという。また、内膜のさらに内側の隙間の部分をマトリックスという。マトリックスで脂肪酸のβ酸化、クエン酸回路が行われ、内膜に電子伝達系が存在して多量のATPがつくられる。

(余談)ミトコンドリアの共生説:ミトコンドリアは原始的な好気性細菌が真核生物の祖先の細胞に入り込み共生するようになったという説。その根拠は@ミトコンドリアが細胞膜と同じ脂質二重層(外膜と内膜)で覆われている。A核のDNAとは異なる自分自身のDNAを持って独自に分裂・増殖できる。B独自のリボソームを持ち、それが原核生物のものに近い。

☆国家試験問題:細胞内におけるエネルギー産生や呼吸に関与する細胞内小器官はどれか。

1ミトコンドリア、2リボソーム、3ゴルジ体、4小胞体、5核

(答え一発1。)

B 外側と自己を区別する仕切りをもつこと

(図2-2の説明 )

 (      )は脂質二重層:リン脂質(詳しくは第四回講義で)が親水基を外に向け疎水基を内側に向けて二重に並び、その中をタンパク質が流動している。リン脂質分子の隙間をコレステロールが埋める。コレステロールが多くなると膜が固くなる。細胞膜そのものは脂質に富むので脂溶性の物質は膜を通過しやすいが水溶性の物質は通過しにくい。物質の輸送には2種類あり

受動輸送(拡散):細胞の内外の濃度勾配に従って濃度の高い方から低い方へ移動する。

能動輸送:細胞内外の濃度勾配に逆らって濃度の低い方から高い方へ物質を移動させる。濃度勾配に逆らうのでATPのエネルギーが必要である。ナトリウムポンプは細胞内へK+を細胞外へNa+を運ぶ。この時ATPのエネルギーが使われている。

C 必要な物質を自分の中に取り込み(エンドサイトーシス)

不要な物質を放出すること(エキソサイトーシス)

D タンパク合成

内でDNAの情報がRNAに転写されて

 ↓

核膜孔から(           )に出て(          )の中で翻訳されてアミノ酸がつながって蛋白が合成される。

(      ):リボソームで合成されたタンパク質などの輸送路。小胞体は1枚の膜から成る扁平な袋状の構造が網目状に広がった構造をしている。表面に(          )が付着した(          )と(           )が付着していない(          )がある。滑面小胞体は解毒作用に働いたり(肝臓細胞)、Ca2+を貯蔵して細胞質中のCa2+濃度を調節したり(筋肉細胞)する。

リボソームで合成されたタンパク質はそのまま小胞体を運ばれて(          )に移動する。(          )は湾曲した扁平な袋が重なった構造である。小胞体から送られたタンパク質に糖を付け加えたり濃縮して貯蔵したりする働きがある。(          )で小胞が形成される。

 ↓

小胞は細胞質内に出る。この小胞内に細胞外に分泌する物質(たとえばホルモン)が含まれている場合は分泌顆粒、脂肪が含まれている場合は脂肪摘、グリコーゲンの場合はグリコーゲン顆粒、細胞内で働く加水分解酵素が含まれている場合はリソソームという。

☆国家試験問題:タンパク合成が行われる細胞内小器官はどれか。

1核、2リボソーム、3リソソーム、4ミトコンドリア、5ゴルジ装置

(答え一発2。)