院長のお部屋

 我々、臨床獣医師は時間を売っている商売みたいなもので、どうしても趣味というと制約がついてきます。しかし、かえって選択の幅が狭くなればなるほど出来うることはみんなやってみたいと思うのは、私が天邪鬼だからでしょうか?

 今回はその中でもルアーフィッシングについて少し書かせていただきます。

 ルアーフィッシングという釣りは、簡単に言うと、えさに似せた疑似餌(ルアー)を使った釣りで、私との最初の出会いは小学生時代に読んだ、釣り雑誌の中の特集記事でした。『へえ〜こんなもので魚が釣れるんだ』と、たかだか3ページほどの記事でしたが、私の好奇心をくすぐるには十分なインパクトがありました。

 ただ当時は、この釣りを紹介してくれるメディアは少なく、せいぜい外国からの翻訳本があるくらいで、ようやく高校生になって、ぼちぼち国内のフィールド紹介などがされるようになりました。しかし、紹介されているフィールドが周囲になかった事や、金銭的な無理もあり、いつしかルアーフィッシングという言葉は頭の片隅に封印されてしまったのです。

 それから10年後、たまたま勤務した動物病院が、ルアーフィッシャーマンにとっては憧れの湖である芦ノ湖まて゜一時間足らずのところにあったのです。

 それがきっかけで、かつての封印が解かれ、本格的にルアーフィッシングを始めるようになりました。芦ノ湖ではトラウト(鱒)のパールマーク(斑点)の美しさに、また山中湖ではブラックバスのゲーム性に魅了されていったのです。

 このルアーフィッシングの面白いところは、えさをつかう釣りに比べて、スポーツ性と戦略性を備えているところでしょうか?例えば、どのようなルアーをどのようなポイントに入れて、どのようにトレースさせるかを考え、その結果ヒットさせることが出来れば、計り知れない自己満足がえられます。もし、これを読まれている方の中で、釣りは好きだがルアーフィッシングは嫌いだと言う方がいりば、まずは戦略を立てて、何とか1匹ゲットしてみてください。確かに、釣果は低いかもしれませんが、釣り上げたときの満足感は大きなものとなるでしょう。

 また、魚を食べるような魚を釣るわけですから、大物が釣れる事も珍しくなく、私自身、富士川の河口で一晩に100cmと77cmのシーバス(スズキ)を釣り上げたこともありました。

 ただ、最近私が懸念することは、ここ3〜4年でルアーフィッシャーマンの人口は飛躍的に増大し、また、福井は県外の人にとっては垂涎の的になるくらい絶好のフィールドを持っている関係もあり、日曜の朝などフィールドに出てみるとあまりの人の多さに辟易させられることがあります。もう、かつてのように、自然と会話しながらフィッシングするということは無理なのかもしれません。そう思うと、そろそろ小さい頃に封印した、ほのかなものが芽生えてきそうな気がしてならないのです。

98年福井県獣医師会だよりより