「カラオケ物語」第二部
第4話「Fact」
仁木 友信=仁 赤川 昭介=赤 神谷坂 智=神
「・・・・・・・であるからして・・・・・」
ふぅ〜・・・・・・・なんで大学の授業ってのはこう退屈なのばっかりなんだ・・・。
でもここのは出席とレポートだけで単位取れるし、がんばんないと・・・・でも・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・ ハッ!! また知らぬ間にウトウトと・・・黒板写しそびれた・・・やべ。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン。
ふぅ〜、やっと終わった・・・。それじゃ行こうかな
あれから・・・僕は大学生になった・・・・・。
たくさんの友達に別れを告げ、一人地元に残ることになった俺。
あれから4ヶ月たって最初は不安もあったが、大分この生活にも慣れてきた。
自分の特技・・・・イヤ・・・自分自身を生かせるサークルにも入れたし、
退屈な授業はつらいけど、それを除けば毎日がとても充実している。
授業も終わったし、今日もサークルBOXに行こう。
毎日行くのがすでに日課、たまに面白い人が来るところでもあるからね。
「おお〜い、仁木ぃ」
あれ?来生先輩だ。BOX前で何やってるんだろう・・・。
仁「なんすか?」
「丁度よかった、今呼びに行こうと思ってた所、お前にお客さんだ。」
仁「客?・・・・お客さんですか?・・・ファンじゃなくて?」
来生先輩、いつも俺のお客さんの事「ファン」って言うのに・・・・。
BOXの中を見てみると、二人の見知らぬ男性が座っている。
奥に同じ回生の堂本と、部長のデンパチさんがいる。何か話してるみたいやなぁ・・・。
あ・・・堂本、俺に気づいたな、しきりに手招きなんかして・・・言われなくても入るって。
ガラガラ・・・。
仁「おはようございま〜す。」
「あ、来ました来ました!彼ですよ!内の期待の新人、仁木君です!」
おいおい・・・いきなり紹介されちゃったよ・・・部長こっちはまだなんにも聞かされて・・・・。
神「なるほど・・・あなたが仁木君ですか・・・・。」
お客さんの一人がこっちに顔を向けた、大分歳だな・・・社会人かな・・・?
神「赤川君、彼で間違いないか?」
もう一人のお客さんに声をかけている、そしたらその人も僕の方に顔を向けた。
仁「・・・・あ!!」
ビックリした
あ・・・あの時逃げた奴・・・。
つい2週間ほど前の事だったから、まだ記憶には残っていた。
ファンが来てるという話を聞いて部室に行ったらこの男がいて、俺の顔を見るなり
驚愕の表情を見せて、走ってここを出ていった奴・・・・。
なぜ一度逃げたあいつが再びここに?それに隣の社会人は誰なんだ?
神「・・初めまして、私、神楽坂と言います。さっきまで部長さんが色々とあなたのことを
お話してくれたので色々と分かりましたが・・・カラオケが御上手なんですね。」
仁「は・・・はぁ、どうもありがとうございます・・・・。」
神「・・・で・・・早速なんですが、今から私どもと一緒にカラオケに行きませんか?」
仁「え・・?え、ええ!いいですよ!」
今日は最初からそのつもりだったし、そういう願いなら万万歳だ。
神「それでは、皆さんもご一緒に・・・・・。」
結局、中にいた部長と堂本と来生先輩と後3人・・・計6人でカラオケに行く事になった。
「仁木・・・・仁木・・・・」
行く途中、堂本がしきりに俺を呼ぶ。
仁「・・・・なんだよ。」
「あいつら絶対スカウトだよ、仁木のうわさ聞きつけて来たんだ・・・。」
仁「・・・・そうかな・・・・」
「やったじゃん!これでうまくすれば、お前も黒幕のスターデビューだぜ。」
そうだな・・・・・・・・・・っておい!
なんで、わいがどん帳上げたり裏で人形動かしたりせなあかんねんなぁ!
一瞬納得してしまった自分が恥ずかしいやんけぇ!、それを言うなら銀幕やろがしてぇ!
んんん!!ついF弁が・・・。
でも・・・もしそうだとしたら・・・なぜこの前の奴は逃げ出したんだ?
突然の客からのカラオケの誘い・・・喜んであっさり引き受けてしまったが・・・。
なんか裏がありそうな気がする・・・。俺はここで何を歌うべきなんだ・・・。
あ・・・そんな事を考えてる間にカラオケBOXについてしまった。
俺達のホームグラウンド「#32」
普段は「2オクターブ」ってシャレて言ってるけど。
外見も中身も至って普通のカラオケBOX、ちなみに機種はJOYとDAMだ。
「それじゃあ今から二時間と言う事で・・・。」
部長がそう言って中に入っていった。
選んだ部屋は「JOYSOUND」、曲種が多くてメンバー内でも一番人気。
部屋も決まって全員部屋に入る。
さぁて・・・・何歌おうかな・・・・っと本を取ろうとしたその時!
ピッピッピッピッピッピッピ ピー。
「え・・・?」
すでにカラオケスタンバイ状態・・・。
ふっと後ろを見ると・・・・
・・・・あいつだ・・・・
入ってきた瞬間にリモコンで打ちこんだのか?
本も見ずに? こいつ・・・・・覚えてるのか?
赤「あ・・・すいません、お先いいですか?」
「え?・・・ええ!どうぞどうぞ。」
みんなが彼の行動に不意をつかれた、もしかしてあいつ・・・相当カラオケ慣れしてる?
奴が選んだ曲はGLAYの「口唇」、前奏が流れ、キーをこれまた本無しで原曲に戻して。
歌い出した・・・・。
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これが・・・初めてJKMCメンバーの歌を聞いた瞬間だった・・・・。
歌唱力系Aランク、「歌い手」のANを持った男の歌。
それは・・・その頃の俺には・・・。
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〜♪〜 唇に奪われた、あの愛の蜃気楼の中で〜
乱れていた、この胸、心、どうでもいいと
悪魔の囁きに、今、お前の、手招きに揺れてる
破裂しそう・・・触れ合う唇焼けるように熱くなる 〜♪〜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
声を出す事が出来ない・・・・・・周りを見ても、誰もが動けずにいる。
こ・・・これは・・・この歌は・・・
う・・・うますぎる・・・・!
うまいなんてもんじゃない、完璧に「GLAY」の歌い方を模写している・・・。
〜♪〜間奏〜♪〜
「あ・・・・ああ・・・ああ・・・す・・す・・すご・・・」
堂本の声だ、でも言葉になってない。相当なショックを受けているようだ。
あ・・・あいつ本当に普通の人間か?ここまで完璧に出来るのか?
こ・・・こんな事が・・・考えられない!。
〜♪〜 歌唱終了 〜♪〜
歌が終わってもしばらくは静寂が続いていた・・・。
「に・・・仁木よりも・・・。」
堂本がゆるゆると声を出す・・・。みんなが信じられないような顔をしてる。
確かに今までに聞いた事の無い程の素晴らしい歌だった。
高校の自分、どう思い返してもこれほどの歌を歌える奴はいなかった。
下市にしても、水島にしても、これほどうまくはなかった。
見たところまだ高校生みたいだが・・・。
こ・・・こいつは・・・一体何者なんだ!?
仁
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赤
・・・・相当驚いてるみたいだな・・・。
まぁ無理もないか、一般人に☆☆☆☆の歌を聞かせたらこうなるのは分かってるし。
普通こんな事はしないのに、神楽坂さん・・・なぜこんな事を・・・。
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神「最初から最高レベルで歌える曲を歌ってくれないか?」
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あのお願いの通り、俺は「なりきりGLAY」のもと、GLAYの曲を歌ったけど・・・。
そりゃあ神楽坂さんもなんらかの考えがあっての事だとは思うけど・・・
でも・・もうみんな完全にいってしまってる・・・次にまともに歌う奴なんているのかな・・・。
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神「その、仁木とか言う奴の所に案内してくれないか?」
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ついこの前の電話で言われた事、なぜ急に?
いくら「伝説」を作った人間と言っても・・・所詮は「一般人」
カラオケに対してある種の「考え」を持ち「何が大事か」を知っているメンバーには
到底及ばない事はわかってるはず。まして「歌い手」の・・・・。
自分からメンバーを求めるような事は基本的にはしない、あったとしてもせいぜい紹介程度・・・
こんな直々にカラオケをして聞くようなことは・・・・。
この「仁木」って奴・・・なにかあるのか・・・・?
神「どうしました?まだ曲が入っていない用ですが・・・。」
俺が歌った後・・・・まだ誰も曲を入れようとしていない。
まぁ無理もないか、「歌い手」の歌の前で、一般人は誰もがこうなってしまう。
神楽坂さんも、まさかこんなイタズラがしたくてこうさせた分けでもないだろうに。
でも・・・このまま誰も歌わないんだったら、これ以上ここにいても・・・。
仁「あ・・・・はい!じゃぁ俺がいきます!」
ん・・・?あいつが歌うのか? でもまぁ、まともには歌えないだろうな。
今まで散々持ち上げてきて、いきなり☆☆☆☆の歌を聞いてしまった一般人には・・・
もうプライドもガタガタのはずだ、堅くなればなるほど歌に影響する。
それが自分の得意な歌であったとしても、「うまく歌おう」と思う程崩れるものだから。
・・・すべては実体験で分かっている。で?何を歌うんだろう?
ん?なんだこの歌は?
「アネモネ」 by Moon Child
ええと・・・確か前にこう言うバンドあったよな・・・・「ESCAPE」ぐらいしか知らないが・・・。
あいつの得意な歌なんだろうか・・・まぁ、所詮は一般人・・・
〜♪〜 ラーラーラーラーラーーーラーラーーラーラーラー
緑色の風、バニラの香り、肌を染める夏の日差し
いつに無くまぶしい君乗せて、自転車こいで追い越したい十代
僕目のファインダー、覗きこまないで、ビートはずれの恋ならば
気のない会話とか協調性なんてもう、退屈な双六さ〜
Baby 風を切って〜 Maybe ほおずりしたいSUNSHINE
たった一つだけ、気まぐれじゃない、奇蹟を今焼きつけよう。
もっと もっと鮮やかに笑って 誘って君の微笑みからこぼれたときめきを
ずっと ずっと新しい世界が ほら君の唇なぞるよ SUNSHINE LIPSTICK (KISS) 〜♪〜
ば・・・・・・・ば・・・・・・・ば・・・・ば・・・・
馬鹿な!
何でだ?こいつ・・・何で・・・「一般人」じゃないのか?
何で・・・・何でだ・・・こいつ・・・なんで「知ってる」歌い方なんだ!?
普通の一般人にこんな歌い方が出来るわけが・・・知ってるわけが・・・。
い・・・イヤ・・・仮に誰かに教えられたとしても・・・こいつ・・・。
う・・・うまい・・・
とても一般人とは思えん・・・・。
一般人が指導だけでここまで歌えるというのか?
〜♪〜歌唱中〜♪〜
ん・・・?なんだ?左利きか?
マイクを持ち替えて、右手をフリーにして動かしている・・・・。
ん?・・・あ・・あれ・・・?あの歌い方どこかで・・・・。
赤
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神
「音の取り方」・・・「リズム感」・・・「強弱の使い分け」・・・
「歌唱三要素」・・・「声の三要素」・・・おそらくは「裏技」も・・・。
これほど高いとは・・・
それにあの歌い方・・・かつて「タクト」と言われたオリジナル表現・・・。
やはり受け継いでいるのか・・・・?
生まれもっての「歌い手」・・・・・・「劇的才能」を・・・・・・・
〜♪〜歌唱中〜♪〜
ん?動けなかった、メンバーが自然に動けるようになってるな・・・。
赤川も・・・それほどショックは受けて無いようだな・・・・。
思った通りだ・・・・。
目をつぶって静かに聞いてみると・・・・
スーっと耳に入ってきて強いイメージを止まらせない、清涼感すら覚えるくらいに。
支配系と癒し系・・・・・間違い無く後者だな・・・男性では珍しい・・・。
〜♪〜歌唱終了〜♪〜
パチパチパチパチパチ・・・・・
どうやら間違いないようだな・・・・。この一曲で確信した。あいつは・・・。
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「お疲れさまでした〜!」
・・・あっという間の2時間だったな・・・。
結局、仁木君と赤川の二人回しでほとんど歌い尽くしてしまったか・・・。
・・・仁木君も二曲目以降からは少し落ちたな・・・。
やはり・・一曲目の赤川の歌に一曲目で対抗したのか・・・まだまだ若いな・・・。
しかし・・・
パラパラパラパラ・・・・
| 赤川 | 仁木 | 俺 |
| 口唇 GLAY | アネモネ Moon Child | 暗闇でキッス Fling kids |
| MAY B'z | snow drop ラルク | Be cool 野猿 |
| STAY AWAY ラルク | 突然 FIELD OF VIEW | 浪漫飛行 米米 |
| 終わり無き旅 ミスチル | ミュージックアワー ポルノ | NEVER END シャム |
| Vanilla ガクト | over the rainbow Moon child |
| Rain GLAY | 僕はこの目で嘘をつく チャゲアス |
| あいかわらずな僕ら B'Z | 慎吾ママのおはロック 慎吾ママ | |
対抗意識を燃やしてしまったのは、赤川の方だったな・・・。
ほぼ完璧に歌える☆☆☆以上の歌ばかりか・・・確かに大した歌唱力だが・・・。
選曲にそこの浅さを感じるな、「歌い手」ならもっと歌えるはずだが・・・。
完全に楽しむ事を忘れている・・・。
逆に一曲目で対抗意識を持ったあいつは・・・二曲目からは実に楽しげに歌っていた。
選曲もかなり深い・・・今昔強弱速遅、実にレパの高さを物語っている・・・。
これほどまでに高いとは・・・。
後は・・・・
神
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赤
・・・・・・・・・やられた・・・・気がついたら終わってた。
完全に自分のペースを忘れてしまった。こんなはずでは・・・・。
それにしても・・・何物だあいつは!
歌唱センス、技術的センス、選曲から見てレパもかなりある。
後は・・・・
神「仁木君。」
仁「あ・・・はい・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・来た。
神「僕が今日歌った歌で一番うまいと思った歌はどれだった?」
仁「ええ?神谷坂さんのですか?そんなぁ・・全部うまかったですよ。」
・・・そうだろうな、普通ならそう答えるよな、いきなりそう聞かれたって・・・。
仁「でも・・・・・・・・・・・・。」
神「でも?」
仁「なかでも一番だったのは『浪漫飛行』でしたね。」
・・あ・・・・・・・・・・・・・。
・・う・・・・・嘘だろ・・・・星半分の差を一般人が見切ったのか?・・そ・・そんな・・。
神「ふ〜ん・・・じゃあ、『カラオケをうまく歌うための一番の近道』ってなんだと思う?」
仁「それはあれですよ『真似』ですよ。単に声質とかが合ってるだけでも全然違いますよね〜。」
・・・・・・速答かよおい。
神「ほう・・それじゃあさ、『カラオケを歌う上で一番大切な物はなんだと思う?』」
仁「う〜ん・・・一番ですかぁ・・・・。」
・・・・・・・・・これで・・・分かる、あいつの実力が、底が。
仁「歌唱力ではないなぁ・・・声の綺麗さ!・・・でもないか・・・・
声域!・・・・・違う・・・・もっとこう・・・・・・・そうか・・分かった!それは!」
赤
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神
かつて・・・一人の少女がいた・・・・。
その歌唱センスは劇的で、その歌声は「女神」とまで言われたという。
何人もの聞き手を魅了した彼女は、一人の少年の運命を変えてしまった。
その少年が今・・・・新たなる才能を目覚めさせてしまう事になろうとは・・・。
それは、かつて「マスターオブマスターズ」のANを手に出来なかった少女の
祈りか・・・・・。
イヤ、単に偶然の巡り合わせか・・・そこまで執着してたとは思えないしな・・・。
しかし・・・才能とはかくあるべきか・・・。
-TO BE CONTINUED-
仁木をもうならせる「JKMC」メンバーのカラオケ。
しかし仁木は、最高の歌唱力、最高の技術力、そして最高の選曲(か?)でJKMCをうならせた。
神楽坂はもう確信し、赤川がまだ気づかない「FACT」(事実)とはなにか?
そして・・・「カラオケを歌う上で一番大切な物」の答えは?
次回、「FACT」後編、御楽しみに! 実は次回で最終回・・・・・。
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