「カラオケ物語」 第9話前編「とっておきの夜」
仁木 友信= 立山 昇= 平中奈津子= 下市光二= 水島流美=  堅野 慎= 三浦忠志= 館間晴彦= クリスマスも過ぎ・・・もう年の瀬・・・・。 「さてと・・・そろそろ始めるか・・・。」 ん・・・・何を始めるんだろう・・・・? 「決まってるじゃん、勉強だよ。俺、受験生だし。」 は? 考えてみたら彼は高校三年生、大学受験を控えた立派な受験生と言ってもおかしく無いのだが。 それにしても、今までカラオケやバイトとか・・・勉強なんていつしてたんだ? 「いや・・・取りたててしてなかったけど・・・。」 ・・・・・・おいおい、受験だろ?今から勉強って・・・・・・・。 「いや・・・俺、地元の大学受けるから・・・。学力的に楽勝だし。」 な・・なるほど・・・ごもっともで・・・。 そして、2月・・・ 「どうだった?」 「うん、受かってたよ。」 「おお!!おめでとう!」 「ああ、ありがとう。」 さて、他の三年生達はどうしたんだろう? 立山は、仁木の一足先に推薦で関東のほうの大学に進学がきまっていました。 「仁木とはこれでお別れになるけど、卒業したらまた戻ってくるかもしれない・・・。」 平中もまた推薦で関東のほうの大学へ・・・。 「私も仁木君とはお別れね。私はきっと向こうで就職もしようと思ってるし・・・・。」 下市は大学には行かず本格的にバンド活動を行うそうだ、まずはインディーズらしい。 彼もまた関東行きの一人、出発は立山よりも一ヶ月遅くなります。 「あいつの事・・・いや・・あいつの存在はきっと忘れないだろうな・・・。」 堅野は、なんと仁木と同じ大学へ! 「へぇ〜仁木君も一緒なのかぁ〜面白そうだなぁ〜。」 他には・・・・まぁ主用人物で三年生はこれだけか・・・。 さて、そんなわけで話はいよいよ「卒業式」に移り変わる。 「いよいよ、明日かぁ。」 「ああ、そうだな。明日でいよいよ高校生活最後だな。」 「何か・・・考えてみたら、最後の1年が怒涛だったな・・・。」 「そうだよなぁ・・・俺がお前にバイト紹介して・・・。」 「そう、そこから・・・色々な事があったなぁ・・・。」 「・・・・でも結局お前は・・・カラオケだったな。」 「・・・ハハ・・・確かにそうだね。」 「仁木君!」 「ああ平中さん、どうしたの?」 「仁木君って、今度の卒業記念パーティ出るんでしょ?」 「ああ、行くよ。前にも言ったジャン。」 「何歌うの?」 「あ・・・・・。」 ここで説明。「卒業記念パーティ」について。 ようするに、卒業式の翌日パーティが行われるのだ。 まぁ、当然「式」のような堅苦しいものではなく「立食パーティ」みたいな感じで行われる。 そのパーティには・・・まぁ当然ほとんどの卒業生とそれぞれの先生が参加し、 毎年無礼講のごとく、大いに騒ぐのである。 そして、大抵その会場にはカラオケが設置されている。 そこで、この卒業生の中で主要と思われる人物は、何かしら歌う事になるのだ。 まぁ、大抵は誰かが誰かをけしかけて、無理やり歌わせる方向に持っていくのだが・・・。 「仁木君は今年カラオケ大会で優勝してるし、絶対何か歌う事になるよ。」 「そうか・・・そうだよなぁ・・・・。」 「卒業式にふさわしい歌・・・・考えてみようか。」 「一番オーソドックスなのは、やっぱり尾崎豊の『卒業』じゃないかな・・・。」 「男の場合はね、女性だったらspeedの「My graduation」とかあるよね。」 「古い歌でも、イルカの「なごり雪」とかは以外と歌われてるよね。」 「槇原の『Love letter』とかは、その手のお別れ系ソングとしては適当だよなぁ。」 「何となく寂し目の曲とかって、結構なんでも会うんじゃない?」 「ミスチルの歌で『これからも頑張れ』って言う熱いメッセージがこめられてるのも良いよね。」 「GLAYの『HOWEVER』も考えてみたら結構行けそうだよね。」 「『春を愛する人』by GLAYみたいな、春系の歌でも良さそう・・・。」 「『春の訪れを待ってる』のwinter fallも行けそうじゃない?」 「・・・・・・・・・いや、それはだめだろう・・・・・・・・・・・・・。」 「う〜ん・・・このままじゃラチがあかないなぁ・・・・・。」 「当日決める?でもそれだと何も考えつかなかったとき悲惨だよ。」 「な〜んかこう、‘パーン’と出てこないかなぁ・・・。」 結局その日は決められず、そのまま翌日を迎えることになった。 「先輩!卒業おめでとうございます!」 卒業式を無事終え、教室で高校生最後のホームルームも終わり、 いよいよ、この学校とお別れというときに・・・、クラスの外では たくさんの下級生達が卒業生達を出迎えていた。 たくさんの花、たくさんの言葉、そして・・・たくさんの涙・・・。 「やっぱり卒業って辛いよね、涙無しでは卒業式は出来ないぐらい・・・。」 「そうだな、いくつかの記念日の中でも、これだけ悲しい記念日はないよな。」 しばらくして、 「仁木さん!」 「ん?おおぅ!三浦君か。俺帰宅部だったから誰も来ないと思ってたのに・・・。」 「先輩・・・ここで僕が仁木さんを無視したら、他の部員達にクレーム付けられちゃいますよ。   はい、これ受け取ってください。」 ドサッ!と花束。 「おわっ!と・・・ありがとう。」 そう言うと、三浦君は別の部員のところへ行ってしまいました。 「良いなぁ・・・お前、こんなんもらえて・・・功労者だもんなぁ・・・。」 「へっへ〜・・・」 「俺も誰か知ってるヤツは・・・・・・・・・・・・あ!あれ!」 立山が指差した方向に、水島の姿が見えた。 「あ、気づいたみたいよ・・・。」 「う・・・うん・・・」 「どうしたの、ここまで来て帰んないでよ!言いたい事があるんでしょ!」 「う・・・うん・・・。」 「別に取って食われるわけじゃないんだから、ほら他にも行くとこあるんだから、さっさと行ってきな!」 「う・・・うん・・・。」 「に・・・仁木先輩・・・。卒業おめでとうございます。」 「あ・・・あありがとう。」 「あ・・あの・・私・・・。」 「ん・・・?」 「わ・・・私!・・・仁木先輩の事好きだったの!・・・でも、仁木さんの歌聴いて・・・  その・・・すごく恐かったの・・・雲の上の人だって・・・ホントの意味で思った・・・。」 「あ・・・・ああ・・・うん?」 ちょっと分けのわからない言葉になってる・・・。 「で・・でも、好きだって気持ちは変わらなくて・・・何も出来ないけど・・・。   この気持ちには逆らえなくて・・・だ・・・だから・・・私・・・。   ずっと・・・仁木さんの事忘れません!仁木さんの全部をずっと想ってます!」 そう言うと彼女は一目散に、走り去っていった・・・。 「な・・・何も言わせてもらえなかったよ・・・たっちゃん。」 「きっとあれで精一杯の告白だったんじゃないの?う〜ん可愛いねぇ・・・。」 やがて・・・少しずつ教室から人の数が減っていった・・・。 名残惜しそうに、教室を後にする卒業生達。 たくさんの笑顔があったが、何となく寂しさが伝わってくる。 「・・・それじゃあ、俺達も帰るとするか!」 「あ・・・悪りぃ、今日なっちゃんと一緒に帰る事になってんだ・・・。」 「そ・・・そうか・・・。それじゃあまた明日な。」 立山は教室を出ていった。 しばらくして・・・ 「仁木君!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ん・・・・あ・・あれ?・・・・・・・・・・・・・あ・・そっか・・・。」 暖かいベッドの中、目を覚ました仁木は、 いつもと違う天井に少し驚いたが、その理由をすぐに思い出した。 ふと、隣を見る。誰もいない。 触ってみると、まだ少しぬくもりが残っている・・・。 「・・・もう起きたのか・・・。」 仁木は昨日の事を思い出しながら、考えていた。 (まさか・・・こんなことになるなんて・・・いや・・・こうなって当たり前なのか・・・  遅すぎたんだ、僕が何もしなかったから・・・。でも・・・これで本当に終わりなんだな。) ガチャ。 平中がパジャマ姿で部屋に入ってきた。 「あ、起きたんだ。おはよう。友君もシャワー浴びてきたら?」 「あ・・・ああ・・・うん。」 ベッドから起きようとして体をもちあげた。少し腰にきた。 シャワー後・・・。 「ふぅ〜・・・。」 「あ、友君、テレビテレビ、今日の夜なんか雪降るみたいだよ。」 「ん?あ、本当だ。」 「もう春なのに・・・めずらしいね。」 「そうだなぁ・・・。」 「この時期の雪って、間違い無く最後の雪になるから『忘れ雪』だね。」 「それが、丁度卒業記念パーティに重なった分けか・・・・・・あ!」 「ん?どうしたの?友君?」 「もしかして・・・・。」 仁木はすぐに服に着替えて、帰る準備を始めた。 「ど・・どうしたの?」 「ちょっと聞きなおしてみたい曲があるんだ。もう帰るよ、パーティの時また会おう!」 「え・・・ちょ・・ちょっと友く・・・」 バタン!仁木は出ていってしまった・・・・。 「ふぅ〜・・・最後の最後まで歌なんだから、最後にもう一度だけ・・・と思ったのにな・・。」 さて・・・。いよいよ舞台はパーティ会場へ。 「立山君!」 「あ・・なっちゃん、そこにいたんだ。仁木は?」 「わかんない、まだ来てないみたい。」 「マイクテストマイクテスト・・・。」 「あ、来た来た。」 「おぉう、悪ぃ、送れて。」 「・・・時間ぎりぎりだな・・・もう始まるぞ」 「ごめん、今まで練習してたから・・。」 「練習って・・・歌決まったの?」 「うん・・でもちょっと心配だけどね。」 「・・・・何が?」 「それは・・・あ!もう始まる!」 「はい、それでは席についてください。」 「あ・・あの人は、確か・・・」 「本日はようこそおいで下さいました。それではまず、生徒会長からのご挨拶です・・・・    ・・・ん〜ん・ん・ん・・・・・ええ・・本日はお日柄も良く・・・・・。」 バーン!! ハリセンが顔面にヒット!眼鏡ずれる・・・。 「た・・大変失礼いたしました。それでは会長どうぞ。」 それから、先生とかどこぞの部長とか色々出てきて、 軽い長話がやっと終わった。 「ええ、それではここからフリータイム・・・」 ガシャーン!! 金だらいが脳天にヒット!しばらく動けなくなる。 「た・・た・・大変失礼いたしました。   しばしご歓談の程ご自由におくつろぎくださいませ・・・。」 「毎度のこと、やってくれるわね館間さんて・・・。」 ここから立食パーティの開始。 最初はみんな一応は自分の席について、色々と話したり食べたり飲んだりで結構静かなのだが、 30分も立つと別のところに移動する者が登場し、仲良し同士で騒ぐ騒ぐ・・・ 結局は大宴会になってしまうのだ。当然先生のいるところだし、アルコールなんて飲めない。 周りの雰囲気が皆を高揚させ酔わせるのだ。 言ってみれば、これが高校生のあるべき姿なのかな・・・? しばらくして、ステージに一台の機械が用意された。 黒い大きな直方体。まさしくそれは「カラオケ」だ! 「さぁ、みなさんご注目!ただいまここにカラオケを設置いたしました。   歌いたい人は、または歌わせたい人は是非どうぞ!」 「ついに出てきたよ・・準備は良い?」 すると、仁木は少し困った顔をして・・。 「いや・・・・今はまだだめだ・・・。」 「え?あ、そうよね、いくらなんでも、最初のほうで歌うわけには・・・」 「いや・・・そう言うんじゃないくて・・・・」 誰かが、カラオケで歌い始めた。曲名は尾崎豊の「卒業」 「あ・・・やばいんじゃない?今日用意した歌が先に歌われたら・・」 「いや、それは問題無いんだ。多分絶対歌われないから。」 「・・・・?卒業と関係ないの?」 「・・・なんて言うか・・・その・・説明しづらいんだけどね。」 これを皮切りに、皆がいろいろな歌が歌っている・・・。 「想い出がいっぱい」「浪漫飛行」「春なのに」「Nights of the knife」 「いい日旅立ち」「卒業写真」「ギザギザハートの子守唄」「贈る言葉」・・・・・ みんなやっぱり馬鹿じゃない、ちゃんと卒業にちなんだ歌を歌っている。 「仁〜木〜君!そろそろ歌わないの?」 突然、女の子が歌を聴いてる仁木の前に現れた。例の5人組の一人・・・。 「あ・・・いや、今はまだ・・・。」 彼女は仁木の腕をつかんだ、 「早くしないと終わっちゃうよ。ほらほら来てよ。」 「ご・・・ごめん!!」 スパっと腕を振りほどき、遠くへ走り去ってしまった。 それからしばらく時が立ち・・・。 やがてカラオケも使われなくなってきた・・・。 「え〜、宴もたけなわではございますが・・・   ここで、そろそろこの宴も閉めさせてもらおうと思います。」 「え〜!ちょっちょっとぉ!まだ仁木君、歌ってないのにぃ!」   一体どこ行ったのよ・・・もう!」 すると・・・ 「・・・・ああ!雪だぁ!」 「え?・・あ、本当だ、この季節に珍しいね。」 いつのまにか振り出した雪に、少しの間だけ回りは静かになっていく・・・。 「そういえば・・・今日天気予報でやってたっけ・・・は!まさか!」 彼女はふっとステージのほうに目をやった。 丁度、ステージではカラオケの機械を片付けようとされている。 すると一人の男が、少し離れたところから曲を入れようとしている。 でも・・・なんか少しもめてるようだ。 「あああ、だめだよ、もう終わりだから。もう少し早ければ良かったのに。」 「あ・・・え・・・そんな・・・。」 「はい、リモコン返してね。」 「・・・・・・・」 男は黙ってリモコンを渡そうとした・・・・その時! 「だめぇ〜!!!!」 その声は、静かになった会場に大きく響いた。 一瞬、皆の動きが止まった。 その時! ズバーン!!    バタ でっかい爆発音と共に、司会者が仰向けに倒れた。 「い・・痛て・・な・・何を・・・。」 ガシャーン!! すると、今度は金だらいが仰向けの司会者の顔面にヒット! 司会者は沈黙した・・・。 「あ・・・あの・・・。」 「仁木ぃ!お前ってやつは何で最後においしいとこもってこうとするかなぁ!」 ふと見てみると、ハリセンを持った人が・・・下市君!! 「そぅだよぉ〜。」 ん・・・?司会者の真上にいるのは・・・堅野君!? 「ずるいよなぁ・・これ以上ないタイミングじゃぁ〜ん、   でも、やっぱり、君が歌ってくれないとカラオケは終われないしぃ〜。」 「なんか考えがあるんだろ、歌えよ、俺が許す!」   「ふ・・・二人とも・・・・。」 少し瞳をうるませながら振るえていた・・・。 その振るえた指で、仁木は曲をカラオケに打ち込んだ。 カラオケを片付けてる人が、異変に気づいた。 「ん?あの・・・もう終わり何だけ・・・・・」 「うぉぉらぁぁ!!仁木友信が歌うぜ〜!!」 下市がロック調に叫ぶ!仁木はステージに上った。 静かになった部屋に下市の声が鳴り響く。 言葉の意味を理解した皆は一斉にステージのほうを向いた! そして・・・・。 ワー!!!! 「す・・・凄い・・・仁木が歌うだけでこれだけの人が・・・・。」 「・・・で何を歌うんだ・・・。」 下市が歌う人用のモニター画面を見る・・・すると・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「え・・・お・・お前・・・これでいいのか?間違いじゃないのか?」 仁木はうなづいた。下市は困惑している。 「この歌って、お前・・・知ってるよな?この歌が何か・・。」 さらにうなずく仁木、ますます下市は混乱してきた。 「・・・お前・・・一体・・・・。」 前奏が流れ出した・・。 聞き覚えのない人たちが、結構多い中。 ふと疑問的な顔を見せる人もいる・・・。 「あ・・・あれ・・・?」 「な・・・なんで・・・?」 「確かこの歌は・・・・?」 「あれぇ〜?この歌って確かぁ・・・。」 前奏が終わる・・・・。仁木が歌い始めた! -to be continued- お別れ会の最後の最後。 突如降り出した雪と共に歌う仁木! 誰よりも歌の力をもっているだけに、ここははずせない! 皆が驚きを見せる中、彼が歌った最後の曲とは? 次回いよいよクライマックス! さて、今回のタイトル・・・実は今回仁木君が歌う曲の重大なヒントなんです! この時点でわかったら、結構凄いかも知れないぞ! でも、正解を掲示板とかには書かないでね(分かった人はメール頂戴!) それにしても、今回選んだ数々の卒業の歌・・・なんでこんなに古い曲ばっかりなんだろう?(笑)


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