「カラオケ物語」 第8話「一緒に・・・」
仁木 友信= 立山 昇=  水島流美=  「ん・・・・・・」 気がついたら私は学校の屋上にいました。 しばらく歩いていると・・・歌声が聞こえてきました。 聞き覚えのあるきれいな歌声・・・。誰なの?なんて聴くのでさえ野暮ったい・・・。 「仁木さん・・・・どこにいるの?」 しばらく歩いていると、あ・・・いたいた、フェンスの上に座って歌ってる・・・。 でも何の歌なんだろう・・。聴いた事があるような・・・無いような・・・。 「仁木さん!」 私は彼を呼んだ、そしたら彼、私のほうを見て笑ってくれた・・・。 「仁木さん・・・・」 私が近づいていくと。 突然 彼、フェンスの後ろのほうに消えた・・・落ちた!? 「きゃぁ!!」 あまりの事に私は動けなかった、でも・・・・あれ? 落ちた音が聞こえない・・・・ ふと足早に、彼のいたフェンスから下を見る。 目が眩むほどの高さ、こんなに高かったけ? でも下に仁木さんはいない、どうして? 「流美ちゃん・・・。」 私は後ろを振り向いた・・・。 そこには仁木さんの姿が、え・・・どうして? 「ここ↓ここ↓」 彼の足元を見たら・・・え!浮いてる!? よくみてみたら、頭の上に何か光るものが・・・蛍光灯・・・?じゃないよね。 「ふふふ・・・・」 彼が上を向いた瞬間に、彼の体が光に包まれた。 次の瞬間・・・仁木さんの背中に大きな羽が・・・・。 え・・・?え・・・?浮いてるし・・・・。 「天使・・・・?」 彼はまたニコッと笑って、そして私に手を差し伸べた。 「・・・・一緒に行こう。」 え?え?一緒に行こうって、もしかして・・・天国? ・・・で・・・でも私・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 うん、仁木さんと一緒なら、もうこの世に未練なんてない。 行きましょう・・・。私を天国に連れてって・・・・・。 差し伸べた手に答える。 ジリリリリリリリ!!! 突然の轟音!  雷? ふと、彼女は目を覚ました。 ベッドの中でごそごそと動いている。 「あれ?私・・飛んでて・・落ちたのかな・・?」 ふと、考え込む・・・。 彼女は、それら全てが夢であった事を認識するのに、約20秒かかった。 「仁木さんが・・・・天使・・・・?」 朝、登校時刻。 「え〜!!!あの仁木先輩が夢の中で天使になって出てきたぁ!?」 「し〜・・・声が大きいよぉ。・・・って言うか、私を天国に連れていこうとした・・。」 「それで・・・あなたそれでどうしたのよ・・・・。」 「なすがままに・・・手をつかんでた・・・。」 「・・・・・それから天国には行ったの?」 「ううん、そこで目が覚めちゃって・・・。」 「あなた・・・凄い夢見たわねぇ、普通じゃないよ実際・・・。」 「・・・う〜ん・・・でもね、私なんだかこれって夢じゃないような気がするの・・・。」 「はっ!?・・・それってもしかして仁木さんが天使だって言いたいわけ?」 「・・・うん・・・。」 「・・・・・そしてあなたを天国まで連れていってくれるって?おいおい・・・・・。」 「・・・だって!あんだけ人を泣かせちゃうくらい歌が上手いんだよ!  どう考えたって普通じゃないよ!きっと神がかり的な物があると・・・思う・・・。」 「上手いったって所詮カラオケだよ、もっと現実見ようよ、流美のは誇大妄想だよ。」 「う〜ん・・・・でも・・・やっぱりそんな気がするなぁ・・・。」 「たっちゃん!」 「お、おう仁木、おはよう、朝っぱらから元気だな。」 「今日もカラオケだっけ?今日は何処と?」 「ええっと・・・・今日は1年1組だな、これで一年生は7組目、後二つだぜ。」 「そっか・・・今日からもう12月も後半・・・そういえばもうすぐクリスマスだね。」 「ああそうだな、お前はどうせなっちゃんと一緒なんだろ?」 「う〜ん・・・まだ何も考えてないけど・・どうなんだろ?」 「・・・・お前なぁ・・・。クリスマスに彼女どっか誘おうとか考えてないわけ?」 「え・・・?ああ・・そうか、そう言うもんだっけ・・・・。」 「なっちゃん待ってるぜきっと、何とかしろよな、男なら!」 「う〜ん、俺・・・クリスマスと言ったら、クリスマスソングの事しか考えてなかった・・・。」 「・・・・なっちゃんも可哀想に・・・・。」 教室に到着。 「・・・で今日から歌うのか?クリスマスソング。」 「うん!今日からそっち方面は三つは歌ってこうかなって思ってる。」 「結構イイ歌あるもんな、ラルクだったら『winter fall』とか『snow drop』とか・・・。」 すると仁木が指をよこに動かして・・・ チッチッチッチッチッチ(ちょっと舌打ち気味に) 「立っちゃん・・・それは『ウィンターソング』・・『クリスマスソング』とは全然違うよ。」 「え?似たようなもんだろ?」 「う〜ん・・・確かにそうかもしれないけど・・・。でも明らかに違うところがあるんだよね。」 「どんな?」 「ウィンターソングは文字通り『春夏秋冬』季節物の歌。でもクリスマスソングは  特定の日を歌ってる。これが何を意味してるか・・・。」 しばらく考え込む。 「・・・・・さっぱり分からん・・・・。」 すると、仁木は少し説明口調で・・・。 「それは・・・ズバリ『適正範囲』。冬の歌は冬の間中似合うけど、クリスマスは  クリスマスの時期にしか似合わない・・・。」 「あ・・?そんな事ないだろぅ。冬の歌と言ったって夏に歌う人とかもいるし・・・。」 「でもクリスマスソングを夏に歌う人は、あんまりいないよね?」 「あ・・・そういえば・・・そうかも・・・。」 「そこが適正範囲なんだよ。適正範囲が長ければその分許容範囲も長くなる。  特に一シーズンの場合だったら、年中歌われても不思議は無い。  でも、クリスマスとかだったら適正範囲はわずかに二日、こうなるとその許容範囲は・・・  大体冬の間ぐらいになるんだよね。そこは人間の心理なんだよ。」 「う〜ん・・・・よく分からんが・・・歌いたいときが歌うときじゃないんだ・・・。」 「少なくとも、『聴かせたい』と言う思いが少しでもある人だったら、  そう言う心理は働くと思うよ。僕自身そうだし・・・まぁ個人的見解だけど・・・。」 「・・・お前って・・・何時もこんな事ばかり考えてるんだろ?」 すると仁木は立山を指差して 「正にその通り。」 さて・・・放課後・・・。 「さて、行こうか立っちゃん。」 「ああ、1年1組か・・ちょっと懐かしいな・・・。」 「あれ?立っちゃんて、1年のとき1組だった?」 「ああ、そうだよ、お前は二組。体育のとき一緒だったのが最初だったっけ?」 「そうそう、そして色々と話すようになって・・・。」 「ある日・・・・・・・・・・・・・・・なんだよなぁ。」 「そうそう、あの日・・・・・・・・・・・・・・・だったよねぇ。」 ??? 仁木と立山の最初の出会いは結構普通だった。 しかし、出会いからしばらくしてある事が起きたのである。 それ以来二人は互いの素性を100%まで分かり合える親友となった。 その話は・・・まぁいずれ語ろう。(番外編とかで) さて、1年1組に到着。 「あ・・・そういえば・・・。」 「ん?何・・・?」 「1年1組って・・・カラオケ大会第三位がいる所だったっなぁ・・・。」 「ふ〜ん・・・・一年生なのに凄・・・あ!!」 「そう・・・あの人・・・。氷河期の・・・。」 「だ・・だ・・だだだ大丈夫だよ。あれから俺その人に会ってないし・・・・。」 ふと教室の中をを見てみると、どうやらまだホームルームが終わっていないらしい。 すると・・・。 「あ!」 一人の少女と目が合った。あの娘だ。 でも、すぐに顔を背けたようだ・・・顔が赤くなってる・・・。 「・・・?」 「あれ?今、目が合った娘って・・・例の娘じゃない?」 「う・・・うん・・・そうみたいだけど。」 「なんか凄く恥ずかしそうにしてない?あ・・・またこっち見た。」 でもまたすぐに背ける、今度はうつむいてしまった。 「なんか・・前と印象が違う気がする・・・。」 「前はどんなんだった?」 「前はもっとこう大胆に・・・・・・・・・!?な・・なに言わせんだよ!」 「ふぅ〜ん・・・、やっぱりなんかしたのか・・・。」 「な・・何もしてないって!!」 「へぇ〜・・・でもあの仕草はちょっとただ事ではないような気がするなぁ〜。」 「そ・・・そんな事・・・ある・・わ・け・・ない・・じゃん。」 (なんで、こんなに歯切れ悪いんだ?) やがてホームルームも終わり、仁木の周りに人が集まってきた。 「それでは行きますか!」 1年1組とのカラオケ会が始まった。 今回の人数は13人、男5人女8人である。 カラオケボックスに到着。 「それではこれから、中に入ります。時間は・・・・・。」 立山の説明が続いている・・・。 それをよそに、ある二人が話しこんでいるようだ。 「ほらほら・・天使さんがいるわよ。」 「何よぉ!別に・・・今朝のはちょっと寝ぼけてただけだもん。」 「そうかしら?もし彼が本当に天使だったら?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「あらら・・・考えてるわ、この娘ったら・・・。クス、いやねぇ・・・」 「考えてなんか無いもん!」 思いがけず、大声をあげてしまった。 「・・・・あ・・・あのぉ今回の会費・・・高いですか?」 気を取りなおして中へ。 「さぁて・・・何を歌おうかな・・・。」 「『ウィンターソングをベースに、クリスマスソングを散らせる』ってところだろ、お前の場合。」 指をさして 「大正解」 一曲目は1年1組の一般人、普通の歌声、普通の選曲。 二曲目が仁木の出番だった。 まず歌うのが「white silent night」by shazna 「まずこれで、冬のイメージを出してみよう。」 ここから、彼の冬の歌がどんどん入ってくる。 どれもこれも上手いので、みんなは彼の繰り出す「冬のイメージ」に酔いしれる事になった。 「winter kiss」 by dual dream 「white breath」by TMR 「winter again」by GLAY 非常に基本的・・・。 ここで一つクリスマスソングが入った。 「Halleluyah in the snow」by Moon child あ・・・一般人が「永遠を預けてくれ」by DEENを歌っている。 この歌もいい歌なんだよね。 「う〜ん・・・さすがにうまいわね・・・。人並み外れてるわこれは・・・。」 「ね、ね、やっぱりそう思うでしょ。仁木さんは凄いんだから。」 「でも天使にしては・・・なんか物足りない気がするけど・・・。」 「う〜ん・・・どうだろう・・・。あ!次私の出番だ。」 彼女が歌うのは「ゲレンデが溶けるほど恋したい」by 広瀬香見 「あの娘、なかなかうまいね、さすが三位・・・。」 「うん。今回は迷いも無い見たいだし、あれぐらい堂々と歌ってれば二位は取れたよ。」 「・・・・・・・・・一位じゃないんだ・・・・。」 「あ・・・・いや・・・その・・・別に・・・・。」 ついつい自尊心が出てしまったようだ・・・。 仁木のクリスマスソング二曲目は、「世界にメリークリスマス」by チャゲ&飛鳥 このメロメロなチャゲアスバラードで観客ももうメロメロ・・・。 「す・・・凄い・・。信じられないねぇこの人。どうしてこんなに・・・。」 「・・・・・運命変えられちゃいそ・・・。」 観客の気分はもう、すっかりメリークリスマス。 「う〜ん・・・大分マッタリとしてきたなぁ。今回は『泣き』よりも『陶酔』みたいだな。」 さて、残り時間は後わずかとなってきました。 仁木は最後に何を歌う? 「さて。これで最後見たいだけど、何歌うんだ・・・。」 「最後はぁ・・・これ!」 「ああ・・・これね、俺も知ってるけど・・・お前・・・・  このマッタリとした雰囲気にとどめさすつもりだろ・・・。」 「でも、これは歌っておきたいんだよね。」 「ほら、起きなさい。仁木先輩がまた歌うよ!」 「う〜んなんか、仁木さんの歌聞いてたら体ん中がフワフワしてきちゃって・・気持ちいい。」 「もう!寝不足なだけなんじゃないの?ほらこれで最後だよ!」 伴奏が流れ出した。優しい優しい音楽だ・・・ クリスマスっぽい音が聞こえる、仁木が歌い始める。 曲名は「いつかのメリークリスマス」by B'z 〜♪〜 ゆっくりと12月の明かりが灯りはじめ あわただしく踊る街を誰もが好きになる 僕は走り閉店間際君の欲しがったいすを買った 荷物抱え 電車の中 一人で幸せだった いつまでも手を繋いでいられるような気がしてた 何もかもがきらめいてがむしゃらに夢を追いかけた 喜びも悲しみも全部 分かち合う日が来ること 思って微笑みあっている 色褪せたいつかのメリークリスマス  〜♪〜 「ふ・・・・はぁ・・・・。」 目もうつろな水島、仁木の綺麗すぎる歌声が心を解きほぐしていく・・・。 「て・・・・天使・・・。」 〜♪〜 君がいなくなることをはじめて恐いと思った 人を愛すると言うことにはじめて気がついたいつかのメリークリスマス 立ち止まってる僕の側を誰かが足早に 通り過ぎる荷物を抱え 幸せそうな顔で・・・       〜♪〜    仁木の歌が終わった時点で、丁度カラオケも終わりの時間となった。 しかし、彼の歌が終わった時点で、ほとんどの女性が気の抜けた状態になっていた。 「・・・みんな遠くの世界に行ってしまったか・・・。思ってはいたが・・・。」 しばらくして・・・何人かが動き出した。 しかし、まだ動かない人がいる。 「流美・・・どうしたの?いつまでも浸ってないで、さっさと戻ってきなさいよ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「ふ〜・・・・まいったなぁ・・・先輩何とかしてくださいよ。」 仁木 友信=「う〜ん、しょうがないなぁ・・・ほら起きて、一緒に行こう。」 すると・・・彼女は小さな声で 「・・・・・・・・・・・・一緒に?」 仁木 友信=「うん、そうそう、一緒に行こうよ、ね?」 「・・・・一緒に・・・・一緒に・・・・。」 彼女はうつろな目をしながら、ゆっくりと顔を上げた、仁木と目が合った。 その瞬間!! 「イヤァァァァァァァァァァァ〜〜!!!!」 突然大声で叫び出した。 「な・・なんだなんだ!?」 先に部屋を出ていった立山がとんできた。 「なんだ!?お前なんかやらかしたのか!?」 仁木につめよる。 「い・・いや・・・僕は何にもしてない・・・・。」 「じゃぁ・・・これは何!?」 「わかんないよぉ・・・。」 すると・・・彼女が喋り始めた。 「イヤ・・・・イヤ・・・私・・・・まだ高校生だもん・・・もっともっと  やりたい事たくさんあるんだもん、友達置いていけないもん・・・。  一緒になんて・・・でも・・・アアアアア・・・ダメェ!!!。」 「あらららら・・・なるほど、そういう事ね・・・・。」 彼女の友達が、仁木と立山に事情を説明した。 「ぼ・・・・僕が・・・天使ぃ!?」 「こんなヤツのどこが天使やねん?」 「私も最初そう思ったんだけど・・・・あ!ごめんなさい。  でも、彼女思い込み激しいところあるから、一度思っちゃうとなかなか離れないんですよね。  でも・・分かる気はするな・・・仁木先輩の歌って、本当に心にすっと入ってくるというか。  本当に・・・聴いてて気持ちが良いんですよね。最後の歌なんか、陶酔しちゃいましたよ。  私は歌には鈍感だけど・・・あの娘は敏感だから、思いっきり感じちゃったんじゃないかな。  それで、現実世界の天使が見えてしまった。流美・・・大丈夫かな?」 その後、彼女の友達の説得で彼女はなんとか正気に戻ったものの。 まだ、その瞳はぼんやりとしている。 仁木と立山は彼女と顔を合わせないよう、先に帰る事にした。 その後彼女は・・・仁木の事をひどく恐がるようになり、彼と合う事も無くなった。 しかしその恐怖心とは別に、仁木に対するとても深い恋心を「感覚的」にまで感じてしまっていた。 その二つの心の葛藤が、しばらくは彼女を苦しめる事になった。 彼女は言う。 「もともと・・・雲の上の人だったのよね、仁木さんは・・。」 -end- さて・・・いかがだったでしょうか? 次回作は・・・本当なら「ある男の華麗なる悩み 後編」のはずなんですが・・・。 なんか・・あまり面白い内容にならなそうなので、やめにします。(一部内容変更) そして次回はいよいよ第1部最終回です。 テーマは「卒業」さて、仁木君は最後にどんな歌を歌うのでしょうか? それではお楽しみに! -infomation- 第1部が終わり次第、すぐに第二部の製作を開始します。 ここでメインキャラが大きく変わります。でも主役は仁木ですが・・・。 そして物語が進んでいくごとに、色々な「物語専門用語」を数多く出す予定です。 第二部ではその「物語専門用語」および「キャラクター」を募集しようと思います。 どう言う内容になるかは、第二部が進み次第連絡します。 それでは、そちらもお楽しみに!


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